自民党の裏金事件。派閥のパーティーだけでなく、都議会自民党のパーティーを巡っても、裏金が作られていたことが発覚しました。
【写真を見る】別のカラクリ“中抜き”を裏付ける文書
いつから、どのように、裏金作りは行われてきたのか。その実態を取材しました。
おととし、明るみに出て政界を大きく揺るがした、自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金事件。今度の舞台は都議会自民党だ。
先月17日、東京地検特捜部が動いた。政治資金規正法違反の罪で略式起訴されたのは会計担当者だった。
だが、都議は罪に問われなかった。この事件を受け、都議会自民党は先月23日、会見。裏金事件に関わった現職都議16人が顔をそろえた。
都議会自民党 小松大祐 幹事長「大変申し訳ございませんでした。我々の法律に対する認識の甘さや、ずさんな会計処理について非常に重く受け止めております」
都議会の宇田川聡史議長にも不記載が発覚し、辞職。今週、都議会は異例の事態となった。
今回、問題となったのは、2019年と2022年、都庁向かいのホテルで開かれた都議会自民党の政治資金パーティー。
自民党派閥が用いたキックバックではなく、別のカラクリで裏金作りが行われていた。
都議会自民党 関係者「都議会議員がそれぞれ100枚パーティー券を渡されて、そのうちの50枚(分)100万円を上納しろと。残りの50枚は『自由に使っていい』という指示が都議会自民党の総会で時の幹事長から口頭で説明がありました」
100万円は都議会自民党へ都議が現金で持参してきたという。
この証言を裏付ける文書がある。2019年のパーティーで、売り上げの100万円を都議会自民党にどう納めるかなど当時の幹事長が説明したと書かれている。
文書“各議員1人100枚と領収書(白紙、額面2万円)を白い手さげに入れてあります。そのうち50枚分、100万円をAさん(会計担当者)に持参してください”
この文書の存在を自民党は否定しているが証言や取材によると…
都議会自民党が都議会議員らへ、1枚2万円のパーティー券100枚、200万円分を渡す。そのうちの50枚、100万円分を売ることがノルマとして課され、売り上げを納めるよう指示されるという。
都議らは残りの50枚、100万分について、売った分だけ中抜きし、政治資金収支報告書には記載しなかったという。
裏金事件に関わった現職都議を問いただしたが…
村瀬キャスター「すみません、TBSの報道特集なのですが、裏金問題について伺いたいのですが」
鈴木章浩 都議(大田区)「…」
三宅茂樹 都議(世田谷区)「…」
今回、裏金事件に関わったのは都議会自民党の都議ら26人。中抜き分は合わせて2873万円に上る。そのうち現職の都議は実に16人。
不記載額が最も多かったのは幹事長経験者の三宅正彦都議で332万円だった。
先月23日の謝罪会見で、こう述べていた。
三宅正彦 都議「誠に申し訳ございませんでした。前例を引き継ぐような形で運用をしてしまったと。個人の額では、私が一番大きい額だと思うんですが、私はそれを会派に返納させていただいて、しかるべく処置をとっていきたい」
三宅都議は、伊豆・小笠原諸島などの『島しょ部』選出。私たちは、地盤の一つ、八丈島に向かった。
元自民党・八丈町議だった山下 崇氏。都議会自民党のパーティー券を毎回、5枚から10枚ほど買っていたというが、2017年、“組織的な金集め”に疑問を感じ自民党を離れ、その後、都民ファーストに移った。
三宅都議の不記載額が、最も高額な332万円だったことについて…
山下崇 元自民党八丈町議「(島しょ部の)有権者は2万人ぐらいしかいないんですけど、そこで一番集められるっていうこと自体も異常事態だと思いますし、パーティー券にはちゃんと書いてあるわけですよ。法律に基づいて開くパーティーだ、政治資金を集めるためのものだから。それを記載しない。それは“ミス”とか“慣例”とかっていう話ではなく、『わざとやっているよね』っていうことですよね。怒られてから修正するって子どもじゃないんだからと僕は思いますよ」
山下氏は、自民党の変わらない金権体質を批判する。
山下崇 元自民党八丈町議「(パーティー券を)束にして渡して、(金を)集めてこれる人が上に行く。これですよ、1番の問題は。政策立案能力とかあまりない人がたちが、そうやってお金だけ集めて、業者とつるんでなんかやっているみたいなものは、やっぱり良くないと思うんですよね」
