漁獲未報告の「闇マグロ」が発覚して横浜市中央卸売市場に激震…!「大漁なのに捨てまくっている」クロマグロ漁師の知られざる実状

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

いま、水産庁への漁獲報告をしていない通称「闇マグロ」が横行している。逮捕されるリスクも承知のうえで、漁師たちが闇に流すのはなぜか。大漁なのに売れない―マグロ漁が抱える問題を暴く。
11月上旬、横浜市中央卸売市場の関係者に衝撃が走った。
市場内に、漁法や漁獲海域を示す「漁獲証明書」がついておらず、セリにもかかっていない、謎の巨大クロマグロがポツンと置かれていたのだ。
これは、「闇マグロ」ではないか……市場関係者たちはそう囁きあった。仲卸業者が言う。
「クロマグロの漁獲量は、資源保護のために国によって厳格に管理されていて、水産庁への漁獲報告が義務付けられている。報告を怠れば、漁業法違反に問われます。しかし近年、漁獲未報告のまま裏ルートで市場に出回る『闇マグロ』が横行しているのです。
年末は市場の書き入れ時。このタイミングで『闇マグロ』が出たとなれば、市場の信用がゆるぎかねない。それだけに、関係者の動揺は大きかった」
横浜市場での闇マグロ情報をスクープした業界紙『日刊食品速報』によると、このマグロを買ったのは同市場の水産仲卸業者「角太商店」。同業者は漁獲証明書のないマグロを仕入れたことを認めているが、奇妙なのはその入手ルートである。
「なぜか角太は、東京都内にある税理士法人からクロマグロを買っていたんです。しかも、12本も。事務所ぐるみではなく一人の職員が取引を担当していたようで、その職員は『ブローカーからマグロを受け取り、それを角太に回した』という旨の内容を『食品速報』に語っている。
ちなみに、職員とブローカーは、秘匿性の高いメッセージアプリ『シグナル』でやり取りをしていたそうです。この流れを見るだけでも、さまざまなルートで『闇マグロ』が市場に入り込んでいることがわかる」(同前)
市場を管理する横浜市も今回の問題は認識しており、仲卸ら関係者を集めて注意喚起を実施。横浜市場の担当者は本誌の取材にこう語った。
「まさかうちの市場で……と、関係者一同、驚きをもって事態を受け止めています。当市場による事実確認の調査は、おおかた終了している。(税理士法人から)12本のクロマグロは2回に分けて届きました。すべて生の状態で、漁獲証明書はついていませんでした。
ただ、すべて契約書類には産地が表示されていて、最初の2本は大間産、残り10本は(大間以外の)青森産でした。産地表示に矛盾はないと考えていますが、DNA検査などで産地を調べたわけではありません。再発防止のため、当市場では仲卸をはじめ関係者に、各種ルールの厳守を呼び掛けています」
古くは縄文時代からマグロは日本人に親しまれてきた。もちろん世界で一番マグロを食べるのは日本人で、世界の消費量の4分の1を占める。クロマグロ1本に数百万円の値がつくことも珍しくなく、今年の「初セリ」では大間産のクロマグロが1億1424万円で競り落とされ話題を呼んだ。
そんな日本のマグロ市場に浮上した「闇マグロ問題」。実は発覚したのは横浜市場だけではなく、各地で逮捕者が続出している。
’23年2月には、青森県大間町の水産会社の社長二人が、漁師22人らと共謀し、クロマグロ約98トンを県に報告しなかったとして漁業法違反の疑いで逮捕。この闇マグロは大手回転寿司チェーン「スシロー」にも流れていた。さらに今年9月には、宮城県気仙沼市でも、漁獲したマグロ約10トンを報告しなかったとして漁船の船長が海上保安庁に摘発されている。
需要があるのに、わざわざ「闇」でマグロを流すのはなぜか。マグロの資源管理問題を長年追ってきた元日経新聞記者でジャーナリストの樫原弘志氏が言う。
「大きな理由は、国際委員会で定められた『漁獲可能枠』です。日本の年間漁獲枠は現在、30kg未満の小型マグロが4007トン、30kg以上の大型マグロが5614トンが基本になっています。
マグロが絶滅の危機に陥るリスクもあったことから’15年に漁獲制限は始まりましたが、実はマグロ資源は数年前から劇的に回復しており、漁獲枠を大幅に超えて獲れてしまっている。大半の漁師は泣く泣く獲れすぎたマグロを逃がしていますが、一部の漁師が未報告のまま闇に流して儲けているわけです」
漁獲枠は漁法によっても異なるが、その配分にも問題があると樫原氏は指摘する。
「大中型巻き網漁業が全体の約6割の枠を持つ一方、一本釣りや定置網といった沿岸漁業は3割程度。いま、マグロが獲れすぎて困っているのは枠が少ない沿岸漁業です。配分に歪みがあるのは、大中型巻き網業界が水産庁幹部たちの天下りを大勢受け入れているからでしょう。
いまやマグロは獲れる量より捨てる量のほうが多いのが実状です。たとえば北海道函館市のある漁協では、定置網で入ったマグロを年間2000~3000トンも逃がしています」
後編記事『大間や気仙沼では逮捕者も…!漁獲を報告せず裏ルートで流す「闇マグロ」が横行、漁師たちが明かす「驚きの流通システム」』へ続く。
「週刊現代」2024年12月7・14日合併号より
大間や気仙沼では逮捕者も…!漁獲を報告せず裏ルートで流す「闇マグロ」が横行、漁師たちが明かす「驚きの流通システム」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。