「足が痛い」は子どもの熱中症のサイン! 大人より+7度の体感気温…酷暑の夏、見逃してはいけない子ども熱中症SOS

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全国各地で気温30度超えの日々が続いている。今年も、昨年の記録的猛暑を上回る「酷暑」の夏になる予感。そこで気になるのが熱中症について。大人はまだ「しんどい」基準が自分でわかる。しかし、子どもは自分でSOSを出しにくいもの。親が見逃してはいけない、子どもの熱中症のサインとは? けいこ豊洲こどもクリニック院長・塚田佳子氏に聞いた。
【画像】汗を吸収し、体温の上昇を防ぐインナーの素材
連日、「熱中症で倒れて搬送された」というニュースが後を絶たない。そもそも熱中症とは、どういった状態を指すのか。
「高温多湿な環境に体が適応できないことで起こる症状の総称です。汗をかきすぎることによる脱水症状や、体に熱がこもって血管が拡張することにより、血液が循環できなくなっている状態を指します」(塚田佳子氏。以下、同)
熱中症は、大人よりも子どもの方が注意が必要だという。「子どもは身長が低い分、地面からの照り返しの影響を大人よりも強く受けます。そのため、大人よりも暑さをより感じるのです。身長120cmの子どもと、身長170cmの大人では、同じ場所に立っていても子どもの方が7度も体感気温が高いという実験結果があります」(※2023年、株式会社ウェザーマップとサントリー食品インターナショナル株式会社の共同研究による発表)
大人でも限界を感じるこの暑さ。子どもはより危険な状況下にいるということを、まずは認識しておかなければならない。
では、親がチェックすべき子どもの熱中症のサインとは?
「まず、初期症状としては頭痛と吐き気を訴えるお子さんが多いです。風邪の症状と間違えられることもありますが、今の時期はこの時点で熱中症を疑ってください。また、親御さんから見て顔が赤く火照っているのも、体温が上がって熱が体にこもり始めている危険なサインです」
うっかり見落としてしまいそうな意外な熱中症のサインは他にも。「筋肉痛です。汗をかいて体のナトリウム濃度(塩分濃度)が下がることにより、足が痛くなったり、つった感覚になったりすることがあります。外遊び中や帰宅後に子どもが足を痛がると、まず怪我を心配するかと思います。実は熱中症だったということもあるので、気を付けてください」
また、熱中症の重症度が上がるとこんな症状も。「呼びかけに反応しない、ボーっとしているという状態も熱中症の症状です。幼児だと眠気や疲れだと勘違いされがちです」
これは老人に多いそうだが、「朝の寝起きが悪いと思ったら、実は寝ている間に熱中症になっていた」ということもあるそうだ。異次元の暑さになりそうな今年の夏は、子どもでも起こりえるので、注意が必要だ。「そして、めまいや脈が速いといった状態は、血液が体に巡っていない証拠です。より重症度が高くなると、汗が出ない、水分を受け付けないといった症状も。そうなる前に子どもが発したサインを見落とさないようにしてください」
これらの子どもの熱中症のサインを見つけたら、親はどのような行動をとるべきなのだろうか?
「屋外にいた場合は、まず日陰など涼しい場所へ移動してください。めまいで転倒する危険があるので、意識がしっかりしていても横になることを推奨しています。そして、着ている衣服の枚数をなるべく減らしてボタンなどは開けて緩める。その上で、大きな動脈が通っている首筋、脇の下、鼠径部を保冷材などで冷やして、水分を摂らせながら様子を見てください」
また、水分補給にもポイントがあるとのこと。「熱中症の場合、汗で失った塩分の補給も必須です。塩分を補給できて、体への吸収率も高いナトリウム入りのスポーツドリンクや経口補水液を飲ませてください。塩分を含む飴やタブレットを食べさせることも有効です」
ちなみに、ナトリウムはミネラルの一種。ならば、「ミネラル入り」を謳う市販の麦茶も効果的なのだろうか?「正直、熱中症対策としては麦茶の摂取だけでは足りないです。というのも、熱中症対策には100mlあたり40~80mg のナトリウム入り飲料が効果的。これは食塩相当量0.1~0.2gにあたります。一方で市販の麦茶には、食塩が100mlあたり0.01g程度しか含まれていません。全く足りていないのです」
熱中症は怖いが、子どもたちの夏休みも近い。そもそも熱中症にさせないために、日ごろからどのような過ごし方をさせればいいのか。
「環境省が発表している『熱中症警戒アラート』が出ている時は外出を控えてください。熱中症警戒アラートは、気温、湿度、輻射熱から計算される『暑さ指数』というものが33℃以上になると発令されます。環境省の公式LINEを友だち登録すると、スマホに熱中症警戒アラートの通知が来るので、親御さんはぜひ登録をオススメしています」

ただ、暑い夏でもなるべくなら屋外で楽しく過ごしてほしいのが親心。少しは暑さに体を慣れさせた方がいいのでは? とも思ってしまう。「たしかに、暑さに体を慣らして汗をかきやすくする『暑熱順化』も、熱中症対策として有効です。午前中早めや夕方などの涼しい時間帯に、日陰で15~20分程度の運動をすれば十分です。もちろん、熱中症警戒アラートが出ているときは辞めてくださいね」
外出する際にはこんな注意点も。「暑くてもコットン素材のインナーを着させてください。汗を吸収し、体温の上昇を防ぐためです。もちろん、こまめな水分補給は必須です」
もちろん、熱中症リスクが高いのは圧倒的に屋外だが、屋内でも気を抜けないという。「室温は25~28度を保つようにして、風通しのいい空間で過ごしてください。また、就寝中の思わぬ熱中症を防ぐため、寝る前にはコップ1杯のスポーツドリンクを飲ませるといいでしょう」
熱中症は命にかかわるケースもある。大人は子どもが発するサインを見逃さず、暑さと共存しながら安全な夏を過ごそう。
取材・文/菱山恵巳子 写真/Shutterstock

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