【露木 幸彦】こうして夫は「離婚した妻」にすべてを奪われた…!財産分与の時効を逆手に取った「毒妻」が送り届けた「恐怖の手紙」のヤバすぎる中身

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男女は平等の社会とはいえ、財産を渡す側は夫、もらう側は妻だと思われがちです。本当にそうでしょうか。
2024年は令和の世なのに専業主婦の妻が家計を取り仕切り、夫にこづかいを渡すという家庭は今でも多いです。まるで昭和の「かかあ天下」のように。
このような場合、財産を分与しなければ、妻が総取りです。もし「あんなの給料じゃ貯金もできやしない!」と言われ、そのことを鵜呑みにしてしまったら…元はといえば夫が稼ぎですが、離婚した後に取り戻すことができるでしょうか。
妻がへそくりを確保することが許されるかどうかです。
筆者は行政書士、ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談にのっています。
今回の相談者・久保修人さん(38歳。仮名)は結婚して以降、貯金の額を把握しておらず、そのせいで借金地獄に陥ったのです。
修人さんの自宅ポストに「以後、一切の財産を請求しないでください」との手紙が投函されたのは、離婚から2年後のこと。差出人は元妻(46歳)で実家の住所が書かれていました。これが何を意味するのか分からず、「気持ち悪いと思って」と筆者の事務所へ相談しに来たのです。これは離婚から2年1ヵ月目のタイミングでした。
離婚から現在まで修人さんと元妻は連絡をとっておらず、直接会ったり、電話で話したりするのはもちろん、メールやLINEは一通も届くことはありませんでした。「それなのに…」と修人さんはため息をつきます。
「僕には借金しかありません。貯金なんて夢のまた夢です」
こう言いますが、いったい、どういうことでしょうか?
民法の改正が国会で可決されたのは今年の5月でした。
改正の一つに共同親権の導入が含まれているので、このことを覚えている方も多いでしょう。一方、その影に隠れて「時効の延長」が決まったことが周知されていないようです。何の時効かと言えば、「離婚の財産分与」。改正によって2年から5年に延長されます。従来の2番以上なので大きな衝撃ですが、ここでいう時効とは期間の経過によって権利を失うことです(消滅時効)
ところで離婚の財産分与とは何でしょうか?
結婚している間に築いた財産は夫婦の共有です(民法762条)。夫名義でも妻名義でも共有です。しかし、離婚することで共有の状態は終わります。例えば、財産の合計が1000万円なら、夫、妻はそれぞれ500万円ずつ分け合いますが、(民法768条)改正の背景には離婚時、財産分与を「しない」夫婦が多いからでしょう。
早く分かれて縁を切りたい!そんな相手とお金の話をするのは極めて大変です。相手の懐具合を聞いても無理されるだろうし、自分の懐具合を教えたくない。そもそも財産はなく、借金まみれなら、火中の栗を拾いたくない。そんな思惑が影響し、何も言い出さず離婚。そして後日、ヤフー知恵袋に質問したり、ゼロ円の電子書籍を読んだり、市役所の無料相談で聞いたりして「俺って請求できるかも」と気付くのです。
これが2年以内か、5年以内かの違いです。
修人さんは三社の消費者金融(アイフル、プロミス、レイク)への返済として毎月2万6000円、三社の銀行カードローン(楽天、三井住友、千葉)として毎月2万3000円を返済中です。
仕事はパチンコメーカーの営業職で、ごく普通のサラリーマンです。毎月の手取りは23万円なので毎月のやりくりは厳しく、離婚から現在までカツカツの状態が続いていました。日本貸金業協会によるとクレジット業態の消費者向けの無担保貸付(2024年5月)は、前年同月比で3.6%も増えています。修人さんはなぜ借金の返済で苦しんでいるのでしょうか?
7年前、修人さんは妻と結婚するとき、生活費として毎月18万円を入れる約束しましたが、「これが失敗でした」と振り返ります。当時の手取りは残業代込みで33万円ですが、毎月10万円の家賃がかかるので、修人さんが自由に使えるのはわずか5万円。
妻へ弁当を作ってくれないので、自分で昼食を用意しなければなりません。また修人さんは車で出勤していますが、会社がガソリン代を支給してくれないので燃料費は自腹です。さらにがん保険の保険料、携帯電話の通信料、そして衣服や日用品などを支払うので、「手元に何も残らない状態でした」と嘆きます。
そんななか、襲ってきたのが2020年、新型コロナウイルスです。総務省の労働力調査によると2021年から3年連続で完全失業率は2.8%で高止まりしており、コロナ不況は相変わらず、続いています。
修人さんの会社では感染対策のため、会社から自宅待機を命じられ、取引先とのやり取りをリモートで行うことに。決まった時間内で働くので残業代がなくなり、手取りが31万円に減少。毎月2万~3万円の赤字なので携帯電話の契約を格安会社に変更したり、保険を解約したりしたのですが、それでも赤字は解消できませんでした。
やむを得ず、妻に「生活費を減らして欲しい」と頼んでも、「約束は約束でしょ!」「こっちも大変なの!」「結婚するんじゃなかった」と逆上するばかりで、説得に失敗。修人さんは苦肉の策でカードローンを利用したのですが、これではコンビニ弁当を借金で購入するようなもの。
「あのときは昼飯の味が分からなかったです」と懺悔します。なぜなら、翌月も翌月も相変わらず赤字のまま。前月の借金を今月の借金で返済する自転車操業に陥り、借金は雪だるま式に膨れ上がったからです。
結局、借金は3年間で80万円に達したのです。
しかし、妻の問題は金銭感覚だけではありませんでした。妻は片付けられないタイプ。修人さんは衣服の洗濯を専業主婦の妻に頼んだのに、洗濯された衣服が修人さんの元へ戻ってこないことが繰り返されました。例えば、下着やYシャツ、靴下など出勤するのに必要な衣服ばかり。なぜでしょうか?
納戸には妻の私物があふれ返っており、どこに何があるか分からない状態だからです。しかも、妻は一度、手に取ったものを仕舞わず、床の上に置いたままにするので、足の踏み場がありません。
修人さんはそのことを注意するのですが、妻は「ああ、そう」という感じで真剣に聞こうとせず、週末に修人さんが片付けても、また元に週中には戻ってしまうのです。挙句の果てには妻が掃除機をかけないので、何度には高さ1cmのほこりが蓄積する有様。いわゆる「汚部屋」です。
納戸に掃除機をかけるかどうか。そんな些細なことをきっかけに大ゲンカに。妻は居住空間だけでいい、修人さんはすべての部屋に掃除機をかけるべきと言い、お互いに譲らず、夫婦の仲はますます険悪に。
そして妻が結婚指輪まで紛失してしまったことで、結婚生活は終わりを告げます。
さすがの修人さんも堪忍袋の緒が切れ、妻に対して激高。「それがどういうことだか分かっているのか? 僕のことを粗末に扱っているから、そういうことになるんだろ?もう一緒にやっていけない!」と言い放ったのでした。
それから2年後、修人さんは筆者のもとにやってきたのでした。
つづきは後編『へそくりに隠された毒妻の「財産収奪計画」の手口が狡猾すぎる…!時効を知らずに借金を重ねた「夫の悲しき末路」』で詳しく見ていきましょう。
へそくりに隠された毒妻の「財産収奪計画」の手口が狡猾すぎる…!時効を知らずに借金を重ねた「夫の悲しき末路」

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