11日、都内のスーパーではコメ5キロの価格が4480円。コメの高騰が続いていますが、政府は近く“備蓄米”の放出量を決定する見込みです。コメの価格は、どの程度抑えられるのでしょうか。
【写真を見る】止まらないコメの高騰で“輸入米”が人気 政府は備蓄米放出へ…今後の価格の見通しは?2人の専門家の見方【news23】
都内のおにぎり専門店「おにぎり戸越屋渋谷道玄坂店」。炊きたてのごはんに、厳選された具材が評判のお店です。しかしこの数か月、頭を悩ませているのが“米の値上がり”です。
おにぎり戸越屋 木本英二管理部長「お米(の価格)が上がってきているが、ギリギリのラインでなんとかやれているという状況」コメの仕入れ値は2024年と比べて2割ほど上昇しました。おにぎり戸越屋 木本管理部長「(コメの値段が)上がり続けたらマジで困りますね。『これ以上(おにぎりの値段が)上がるともう来ないよ』という厳しい意見がある」“米高騰”の影響は食卓にも…都内のスーパー「フレッシュひかり」では、全国的に米不足となった2024年夏以降、仕入れる米の種類を8種類から2種類へと、4分の1に減らしました。さらに…
ナカムラ水産練馬光が丘店 大貝満主任「前は3000円くらいで売っていた。いま税込み4800円」仕入れ値の上昇を受け、販売価格を1.6倍ほどに引き上げたといいます。買い物客からは…
買い物客(70代)「バカ高。手が出ない(5kgで)4000円以上だと」買い物客(50代)「新米の時期を超えても、こう(高いまま)だから、消費者としては対策のしようもなくなってきている」
コシヒカリの小売価格は2024年の5月ごろまで5キロあたり2400円程度で推移していましたが、米不足が深刻化した夏ごろには3000円台に。1月は4000円を超える価格にまで上昇しました。米の値上がりを抑えるため、備蓄米の活用などを求める声も上がりましたが、2024年9月、農水大臣は…
坂本哲志農林水産大臣(当時)「今後、新米が順次供給をされ、そして円滑なコメの流通が進めば需給バランスの中で、一定の価格水準に落ち着いてくると考えている」今、米の販売店では…
米マイスター麹町 福士修三代表取締役「ある卸の出荷案内で未定とか8割減とか」「出荷制限というのは初めて」米の流通量はなかなか戻らず、卸売業者からは一部銘柄の出荷量が、予定の数割程度になるとの書面が届きました。米マイスター麹町 福士代表取締役「販売計画が全く立てられない」「新米が出揃って、年明けには価格の方も落ち着くのかなと。それが反対にまた上がり始めて、それでちょっと焦った」米の高騰が続くなか、人気を集めているのが、外国からの“輸入米”です。
米マイスター麹町 福士代表取締役「これが(国産米と)ブレンドされたお米。カリフォルニア産の」こちらでは2024年の夏ごろから、アメリカ産の米と国産米を混ぜた「ブレンド米」の販売を開始。価格は国産米の半分ほどで、飲食店を中心に注文が相次いでいます。 米マイスター麹町 福士代表取締役「料理にあったコメが欲しい。あとは価格を抑えたいと」「あればあるだけ売れるような感じ」長引く米価格の高騰に、農水省は“備蓄米”を市場に放出する方針を決定。今週中にもその放出量などを決めるとしています。 男性(60代)「ちょっと遅い。もう少し早く手を打っておけば、こんなに高くなっていなかったかも」
ナカムラ水産練馬光が丘店 大貝主任「(備蓄米も)すぐ無くなってしまうと思う。そのとき一瞬、その商品だけは(値段が)下がるかもしれないが、その後が続かないとまだまだコメ不足、値段も上がると思っている」「対策が遅れた」との指摘について、江藤農水大臣は…
江藤拓農林水産大臣「反省がないかと言われれば、大いに反省があります」「今の状況は異常な状態なので、これを何とかしたいという思いもあって、備蓄米の活用を検討した次第でございます」備蓄米の放出で米の高騰はおさまるのでしょうか?