問題となったのは2019年と2022年の都議会自民党の収支報告書。パーティー券を購入した17の団体を取材した。
東京都石油政治連盟「複数の議員が別々に来て、それぞれから購入した時もありました」
パーティー券を購入したA団体「都議が一人で来られて『大変なのでお願いします』と言われました。額は50万円、都議と相談して決めました」
パーティー券を購入したB団体「手紙が来て、お付き合いがあったので、支援するために自分たちで額を決めて40万円分購入しました」
なぜパーティー券を購入するのか?都内に住む建設業の男性が、動機を語った。
パーティー券を購入した男性「僕ら建設業っていう業界にいるもんで、上の役員の方たちから何枚か買ってくれないかと。それで断れないから払ってるっていう状態ではあります。団体として都議に色々と要望を言いやすくなるような流れはあるようです。僕らも“世の中が良くなれば”と思ってパーティー券の購入に至ってるのに、これがなんか逆方向といいますか、まずいよなっていう気持ちはあります」
今回、建設業の同業者からの批判を覚悟で取材を受けたという。
パーティー券を購入した男性「僕も業界でこんなこと(取材)やってたら、多分怒られてしまうんじゃないかなとは思うんですけど、とはいっても世の中やっぱ良くなってないので。それもあって今回こういう取材があってもいいのかなと」
いつから中抜き、不記載が行われていたのか。都議会自民党の関係者はこう証言する。
都議会自民党 関係者「西暦2000年ぐらいからこのシステム、この仕組みをやっていたのかなという気がいたしますよね。風土としてずっとこういうやり方がまかり通っていたことは事実ですね」
報道特集の取材に応じた元都議も中抜きや不記載は2000年代ごろからあったと証言。
元都議「この裏金作りは昔からの慣例で、みんな平気でやっていて罪の意識はありませんでした」
都議会自民党は会見の翌日、収支報告書を訂正したが、問題を追及してきた共産党都議団の幹事長は憤る。
共産党都議団 和泉尚美 幹事長「(自民党は会見で)ずさんな資金管理の問題だったとおっしゃったが、極めてシステマティックにルール化されて議員の手元にそのパーティー収入が直接渡っていたということが、単なるその会計処理上の問題でないことは明らかだと思っています。収支報告書を修正すれば済むという話ではない。国会議員の問題よりも本当にこの都議会自民党の裏金は闇が深いと私たちは思っている」
裏金作りはいつから始まったのか。幹事長は調査をしたというが…
都議会自民党 小松大祐 幹事長「先輩方にお会いするときは、OBの先生方にお会いするときには(裏金作りについて)確認しましたけれど、やはり確証が持てるようなものっていうのは、揃わないというのが事実でございまして。いつから、誰によってというのはお答えができないというところです」
では、中抜きしていた金を議員らは何に使っていたのか。
都議会自民党 小松大祐 幹事長「使わないという方もいただろうし、こういうふうな使い方をしたという方もいるだろうし、その間というか全部は使ってないけど一部こういう使い方をしたという人もいるでしょうから、そこは各自、丁寧に説明責任を果たされるものだと思っています」
今年6月に行われる都議選では、「中抜き」不記載があった現職都議16人のうち、10人が公認されることになった。
公認を決めたのは都連。自由民主党東京都支部連合会だ。各地域に総支部があり、都議や市区町村の議員と、都内を地盤とする国会議員も所属する。
都連の井上信治会長が取材に応じた。
日下部正樹キャスター「不記載だった人物も何人か含まれているようですけども、これは公認にあたっての判断材料になったんですか」
井上信治 自民党東京都連会長(衆院議員)「都議会選挙の公認に関してはですね、そもそも組織的に、都議会自民党が決定権者ではなくて、各区市町村に支部があり、総支部がありますので、その総支部から申請が上がってくるんですね。その上で自民党東京都連が公認権を持ってますので、判断をして公認をするかしないかを決めると」
日下部キャスター「この前の衆議院選でも相当自民党はですね、いわゆる裏金問題を巡ってですね、有権者の相当厳しい判断を受けたわけですよね。その点についての反省みたいなのは、失礼ながら井上さんのこれまでの説明からあんまり伺えないんですけどね」
井上信治 自民党東京都連会長(衆院議員)「私自身も反省もしておりますし、あるいは謝罪もしております。おそらく都議会の皆さんは私以上にそれは張本人ですから、そういった思いはあるかと思います」