タクシー運賃が変わる?燃料費高騰に利用客減… 業界の現状は

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市民の生活の足として欠かせないタクシー。コロナ禍での利用客の減少や燃料価格の高騰などを背景に、石川県内でもタクシー運賃の値上げに向けた動きが起きています。
今年8月23日、金沢市の冨士タクシーが北陸信越運輸局に対し、金沢市と周辺の自治体を含む「金沢地区」における運賃改定を要請しました。
要請では初乗りの距離を従来の約1.6キロから1キロに変更し、中型車と小型車の区分を普通車に統合したうえで、初乗り運賃は560円、その後の加算運賃を244メートルごとに90円とするよう求めていて、実質の値上げ率は26%となっています。
実際に値上げが実施されるまでには、越えなければならないハードルがいくつかあり、まず11月22日までに運賃改定を要請した事業者の合計車両台数が、地区全体の7割を超える必要があります。
金沢地区では、今年8月時点で1265台の車両が保有されていますが、11月2日までに内容はそれぞれ異なるものの18社が要請書を提出し、その合計車両台数は、1045台と全体の8割に到達。運賃改訂に向けて大きく前進しました。金沢地区での値上げが実施されれば、2008年以来15年ぶりとなります。
県タクシー協会の会長を務める大和タクシーの市村祐二相談役は、各社が15年ぶりの値上げに向けて動いているのは、業界の置かれた厳しい現状からだといいます。
県タクシー協会 市村祐二会長「業界としての調達コストが重荷になってきている。顕著なのは燃料費」

燃料コストは以前に比べ1.5倍にまで高騰。一方、利用客はコロナ前と比べて7割程度にとどまっていて、全国的に見ても回復の動きが鈍いといいます。
県タクシー協会 市村祐二会長「北陸新幹線の利用者、関東からの流れがコロナ禍前は他の地区と比べて極端に大きかったので、その差がギャップとしてあるという分析」

業界全体が厳しい経営を迫られる中、事業者それぞれが対応するための取り組みを行っています。石川交通では国の助成金を活用し、おととし4月から2年間、従業員の人数を日によって最大半分にまで減らす休業措置を取ってきました。一方で石川近鉄タクシーは、会社の福利厚生を充実させることで、人手の確保に力を入れているということです。
大和タクシーも経営の効率化を図るため、今年1月から本社を西金沢に移転し、もともと別の場所にあったバスやハイヤーの貸し切り事業部を集約。拠点をスリム化することで、コスト削減につなげています。
足の不自由な利用者を想定した車いすを乗せられる福祉車両の充実にも早くから取り組んできました。
大和タクシー 市村祐二相談役「皆さんが利用したい時間帯は、通院時や買い物の時など決まっていたので、予約がぶつかる。欲しい時にいつでも使えるように準備した」

後部座席からスロープを使って車いすを搬入するため、出し入れがスムーズにできるのが特徴で、大和タクシーでは現在、車両全体の約4分の1がこの福祉車両タイプだということです。
運賃の改定が行われるのは早くても来年の4月。事業者にとっては厳しい状況が続く中、各社が工夫をこらした取り組みで難局を乗り切ろうとしています。
県タクシー協会 市村祐二会長「従業員や乗務員の給料が上昇するような環境づくりも責任としてある。15年間運賃改訂のない形でやってきたので理解をいただきたい」

今月22日時点で運賃の改定を要請している事業者の合計車両台数が地区全体の7割以上を維持していれば、実際に値上げが必要かどうかや具体的な運賃設定を決めるための審査が約5か月間にわたって行われます。
北陸信越運輸局によりますと、審査が開始されてから値上げが実現しなかったケースはこれまでにないということで、15年ぶりの運賃改訂が現実味を帯びてきています。

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