現存するのはここだけの筐体も…大阪・通天閣商店街で火事 燃えたのは「ゲームセンターの聖地」だった

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1月21日17時半頃、大阪市浪速区の通天閣横にある通天閣本通商店街で火災が発生した。
火の手が大きく上がり、また、周囲には煙が充満しピーク時には通天閣やその付近が煙で覆われるほどの大きな火災となった。約500屬焼け、5階建てのゲームセンターの建物と真横の商店が焼失、40台ほどの消防車が臨場し消火活動に当たった。30代の男性従業員1名が搬送されたが、軽傷だという。
19時頃には鎮火したが、通天閣には当時100名ほどの入場者がおり、避難を余儀なくされ、周囲は騒然となった。火元となったのは「レトロゲーセン ザリガニ」というゲームセンター。このゲームセンターは知る人ぞ知るゲームセンターの聖地だったという。
このゲームセンターを利用しようと関東から訪れた人に現場で遭遇した。
「今日は大阪でイベントがあったので、終わってからザリガニで遊ぼうかという話になって友人と来たんですが、火事を目の当たりにしてショックです。何度もこちらで遊ばせていただきましたが、’80~’90年代のゲーム機が多く揃っていて、遊びながら当時に戻れた気分を堪能できました。全国にこの手の店はいくつかあるものの、現存する機械はここだけというレアモノもあり、まさにゲーセンの聖地でした」
と語った。
このゲームセンターにはセガやタイトー、ナムコなど、ゲーセン黄金期のメーカーの筐体(きょうたい)が所狭しと並び、ガンシューティングに格闘、レースゲームなど豊富なバリエーションで溢れていた。3フロアで構成されており、1階はあらゆる機種が集約されたフロア、2階はレトロゲームコーナー、3階はシューティングゲームコーナーだったという。
筐体は常時50台以上あり、ファンにとってはまさに聖地だった。店舗ではこまめに筐体を新たに導入するなど、ゲームファンが喜ぶ店づくりだったという。
筐体は発売当時の価格で機種にもよるが1台約25万円。現在、中古で流通している筐体は平均1台4万円程度の相場で取引されているが、このゲームセンターの筐体は状態が良いものが多く、また、稼働する現役の筐体として世界で1台だけではというような超絶レアなものも存在したという。
ゲーム名で羅列すると『ストリートファイター』『熱血硬派くにおくん』『アウトラン』『アフターバーナー』など、現役当時にプレイしたことのある人ならば垂涎のラインナップだった。焼失を免れた筐体もあったが、消火活動の放水により水浸しとなってしまっていた。
また、近年はインバウンド需要もあり、外国人旅行者が多くこの店を訪れることもあり、中にはツアーでこのゲームセンターを訪問するプログラムも存在したという。店の前には『ワニワニパニック』が鎮座しており、子どもにも大人気だった。中にはこのお店を目当てに来日する外国人観光客も多くおり、影響力は大きかった。
火災発生時、火の手が大きく上がったため、近隣店舗の店主らは着の身着のまま避難を余儀なくされたという。
現場の周囲には広範囲に規制線が張られていたため、20時頃に規制線が狭まるまでは近隣店舗の店主らであっても立ち入ることができず、状態を案じて駆けつけた店主らからは、中に入れないか警察官らに掛け合う場面も見られた。
また、比較的火災の影響のなかった近隣店舗でもこの騒ぎにより客足は遠のき、串カツ、居酒屋など、インバウンド需要で盛り上がる新世界周辺に影を落とした。火災の原因は調査中ということで、原因究明が待たれる。
取材・文・PHOTO:有村拓真

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