これまでに1万人のご遺体を見送った下駄華緒さんが火葬場職員時代の体験を明かし、注目を集めているYouTubeチャンネル「火葬場奇談」。その壮絶な体験は「最期の火を灯す者 火葬場で働く僕の日常」(原案:下駄華緒/漫画:蓮古田二郎)として漫画化も果たしている。
記事前編では、「子供の火葬が一番つらい」と述懐する下駄さんが体験した不思議なエピソードを紹介した。幼い子供の火葬を泣きながら終えた下駄さん、彼を待ち受けていた事態とは、いったい何だったのだろうか――。
その日、下駄さんの働く火葬場に運ばれてきたのは、大人の物の3分の1くらいしかない小さな棺だった。お骨上げの担当は下駄さん。これも一流の火葬技師になるための一歩なんだと言い聞かせるも、実際に火葬を目の当たりにするとかわいそうに思う気持ちが溢れ出してしまった。
涙は出てしまったが、何とかミスもなくその日の仕事は終わったという。だが、その日下駄さんが見廻り当番で遅くまでのこって火葬場内を点検していた時、それは起きた。
炉裏の両端には大きな重い鉄扉があった。その一方のカギを閉め、もう片方の扉に向かって歩いていた時、「ガチャーン」と、後ろから今閉めたはずの鉄扉が開く音がしたという。
下駄さんはあわてて戻って確かめてみたが、鉄扉のカギはちゃんと閉まっていた。その時、下駄さんはなぜだか当然のように(ああ…あの子だな)と思ったのだそうだ。
しかし、どうすることもできない。下駄さんは「ごめんよ…お兄ちゃんはもう帰るよ」とつぶやき帰路に就いた。
その夜、下駄さんが眠りにつくと、不思議なことが起こった。「僕には霊感などないのですが、その時はっきりとその存在を感じたのです」と下駄さんは振り返る。
下駄さんは突如金縛りに襲われ、目を開けると小さな男の子が目の前に立っていた。しかし恐怖は感じなかったという。その子供は「おにいちゃん、あそぼう」と話しかけてくる。身体は動かないがしゃべることはできた下駄さんは、「しりとりでもする? じゃあ…しりとりの『り』」と返した。
「りんご」
「ゴール」
「ルビィ」
「いす」
「スイカ」
「かがみ」
「ミニトマト」
しりとりを続けているうちに、下駄さんは「あること」に気が付く。
「ともだち」
「血だらけ」
さっきから子供の返す言葉は、全部赤いものばかりなのだ。
「毛ガニ」
「肉」
次は「く」だが、下駄さんは急に声が出せなくなってしまう。焦るうちに、目の前の子供がどんどん近づいてきて――。
間一髪のところで下駄さんは汗だくで飛び起きる。夢だったのかと思った下駄さんだったが、気になって次の日出勤し、男の子のことを調べてみた(普段とは違ったご遺族への配慮が必要であると判断される場合、葬儀屋や喪主本人から死因を知らされる事もある)。男の子の死因は交通事故だった。下駄さんが最後に言おうとした「く」のつく言葉は「くるま」だったのだ…。子供の無念を思って下駄さんは「ごめんよう」と泣き崩れてしまったという。
…いかがだろうか。人生の最後に携わる人々の物語――今一度「生きること」や「命の尊さ」について考えてみるきっかけになるかもしれない。
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下駄華緒/元火葬場職員。2018年、バンド「ぼくたちのいるところ。」のベーシストとしてユニバーサルミュージックよりデビュー。怪談最恐戦2019怪談最恐位。火葬場職員時代の経験を生かしたYouTubeチャンネル「火葬場奇談」が話題。Twitterアカウント⇒@geta_hanao
蓮古田二郎/千葉県在住。二児の父。背景は妻が担当。主な著書に「しあわせ団地」(講談社)がある
「水死」したご遺体から“あるはずのない骨”が…火葬場職員が心底震えた瞬間