「ママ友との関係に悩んでいる」
「保育園が素晴らしかったから、小1の壁が怖すぎる!」
「小学校に入ったら仕事をどうしようか悩んでる」
SNSではこのような声が多く見られる。
現在小学6年生の長男が、自閉スペクトラム症とADHDの 診断のある知的境界域だという、りっきーさん。現在は小学2年生の次男とふたりの子育てをしている。
りっきーさんが長男の育休中に取っていた保育士資格が、発達の気になる部分に気づくきっかけになり、相談する後押しになったという。そして診断を受けて療育(発達支援)に通う中、自らも学び、モンテッソーリ教師の資格を取得した。そして「モンテッソーリ」と「感覚統合」の学びにより、自身がとても救われたのだという。
そんなりっきーさんが、発達が気になる子の 「就学前から小学校6年間」に直面する悩みや 困りごとについて、実際の経験から学んだ対応方法やサポートグッズを一冊の本にまとめたのが『感覚統合×モンテッソーリの視点で伸びる! 発達が気になる小学生の学校生活&おうち学習ガイド』だ。
本書から抜粋してお届けする第1回「4歳でADHD疑い、自閉スペクトラム症・軽度知的障害の診断…母が気づいた「困りごと」の正体」では、診断を受けた時の考え方、受け取り方の気づきをお届けした。
第2回は、「ママ友」と「小1の壁」についてお伝えする。
発達が気になる子を育てていると、幼稚園や保育園で他のママさんたちとの関係に悩む方も多いかもしれません。私も長男が年中の頃までは送り迎えの時や参観での我が子の様子を見て「もしかしたら何か思われている?」「ママ友と話して他の子の成長を知るのが苦痛」など、辛い気持ちになることがあり、自ら壁を作っていたなと思います。年長の後半頃から長男の成長も見えるようになり、少しずつ自分自身の気持ちに余裕が出てきて、壁を作らず他の保護者と言葉を交わすことができるようになりました。
まずお伝えしたいのは、「ママ友」とはあくまで子どもを通しての関係であるということ。だから、子どものために!と無理をしてお付き合いをするぐらいなら、意識的に離れて距離を置いてもいいと思います。小学校に入ると、学童の迎えを除き、送り迎えをすることも少なくなるので、正直なところ、ママ友を作らなくても6年間やり過ごせるはず(笑)。もちろん、きっかけは園や学校であっても、子どものことと関係なしに気が合う方と出会うこともあるので、そんな時は仲良くできたらいいな、ぐらいに思っていると気楽です(未就学時代は頑なだった私にも、今ではそういう友人が数人できました)。
長男の発達で悩んだことを通して、私自身はいい意味での鈍感力とブレない強さを手に入れられたように感じます。ママ友に限らず友人関係において、「陰口を言うような人とは付き合わない」「違和感を覚えたらスルーしない」「みんなと一緒にしなければと迎合せず、集団から外れる勇気を持つ」ということを学び、とても楽になりました。白い目で見られることもゼロではない障害児育児。でも必ず、陰ながら見守ってくれたり、サポートしてくれたりする人がいます。そんな温かい人たちに感謝をしながら、私もいつか悩んでいる人たちをそっと後押しして、恩返しができたらいいなと思っています。
就学相談や入学準備については第1章でも書きましたが、共働き家庭にとって避けては通れないのがいわゆる「小1の壁」問題。発達が気になる子を育てていると、通常の入学準備に加え、考えなければならないことが遥かに多いのが現実です。年長になると、就学先の決定とあわせて、放課後や長期休みの過ごし方についても調整する必要があります。
低学年を乗り越え、親子ともにペースをつかめると、道筋も見えてくるので、この数年を乗りきれるよう準備はしっかりとしておきたいところ。勤務先の時短勤務や休暇制度の確認、働き方の変更も含め、どんな選択肢があるのか早めに検討しましょう。放課後等デイサービスの見学は年長になったらスタートし、秋~冬にかけて利用申請をして年明けには決まっていると安心ですね。
我が家は3ヵ所の事業所と契約をし、送迎時間の調整や長期休みでの利用の仕方など、個別に相談を重ねました。複数契約したのは、居場所の確保に加え、事業所が万が一なくなった場合のリスク分散を考えてのことでした。
また、放課後等デイサービスは長期休みや土曜日は利用時間が10~16時など勤務時間をカバーしきれないところが多く、朝と夕方をどうするかの問題が……。かといって一日中学童にいるのは特性からも難しいと判断し、結果的に8~10時は学童、日中は送迎してくれる放課後等デイサービスへ、また夕方に学校に送ってもらい16~18時を学童で過ごしました。
預ける段取りや利用時間の相談を年長のうちにすることを考えると、「発達っ子の小1の壁は年長から始まっている」と言っても過言ではありません。入学後は、きょうだいがいて送迎先が違うとさらに大忙し。夫婦の役割分担のほか、親や親戚の協力、民間学童やファミサポの活用、習いごとでの居場所確保、家事の外注など、使える手段はフル活用し、1年生を乗り越える準備をしましょう!