藤森祥平キャスター:コシヒカリ5kgの価格、気が付けば1年前と比べて1.7倍です。
小川彩佳キャスター:スーパーでどんどん高くなっているという意識はありましたが、去年は2000円台だったんですね。
小説家 真山仁さん:大上段で提案したいんですが、「農業は産業か」という問いを語るチャンスが来ていると思っています。国が統制をするものは産業ではありません。自由経済の中で起きるはずのものが産業です。本来そういうふうに見えているのですが、いろいろな仕掛けがあって、欲しい人と買いたい人と売りたい人とのバランスが取れていないのは産業じゃないという部分に根本的な問題があるのではないかなと思います。
藤森祥平キャスター:専門家に話を聞いたところ、備蓄米を放出して、米の価格がどう変わるのかのポイントになるのは、「放出の量」であるそうです。宇都宮大学の小川真如助教によると、多すぎると価格が下がり、少なすぎると価格は横ばいであまり変わらないということです。一方で、キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は、国が1年以内に買い戻すというのが原則的なルールになっているそうで、放出すると価格は一旦下がりますが、買い戻すことでまた戻ってくる。高い米を買い続ける逆戻りの現象になるんじゃないかという目線もあるわけです。
小説家 真山さん:一つ素朴な疑問なんですが、元々の値段が適正なのでしょうか。ずっと前から、農家の人は「米は全然商売にならず、作れば作るほど赤字だ。だけど農家はお米を作らなきゃいけないから作ってる。そういう意味ではもう少し値段のことを考えて欲しい」と言っていた。「その値段でないと米が売れなくなる状況があるから我慢している」とも言っていました。今4000円になっても買ってくれる人が多い、そうしたら値段は下げないというのが本当の経済です。でも4000円は高いと思うんです。では米の適正価格がいくらかと、誰も議論したことがないんですよ。生産者と消費者のバランスの中で適正価格がどれぐらいかということを、今なら話し合えると思います。
藤森祥平キャスター:現場ではいろいろ苦労されているようで、国産米が高騰しているということで、牛丼の松屋では去年の5月から、国産米と外国産米のブレンド米を一部店舗で実験的に使用しています。工夫をしているということですよね。
小説家 真山さん:困ると輸入米を使うのは一つの手だということで、特に商品の値段を上げたくないファストフード系の飲食店だと、技術開発ができているんです。昔のように必ず日本の米を使わなくてはいけないとはなっておらず、これは良いこと。しかし、これは本来値段が下がるはずなのに下がらない。下がらない理由は、出し惜しみしているんじゃないか、それでも買ってくれる人がいるから良いんじゃないかという一方通行の議論ばかりしているからです。だから、本当は農水省に黙っていてほしいんです。農水省は何もしなくていいので、適正価格について、農家と消費者が同じテーブルで議論する場があると、バランスのいい値段がつきそうな気がします。
藤森祥平キャスター:農家を守るために国や、色々な政策がされているわけだけど、結局いろいろ入り込んでしまっていると。
小説家 真山さん:だから、農家は守ってもらっているとは思っていないんです。逆に邪魔されてると感じる人は多くいます。例えば「兼業農家を守ります」と言っていますが、専業農家もいるわけで、専業農家からすると、「兼業農家を守るって…」という人もいる。食料の問題なので、テレビや車とは違いますが、経済のバランスの中でみんなが納得しなくてはいけないのに、「米はこういう値段で当然」という考えがずっと日本の中にある。だからこういうときに大騒ぎになるのだと思います。米騒動というのは言い過ぎだと思いますが。
藤森祥平キャスター:今後安定供給させるためにどうすれば良いのかについて、小川助教は「温暖化で供給が不安定になってくるだろう」と話し、「美味しいだけではなくて、暑さに強い品種の開発と普及を加速させるべきなんじゃないか」ということです。一方、山下研究主幹は「年間に1000万t生産できるのが今の日本だが、650万tほどに抑えられている」と話し、「農家に補助金を出して減産させ、米の価格を上げる政策はやめるべきだ」ということです。米以外のものを作って補助金を出すという政策を一部やっているということなんですよね。
小川彩佳キャスター:まさに抜本的な議論が必要ですね。国民としても、価格をどう受け止めるか一緒に考えていかなければならないと思います。
NEWSDIGアプリでは『コメの価格』について「みんなの声」を募集しました。Q.価格高騰でコメを購入する機会に変化は?「以前と同じように買っている」…43.3%「買う量を減らした」…30.8%「ほとんど買わなくなった」…10.7%「元々あまり買わない」…10.7%「その他・わからない」…4.5%※2月11日午後11時10分時点※統計学的手法に基づく世論調査ではありません※動画内で紹介したアンケートは12日午前8時で終了しました<プロフィール>真山仁さん小説家「ハゲタカ」「ロッキード」など食と農業をテーマにした「黙示」を執筆