充電中のモバイルバッテリーが突然、発火…大惨事になりかねない「危険サイン」を専門家が明かす

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充電中のモバイルバッテリーから炎が上がり、火事になりかけたというXのポストが6月に投稿され、1.2万“いいね”(7月24日現在)と注目を集めた。
また、水をかけて鎮火を試みようとした投稿者に対し、「リチウムイオン電池の火災に水をかけることは厳禁だ」といったコメントも相次いでいた。はたして発火したモバイルバッテリーに水をかけるという対処法は、本当にいけないことなのだろうか。
――スマホの充電などの用途でモバイルバッテリーが必需品となっている人も多いだろうが、劣化による買い替えどきや、発火時の対処法などについて、意外と知らない人が多いのかもしれない。
そこで今回は、モバイルバッテリーを含むリチウムイオン電池搭載製品の発火事故や対処法について、独立行政法人「製品評価技術基盤機構(NITE)」製品安全センター 製品安全広報課の宮川七重氏に話を伺った。(以下、「」内は宮川氏のコメント)
前述の6月のポスト以外にも、今年4月には神奈川県の簡易宿泊所でモバイルバッテリーから出火した可能性が高いとされる火災が発生したと報じられ、今年5月にも長野県でモバイルバッテリーが出火原因とみられる車両火災が発生したと報じられていた。
このようにモバイルバッテリーの発火トラブルは頻繁に起こっているようだ。
東京消防庁が7月12日に発表した報道資料によると、リチウムイオン電池搭載製品からの出火が過去最多だという。令和5年中、東京消防庁管内においてリチウムイオン電池を搭載した製品から出火した火災は、速報値過去最多の167件発生。今年は6月末時点でみると速報値107件発生しており、前年同期比の79件から28件(35.4%)増加しているとのことだ。
「たしかにモバイルバッテリーの発火トラブルは近年頻繁に起こっています。電気用品安全法の施行により平成31年2月以降に国内で製造・輸入され販売されたモバイルバッテリーには、安全基準に適合していることを示すPSEマークが付いているはずです。ですが、まず平成31年2月より前に製造されたものや、海外のマーケットから個人が直接買い付けたものは、PSE対象製品には該当せず、安全基準を満たしていないこともあるためご注意してください。
また、PSE対象製品だからといって絶対に安全だというわけでもありません。モバイルバッテリーは消耗品ですし劣化が伴いますし、どんな商品でも発火のリスクはあるとお考え下さい」
モバイルバッテリーをお持ちの方は、ぜひPSEマークが付いているかどうか、まずチェックしていただきたい。PSEマークがあれば確実に安心だと断言できるわけではないが、基本的な安全基準を満たした商品ということになる。
では製品を選ぶ際、どういった点をチェックしたり気を付けたりすべきだろうか。
「ネットショッピングの場合、海外の企業が日本の企業の名前を勝手に使用していたり、PSEマークを偽装していたりするケースも想定されます。極端に安価、事業者の連絡先が正しく記載されていない、製品説明の日本語がおかしい、PSEマークに事業者名が並記されていないなど、おかしいところはないか、充分注意してください。
商品現物がきちんとしたメーカーの製品でPSEマークも本物であれば、一定の安全基準は満たしておりますし、なにか不具合があった際にはリコールをしたり、事故が起こった場合に補償がなされたりします。低リスクを望むなら、日本国内で連絡が取れる有名メーカーの製品を選ぶようにするのが無難でしょう」
日本の有名メーカーでPSEマークが付いていたとしても、絶対安全とは言い切れないため、どういった状況下になると発火リスクが高まるかも知っておきたいところだ。
「モバイルバッテリーは物理的な衝撃にとても弱く、落としたり圧迫したりすると発火リスクが高まります。ですから高所から落としてしまった製品は、安全に処分したうえで買い替えたほうがいいかもしれません。また、あくまで一例ですが、バッグの中にしまっておいて、その上に座るなどして体重をかけると、内部で圧迫されてしまうので注意してください。
それ以外でもモバイルバッテリーは高温に弱いという特徴がありますので、暑い季節は特に保管場所には注意が必要です。たとえば炎天下で駐車された自動車のダッシュボードは、70℃近くまで上昇することもあるため、車内に放置していて火災につながったケースもあります。家の中でも直射日光が当たるような場所に置いておくと、熱がこもってしまうため製品の発火リスクは高まるでしょう。
ほかにも、充電器に接続しっぱなしにすることはバッテリーに負荷がかかりますし、また反対に充電を使い切って完全に放電してしまうのも製品にあまりよくありません。そして、不要になったからといって使用していないモバイルバッテリーをずっと放置しておくのもよくないんです」
では、モバイルバッテリーの推奨される使用期限や買い替え目安はあるだろうか。
「どれぐらいの頻度で利用しているかや、普段どういった保管の仕方をしているかによって製品の劣化速度が異なるため、○年ぐらいが買い替えの目安といったことは一概に言えません。ただ一般的にモバイルバッテリーの充放電の繰り返しは、300回が目安だと言われています。
充電に時間がかかるようになったり電池の持ちが悪くなっていたり、もしくは製品自体が膨張していると感じることがあれば、劣化がだいぶ進んでいるサインと考えられますので、安全に処分することを検討してみてください」
300回が目安だとすると、たとえば2~3日に1回は充電しているという人であれば、2年ぐらいが買い替えどきなのかもしれない。
記事後編は「寝ている間に発火…モバイルバッテリーに潜む、知らないと恐ろしい『リスク』と『正しい対処法』」から。
寝ている間に発火…モバイルバッテリーに潜む、知らないと恐ろしい「リスク」と「正しい対処法」

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