「お父さんに抱かれてる気持ちになる」母親が高2息子を襲い、性行為を強要…実の母から性暴力を受けた当事者が明かす、男性の性被害の実態

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性暴力は、「魂の殺人」とも呼ばれている。子どものころに受けた被害は、心身に深い傷を刻み込み、その後の人生にも大きな影を落とす。当事者たちはどのような環境下で被害に遭い、どんなトラウマを抱えて生きているのだろうか?
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ここでは、当事者たちの声を収めた書籍『ルポ 子どもへの性暴力』(朝日新聞出版)より一部を抜粋。実の母親から性暴力を受けた男性の声を紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)
写真はイメージです yamasan/イメージマート
◆◆◆
「いつも真剣に聞いてくれているのに、ウソついてごめんなさい」
電話の向こう側で、高校2年の少年が声を震わせながら打ち明けた。
「実母にセックスを求められる」
そう言って、少年は激しく泣いた。さらに、「コンドームを使うか使わないかも全部母が決める」とも話した。
その話を聞いていたのは、長年、若者から性の問題について電話相談を受けている医療職の梅原花江さん(仮名)だ。
少年から梅原さんに、最初に電話がかかってきたのは、2020年秋だ。そのとき少年は「母から性器を触ったらだめだと言われて育った」などと話し、自慰行為について相談してきた。その後も週に1回ほど、電話やメールで連絡があり、約1年、やりとりを続けてきた。
相談は、彼女との関係やセックスに関する話の他、「コンドームがうまくつけられない」「彼女に生理がこなくて妊娠が心配」といった内容もあった。
この日、少年から初めて実母との関係を告げられた梅原さんは頭が真っ白になった。「これまでの相談はすべてお母さんとのこと?」と電話越しに尋ねると、少年は「全部そうです」と答えた。
少年によると、少年は母と2人で暮らしている。中学3年のころに、交際相手と別れた母が風呂に入ってくるようになった。母は体を洗ってくれ、性器を触ってきた。「ごめんね」と言いながら、射精するまで手を動かした。
そのうちに性交するようになった。母が迫ってくるのは、部活のない水曜と日曜の夜が多い。母が酒を飲み始めるのが合図で、酔っ払って「お父さんに似ている」と言うのだという。
少年はトイレで自慰をして体が反応しないようにするが、母に口に含まれると反応してしまう。
「気持ち良く感じる自分もいて、楽しんでいたところもある」と少年は吐露した。「拒絶できない自分が悪い」と言う少年に、梅原さんは「体の反応としての射精と、行為に加担しているかどうかは別のこと」「あなたは悪くない」と繰り返し伝えた。
梅原さんは児童相談所(児相)に助けを求めることなども勧めたが、少年は「母を捕まえてほしいわけではない」などと固辞した。住所や名前は聞かないからこそ相談してくれている少年の気持ちを考えると、無理やり児相や警察に通報することはできない。梅原さんは少年を励まし続けた。

その後も、少年からはLINEやメールでの連絡が続いた。
「日曜日に(母が)お酒飲んで襲われた。(今日は避けるために)いまから友達のトコ行きます」
「お母さんとはその後、何回かSEXしてしまっています。精神不安に陥るって言われると断ることができなくて。お父さんに抱かれている気持ちになれると言われます」
「今日はお母さんの仕事納めなんです。いま、お母さんは飲んでいます。今日もか……って思うと気分が重くなります」
「これを最後にするからね、って毎回お母さんが言うんですが、全然ですよ。お母さんがかわいそうで断固断れない僕も悪いんですけどね」
〈「ママ活した。3万もらった」「50代の女性2人と性行為をして…」“母親から性暴力”を受け続けた高2息子が、高校時代に見せた性被害の後遺症〉へ続く
(朝日新聞社会部/Webオリジナル(外部転載))

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