入学前、小学校生活は長く大変な道のりだと思っていました。心配ごとを数えればキリがなく、6年生になった長男の姿が全く想像できなかったです。入学直後は新しい環境に慣れず、支援学級の先生に抱っこされていた長男。運動会では疲れてうとうと。授業中は45分間座っていられず、床に寝そべってしまうことも。そんな長男も6年生になり、図書委員会の副委員長に立候補! 頑張って貸し出し業務をしているようです。
休日にはひとりで自転車に乗って駅前の図書館に行き、本を借りたり、借りたい本を検索して予約できるように。幼児期から取り組んできた掃除や料理への興味が持続し、朝ごはんにはオムレツとトーストを用意してくれるまでになりました。現在、授業では普通学級で過ごす時間が6割強。補助なしで過ごし、発表もできるようになりました。「小学校6年間で我が子はどれぐらい成長するの?」と不安でいっぱいの保護者の方に、発達がゆっくりな子でもこんなに成長したよ! とお伝えしたいです。
長男の大きな成長は、コツコツとやってきたおうちモンテと視覚支援、そして感覚統合が進んだことがとても大きいと感じています。脳の仕組みの違いから、マジョリティの中での生きづらさはゼロにはなりませんが、長男なりに環境に適応し、楽しく日常を過ごせるようになったことを、親として何より嬉しく思っています。
親も子も困った時に助けを求められる場所がたくさんあると安心です。躊躇せず頼れるところには頼ること! その上で、我が家では将来を見据えて、長い時間を過ごす家での環境づくりと地道な取り組みを継続してきました。小さな積み重ねが数年後、10年後、確実に本人の力になっていくはず。繰り返しがやがて習慣になり、ある時ググッと成長する姿を何度も目の当たりにしてきました。私のモットーは「いいかも!」と思ったら深く考えず、結果は後回しでまずやってみること。完璧を目指さず、合わないと感じたら思い切ってやめる勇気も大事です。
長男を見ていると、サポートが必要な面はあるものの、身の回りのことで大きな困りごとはなく、子育てのフェーズが一歩次のステージへと進んだ感覚があります。6年生になり、自分で物事を決め、やってみようと試行錯誤する姿も見られるように。5年生までは私が内容を決めていたおうち学習も「明日算数のテストだから勉強するぜ!」「今日はタブレットじゃなくて英語のワーク!」と自ら計画を立てて向き合うことも多くなりました。
こうなったら母は一歩引いて見守るのみ。これからの私にできるのは、社会の中で暮らし、働き、楽しむ姿を見せること。そう感じるようになった私は、仕事のギアを一段上げ(ついでに推し活や趣味へ割く時間も増やし)忙しく動きまわっています(笑)。長男の発達に悩み、泣いたあの頃にはこんな日が来ることを想像もしていませんでした。これも、たくさんの方々に支えていただき、親子ともに一歩ずつ進めたから。そんな我が家の経験をまとめたこの本が少しでも皆様のお役に立てば、とても嬉しいです!
4歳でADHD疑い、自閉スペクトラム症・軽度知的障害の診断…母が気づいた「困りごと」の正体