「儲けすぎのNHK」剰余金は2231億円、新社屋に1700億円、受信料未払いに罰金案も

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今年6月の改正放送法の成立を受け、NHKは値下げやチャンネルの停波といったスリム化案を公表した。その一方で、「罰金」制度による受信料の徴収強化も注目されている。果たして、本当の改革と言えるのか──。【全3回の第1回】
【写真】石張りの壁の前、革の椅子に座布団を敷き、タブレットの前で下唇を下げ眉毛を上げた前田晃伸NHK会長 10月11日に公表された「NHK経営計画(2021~2023年度)」修正案には、受信料値下げや衛星放送1波(BSプレミアム)の停波が盛り込まれた。2023年10月から、地上波だけの「地上契約」は月額125円、衛星放送も受信できる「衛星契約」を結ぶ世帯は月額220円引き下げるという。

NHKの受信料については、テレビを持っているだけで月額2170円、年間約2万4000円(衛星契約で口座振替・クレジット払いの場合)の負担となり、“高すぎる”との声が多い。 また、受信料不払い世帯に対しての訴訟やNHK訪問員による集金時のトラブルなどが度々問題視され、国会でも取り上げられてきた。そうしたなかで今回は「過去最大規模の値下げ」と謳っているが、生活者目線からすれば微々たる額で、「そもそもNHKは儲けすぎで、改革は不十分」という批判が噴出している。「明らかにNHKは儲けすぎです。コロナ禍もあり民放各局の収入が軒並み下がるなか、一人勝ち状態。受信料制度の抜本的見直しを含め今後のあり方が問われるべきです」 そう指摘するのは、元経産官僚で政策工房代表の原英史氏だ。「NHKの収入増を支えているのが受信料支払い率の上昇です。受信料の未払い訴訟などの影響で契約世帯は年々増え続けてきました。そのため、民放を尻目に収入増が続き、剰余金が膨んでいます。 2004年度に366億円だった剰余金は2021年度には過去最大の2231億円に膨らみ、それを原資に受信料を引き下げると宣伝していますが、そもそも税制を優遇される分、利益を制限される特殊法人なのにそれだけの剰余金を貯め込んでいることが異常なのです」(原氏) NHKの徴収率はここ10年で72.5%(2011年度)から79.6%(2021年度)に上昇し、2021年度の放送収入は民放トップの日本テレビが約2460億円(スポット+タイム)に対し、NHKは約6801億円(受信料収入)。 さらに、受信料以外の収入もある。今年6月28日に発表された2021年度決算(連結)によれば、NHKの全事業収入は7508億円。つまり約700億円が受信料以外の収入で、2021年度は約450億円の黒字となっている。「NHKオンデマンドなどのネット事業や出版などの版権ビジネス、NHKホールなど施設の運営といった、内訳が詳細に示されていない収入もあります。東京・渋谷では新社屋を建て替え中という状況でなお潤沢な資金繰りですから、儲けすぎと言われて当然でしょう」(原氏) 2026年末の工事完了を目指す新社屋の建設費用は約1700億円に上るという。脅しにも見えるようなやり方に反発も さらなる受信料の徴収強化にも動いている。 経営計画と同時に11日に公表された「受信契約に関する規約変更」の素案には、「テレビを設置しながら期限までに受信契約をしない場合に受信料の2倍の割増金を請求できる」とする「割増金制度」が盛り込まれた。2023年4月以降の未契約分に適用され、受信料とは別に未払い分の2倍相当額をペナルティとして課すことができるわけだ。「値下げとセットでの2倍の“罰金制度”ですから、結局のところこの改革が受信料の徴収強化を目的としているようにさえ見えてしまう」 そう語るのは、NHK問題に詳しいジャーナリストの小田桐誠氏。「長期間の滞納者への訴訟などNHKは受信料徴収の強制力を徐々に強めてきましたが、ついに罰金かという感想を持ちました。もともと割増金の議論はありましたが、通常なら実施までに1~2年間の試行期間を作るでしょう。それがいきなり来年4月からのスタートでは、国民への説明不足の感が否めない。 未契約者への脅しにも見えるようなやり方に対しては、反発も大きいと予想されます」 受信料の値下げは内部留保(利益剰余金)を契約者に還元するためと説明されているが、その一方で2倍の割増金制度を作るのでは「値下げの原資となる内部留保を割増金で増やすという印象になり、納得し難いものとなる」と小田桐氏は指摘する。(第2回に続く)※週刊ポスト2022年11月11日号
