2016年~2022年に大阪府の集合住宅で女児10人に性的暴行を加えた罪などに問われている元病院職員・柳本智也被告(28)。2月4日に大阪地裁で開かれた裁判で、検察側は、「人格を無視した卑劣な犯行」と無期懲役を求刑した。
【卑劣すぎた…大阪・女児10人性的暴行】裁判が開かれた大阪地裁
「起訴状などによると、柳本被告は、女児や家族の外出状況を調べたうえで、それぞれの犯行に及んだといいます。女児が自宅の鍵を開けた際に玄関から押し入って、カッターナイフを示し、『泣いたら殺す』や『警察に言ったら殺す』などと脅して性的暴行を加えたとされています。また、犯行の模様を撮影してもいました。
悪質な手口が重く見られ、無期懲役が求刑されたようです。柳本被告は、起訴された内容を認めています」(全国紙の社会部記者)
柳本被告は大学を卒業後、民間企業に3年弱勤めて、病院事務へ転職した。最初の事件当時はまだ20歳で、大学2年生だった。なぜ彼は、このような卑劣な犯行に及んだのか。
この事件の全ての裁判回を傍聴し、裁判で傍聴した内容をX(旧Twitter)で発信してきた“ただの傍聴人”氏が語る。
「犯行の背景のひとつに、柳本被告が“社会に自分の居場所がない”という感覚を抱えていたことがあるようです。裁判では『大学時代にバイト先で、“仕事ができない”などと年上女性に罵倒された』や『また別のバイト先で知り合った女性との恋が実らず、バイトに行きにくくなった』といった経験が明かされました。大学で仲間外れにされたこともあったといいます。
大学4年生から就職までの時期に犯行が集中していますが、柳本被告は、『就職を目前に控えて不安な毎日を送ったり、就職先でうまく人間関係が築けるか(心配だった)』と当時の心境を振り返っています。
また、就職後も職場で女性から強い口調で干渉され、ストレスがあったとのこと。公務員に憧れるも結果が出ないまま年齢を重ねてしまい、その焦りもあったそうです」(ただの傍聴人氏、以下同)
犯行当時は、いわゆる“認知が歪んだ”状態だったようだ。
「柳本被告は、犯行当時は嫌がる被害児童の言葉を受け止められていなかったと述べました。また、自身が撮影した犯行の動画を見ても、『動画は数ある作品のひとつ。自分が映っているというより、第三者が演じているアダルト動画』という認識だったそうです」
現在の柳本被告は、逮捕当時からかなり痩せた印象だ。裁判のときはいつも黒っぽいスーツを着ているが、ウエスト部分のサイズは合っておらず、移動のときにズボンがずり落ちるほどだったという。
ただの傍聴人氏によると、配られた資料やモニターを熱心に見てメモをとる姿勢は、自身が犯した罪に向き合おうとしている様子にもとれたというが、被害者親族の意見陳述では、「(被害児童の帰宅時間などの)メモを残していたことと重なり、気持ち悪く感じる」といった厳しい意見も。
また、第5回裁判の被告人質問では、被害児童を見かけたきっかけを問われ、「どこかで見かけたと思う」と回答。2022年の直近の犯行状況も「覚えていない」として、あいまいな証言に終始していた。
犯行を撮影した動画の書き起こしも証拠として提示された。書き起こしを見た感想を弁護人に問われ、柳本被告は、以下のような反省の言葉を述べている。
柳本被告「客観的にセリフを見て、こんな発言をしている自分をあらためて認識した。当時、被害者さまの『痛い』などの発言を全然聞き入れていないひどい状態の自分がいて、自分の行動が卑劣だとあらためて認識した。また被害者さま本人だけでなく、ご家族の精神的苦痛、経済的負担が想像をはるかに超えていて申し訳ない思いです」
第10回裁判の最終意見陳述では、無期懲役という求刑を受け止め、真摯な思いを語った。
柳本被告「多くの方々を傷つけすぎてしまったことは、非難されて当然です。逮捕直後は事件に向き合えていませんでしたが、今は、事実の重みを受け止めることができています。もし性犯罪に死刑があれば、されて当然と思っています。無期懲役すら軽いと思われて当然、私はそれだけのことをしてしまったと再認識しています」
ただの傍聴人氏によると、最終意見を述べて証言台から弁護人席に戻るとき、柳本被告は目のふちを指で拭っていたという──。
検察側が無期懲役を求刑する一方で、弁護側は、「被告人は、被害者に家族がいることや、その気持ちがわかるようになった。生涯かけて償うつもりで、変わることのできる力がある」と有期刑を求めている。
判決は2月18日に言い渡される予定だ。