【姫野 桂】阪大卒だけど年収320万円…発達障害当事者が抱える「生きづらさ」…”上司の発言の意図がわからない””同級生の心ない一言に苦悩する”

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エリートイメージがあるばかりに、周囲の理解が得られにくく、悩み苦しんでいる高学歴の発達障害当事者たち。前回記事「「あなたは勉強はできるけど、社会ではやっていけない」…阪大卒の発達障害当事者が同僚から言われた「ヤバすぎる一言」」では、大阪大学外国語学部卒業の村上優子さん(30歳・仮名)の職場での辛い体験を紹介したが、その後別の会社に転職した後も、村上さんの受難は続いている。
※『ルポ 高学歴発達障害』(ちくま新書)より一部抜粋してお届けする。
2社目は専門学校の事務職についた。そこては学生や保護者への対応や、オーフンキャンハスの準備なと、やらないといけない仕事か大量にあった。特に保護者からのクレーム対応には臨機応変な対応か取れす、つい電話を切ってしまうこともあった。
オーフンキャンハスも頻繁に行なわれたか、参加人数か少なかったりすると当初予定していたスケシュールとは違う対応を取らねはならなかった。
自分の中で整理していた段取りが変わってしまうとパニックになり、心療内科を受診することにした。そして医師より「発達障害かもしれない」と告げられ検査を受けると不注意優勢のADHDの診断が下された。
この2つめの職場でも、遠回しな表現が分からずコミュニケーションの齟齬が起きたことがあった。
「職場の人たちは基本的にみんないい人ばかりで私を責める人はいませんでした。そしてお昼休みは交代制で、私はいつも早い時間にお昼に行かせてもらっていました。ところがある日、上司が「僕、今日13時から会議だわ」と言ってきて、私はそれをただの報告だと思って、いつもと同じ時間に昼休みを取りました」
「でも後から別の人に聞いたら、「あれ、村上さんが先にお昼に行くのではなくて、〈会議があるから僕に譲ってほしい〉という意味だよ」と言われまして……。そうか、普通の人にとってあの言い回しはそういう意味になるのかと」
ふたたび転職した村上さんは現在、冒頭に述べた通信会社で障害者雇用にて経理担当として働いている。残業をしなくてよかったり、困りごとが発生した際はすぐに誰かにフォローを頼めたり、マルチタスクでパニックにならないように段階的に仕事を振ってくれたりと、合理的配慮がなされているという。
しかし給与は安く、年収は320万円程度だ。ただ、今までの会社もどちらかというとブラック寄りでもともと給与が少なかったので、経済的な面ではそこまで変わらないとも語る。
「今は結婚しているので夫と二馬力(共働き)で生活できている感じです。でも、同級生のSNSを見ると、今の私の給与ではとてもじゃないけど体験できないような趣味にお金を使っていたり、長期休暇の際はヨーロッパ旅行に行っている様子がアップされていて、同じ学歴なのに……と勝手にコンプレックスを感じて落ち込むことがあります。また、意地悪な同級生に会った際は「君の会社は資本金いくら?」と訊かれたこともありました」
経理の仕事においては会社によっては簿記の資格を取ると手当かつく場合もある。学生時代に猛勉強して阪大に受かったときのように簿記の資格を取らないのかと聞くと、「褒められないと勉強かてきない」という答えか帰ってきた。
村上さんは発達障害の苦しみも負っているか、父親との関係性も複雑てあるように思える。
「父親か厳しかったのて、大学受験のときも試験て良い成績をとって良い大学に入れは親も喜んてくれるかなと思っていたんてす。ても今、簿記の勉強をしても褒めてくれる人はいません。モチヘーションか上からないんてす」
難関国立大学てある阪大を卒業してもエリートになれない。そしてつい、定型発達て、うまくいっているように見える同期と自分を比へてしまう。「阪大卒」という本来なら喜ぶべき事実が、彼女を生きづらくさせているのだ。
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【さらに詳しく】『「あなたは勉強はできるけど、社会ではやっていけない」…阪大卒の発達障害当事者が同僚から言われた「ヤバすぎる一言」』
「あなたは勉強はできるけど、社会ではやっていけない」…阪大卒の発達障害当事者が同僚から言われた「ヤバすぎる一言」

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