「強制わいせつで逮捕→たった1ヵ月後に診察再開」…メディアが報じない「野放し状態の”犯罪級”医師のヤバすぎる正体」

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7月24日、厚生労働省は、刑事事件で有罪判決を受けるなどした医師と歯科医師の計25人の処分を決定。医道審議会の答申を受け、1人を医師免許取り消し、計11人を業務停止3ヵ月~3年とした。
医師免許取り消しになった医師は、この行政処分の決定直前まで、診察を続けていたとされる。しかし、法的には問題がない上に、このようなケースは決して珍しいことではないという。
前編「【独自】『14歳少女にわいせつ行為で懲役3年』…トンデモ児童精神科医が執行猶予中に堂々と診察していた『驚愕の新事実』」から続く。
わいせつ行為などをした問題ある医師を処分できる仕組みは存在する。医師法第4条と第7条だ。
第4条 次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。
1.心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
2.麻薬、大麻又はあへんの中毒者
3.罰金以上の刑に処せられた者
4.前号に該当する者を除くほか、医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者
第7条 医師が第4条各号のいずれかに該当し、又は医師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。
1.戒告
2.三年以内の医業の停止
3.免許の取消し
しかし、この医師法の第4条と第7条が機能不全に陥っているという。
これまで数多くの精神医療機関の不正の摘発に関わり、近著に『精神医療ビジネスの闇』(北新宿出版)がある、米田倫康氏が指摘する。
「実際の医師の行政処分の対象は『罰金以上の刑に処せられた者』と保険診療の不正などの『医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者』にほぼ限定された運用になっています。第7条の『医師としての品位を損するような行為』に対しても罰せられるはずですが、ほぼ機能していない。というのも、その条文を理由に処分された直近の事例が1982年にまで遡らなければならないからです」(米田氏)
米田氏によると、患者にわいせつ行為などをして逮捕され、事実を認めているにもかかわらず、示談で済ませて、平然と診察を続けている精神科医も存在するという。
「患者に対する強制わいせつなどを繰り返し行なっていた都内の精神科クリニック院長のT医師は、その都度示談で済ませ、結果として不起訴となり刑事裁判に至っていません。2018年12月に強制わいせつ容疑で逮捕された際は、実名やクリニック名がテレビなどでも報道されましたが、たった1カ月後に診療を再開。クリニック名も変えて今も診察を続けています。T医師本人は容疑を認めていましたが、不起訴になれば、行政処分の対象から外れます。そのせいでこのような非常識なことが許されてしまうのです」(米田氏)
医療情報サイトの「ドクターズ・ファイル」では、T氏がクリニックの院長として、登録されていたことを確認できた。
しかし、クリニックのホームページには、院長のプロフィールなどの記載が一切なく、過去に強制わいせつ行為をして逮捕された医師だと、患者にはわからないようになっていた。
「ほかにも、わいせつ行為を何度も繰り返しながら示談で済ませて行政処分を逃れている精神科医は数多くいます。その場合でも法律上は処分できるはずなのですが、そういう医師が処分されていないのが現状の運用です。しかも患者は問題を起こしている医師を知る手段がない。加害者の人権ばかり尊重する結果、被害者の人権はもちろん、必要な情報を知って自己決定する患者の権利を踏みにじっているのです」(米田氏)
医療職の行政処分の内容は、厚生労働省の医道審議会で決められる。医道審議会は、30人以内の委員(日本医師会会長や医療専門家や学識経験者など)で構成されていて、行政処分以外の権限としては、医療職の国家試験のあり方や看護師などの人材確保に関する指針作成なども有する。
しかし、行政処分については、「処分まで時間がかかるケースが多い」「処分の多くは刑事処分の後追いで独自の調査があるわけではない」「日本は医師の処分が諸外国に比べて極端に少ない」「医道審議会の議事が非公開のため、行政処分の基準やその適用について透明性に欠ける」といった専門家の意見もある。
一方、大阪市にある谷口医院院長で、総合診療医の谷口恭氏は「『医道審議会はこのように改革していくべきだ』と叫んだところで、いまさら何も変わらない」と指摘する。
「厚労省や医道審議会に問題があるのは自明ですが、単に批判しても解決しません。問題のある医師の“処分”の適正化実現にはメディアと世論にかかっていると考えています。
今回、医師免許取り消しになった児童精神科医の例でいえば、医師の実名と罪状は一部のメディアでは報じられましたが、大手メディアの報道はごくわずか。もしも大手メディアが大々的に報じていれば、この医師が熊本の病院で外来を始めたときにバッシングが起こったはず。
しかし、堂々と病院のホームページにこの医師の名前が掲載されていたにもかかわらず、世論もメディアも無関心。私がメディアの人間なら、この事実を公開し、さらに地元の市民団体に相談したり、市役所に説明を求めたりすると思います」(以下「」は谷口氏)
谷口氏は「国民が問題ある医師の存在を把握できるような仕組みが必要だ」と語る。
「たとえば、性犯罪など法的のみならず倫理的に許されない罪を犯した医師のリストをつくり、誰もがすぐに参照できるようにする。国民が自分を担当する医師がそのリストに載っていないかどうかを調べられるようにすれば、医道審議会や行政処分のあり方などという遠回りの議論を経ずに問題が解決するでしょう」
6月19日には、子どもを性被害から守る「日本版DBS法」(学校や保育所など子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を確認するよう義務づける制度)が成立した。
しかし、この対象に、実際に子どもと接する小児科医や児童精神科医は含まれておらず、制度の不備がある。
医療行政には期待できない以上、国民が“トンデモ医師”の存在を把握できるような何らかの仕組みが必要ではないだろうか。
【独自】「14歳少女にわいせつ行為で懲役3年」…トンデモ児童精神科医が執行猶予中に堂々と診察していた「驚愕の新事実」

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