10月11日に公表された「NHK経営計画(2021~2023年度)」修正案には、受信料値下げや衛星放送1波(BSプレミアム)の停波が盛り込まれた。2023年10月から、地上波だけの「地上契約」は月額125円、衛星放送も受信できる「衛星契約」を結ぶ世帯は月額220円引き下げるという。
NHKの受信料については、テレビを持っているだけで月額2170円、年間約2万4000円(衛星契約で口座振替・クレジット払いの場合)の負担となり、“高すぎる”との声が多い。
また、受信料不払い世帯に対しての訴訟やNHK訪問員による集金時のトラブルなどが度々問題視され、国会でも取り上げられてきた。そうしたなかで今回は「過去最大規模の値下げ」と謳っているが、生活者目線からすれば微々たる額で、「そもそもNHKは儲けすぎで、改革は不十分」という批判が噴出している。
「明らかにNHKは儲けすぎです。コロナ禍もあり民放各局の収入が軒並み下がるなか、一人勝ち状態。受信料制度の抜本的見直しを含め今後のあり方が問われるべきです」
そう指摘するのは、元経産官僚で政策工房代表の原英史氏だ。
「NHKの収入増を支えているのが受信料支払い率の上昇です。受信料の未払い訴訟などの影響で契約世帯は年々増え続けてきました。そのため、民放を尻目に収入増が続き、剰余金が膨んでいます。
2004年度に366億円だった剰余金は2021年度には過去最大の2231億円に膨らみ、それを原資に受信料を引き下げると宣伝していますが、そもそも税制を優遇される分、利益を制限される特殊法人なのにそれだけの剰余金を貯め込んでいることが異常なのです」(原氏)
NHKの徴収率はここ10年で72.5%(2011年度)から79.6%(2021年度)に上昇し、2021年度の放送収入は民放トップの日本テレビが約2460億円(スポット+タイム)に対し、NHKは約6801億円(受信料収入)。
さらに、受信料以外の収入もある。今年6月28日に発表された2021年度決算(連結)によれば、NHKの全事業収入は7508億円。つまり約700億円が受信料以外の収入で、2021年度は約450億円の黒字となっている。
「NHKオンデマンドなどのネット事業や出版などの版権ビジネス、NHKホールなど施設の運営といった、内訳が詳細に示されていない収入もあります。東京・渋谷では新社屋を建て替え中という状況でなお潤沢な資金繰りですから、儲けすぎと言われて当然でしょう」(原氏)
2026年末の工事完了を目指す新社屋の建設費用は約1700億円に上るという。
さらなる受信料の徴収強化にも動いている。
経営計画と同時に11日に公表された「受信契約に関する規約変更」の素案には、「テレビを設置しながら期限までに受信契約をしない場合に受信料の2倍の割増金を請求できる」とする「割増金制度」が盛り込まれた。2023年4月以降の未契約分に適用され、受信料とは別に未払い分の2倍相当額をペナルティとして課すことができるわけだ。
「値下げとセットでの2倍の“罰金制度”ですから、結局のところこの改革が受信料の徴収強化を目的としているようにさえ見えてしまう」
そう語るのは、NHK問題に詳しいジャーナリストの小田桐誠氏。
「長期間の滞納者への訴訟などNHKは受信料徴収の強制力を徐々に強めてきましたが、ついに罰金かという感想を持ちました。もともと割増金の議論はありましたが、通常なら実施までに1~2年間の試行期間を作るでしょう。それがいきなり来年4月からのスタートでは、国民への説明不足の感が否めない。
未契約者への脅しにも見えるようなやり方に対しては、反発も大きいと予想されます」
受信料の値下げは内部留保(利益剰余金)を契約者に還元するためと説明されているが、その一方で2倍の割増金制度を作るのでは「値下げの原資となる内部留保を割増金で増やすという印象になり、納得し難いものとなる」と小田桐氏は指摘する。
(第2回に続く)
※週刊ポスト2022年11月11日号

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