ラブホテルの一室でネパール国籍の男性が刺殺された事件をめぐって、千葉県警は28日、交際相手の浅香真美容疑者(32)を殺人の疑いで逮捕した。浅香容疑者は現在、調べに対して黙秘をしているという。バダルさんの遺族は「本当のこと、真実を知りたい」と肩を落とす。
【画像】勤勉だったバダルさんの参考書やノート、事件現場となったラブホテル
事件当時、千葉県船橋市のラブホテルの一室に殺されたネパール国籍のバダルさんと一緒にいたのは、アルバイト・浅香容疑者だった。
浅香容疑者は5日午前8時5分ごろ、「男性の意識や呼吸がない。自ら胸に包丁を刺して、出血がある」と自ら119番通報。駆けつけた救急隊員によって、客室のドア付近でうつぶせの状態で倒れているバダルさんの死が、その場で確認された。
その後、駆けつけた警察官は浅香容疑者に対して、室内で見つかった2本の包丁について、「これなに?」と尋ねたという。浅香容疑者は、「彼氏と一緒に死のうと思い、どうせ死ぬなら盗んでしまってもいいと思った」と供述し、その日に窃盗の容疑で逮捕されている。
そして28日に、浅香容疑者は殺人の疑いで船橋警察署内にて再逮捕された。そこから浅香容疑者の黙秘が始まった。
「殺人容疑の逮捕状を見せると、浅香容疑者は一言だけ『間違いです』と語り、そこから黙秘を続けています。窃盗の容疑での調べでは話していましたが、殺人容疑で逮捕となった瞬間に何も話さなくなったのです」(県警関係者)
浅香容疑者は29日に地検へ送検され、検察による調べを受けたが、捜査関係者によると黙秘の姿勢を崩さなかった。そして地検から戻り、警察による調べが再開された30日も、何も話すことはなかったという。
「彼女は事件当日に119番通報したとき、『自ら包丁を刺した』と話していますが、現場や遺体の状況、遺族からの調べを進めているうちに自死した可能性は低いと考え、殺人での逮捕状を請求したのです」(県警関係者)
黙秘を貫いている浅香容疑者は、千葉市稲毛区で生まれ育ったという。浅香容疑者の自宅付近に住む近隣住民の男性はこう証言する。
「昔からここの実家に住んでいます。おとなしい子であいさつなどもなかった。何をしているのか何の仕事をしているのかも知りません。働いているとは聞いていた。彼氏がいるとか、そういう話は一切聞いてない。
家族構成は、父母、そして浅香容疑者と20代になる弟の計4人です。父も母もおとなしいといいますか、あまり近隣住民と交流を持つ家庭ではありませんでした。
母方は何年か前かまで、ここの自治会の仕事を担当されており、役員だったと聞いています。仕事ぶりはまじめでいい評判でした。父と母は共に働いているはずです。父と息子ともに車が好きなかたですね」
浅香容疑者は逮捕される直前まで、千葉県習志野市にある運送業の倉庫でアルバイト勤務をしていた。働く時間は主に夜だったという。
浅香容疑者と同じ職場の女性が明かす。
「浅香さんの業務は、ベルトコンベアで流れてくる製品の仕分け作業です。たしかお弁当を取り扱っており、お弁当を運送箱に詰め込んだりする仕事を担当していました。時給は1100円以上です。
ここでは出稼ぎに来ている東南アジア人の若年層が多いです。日本人男性がここでの仕事を通じて同僚の東南アジアの人に恋をし、結婚したという事例もあります。浅香さんはとくに目立つ印象もなく、淡々と黙々と作業をしていた印象です。話したことはなく、彼女がトラブルを起こすこともありませんでした」
同じ職場の女性によると、浅香容疑者とバダルさんは一時期、同じ時間帯に勤務する同僚として働いていたという。ただ、当時は親密な雰囲気を一切感じなかったどころか、しゃべっている様子も見かけなかったという。
殺されたバダルさんの兄はこう証言する。
「浅香さんと交際をスタートさせたのは今年4月のことで、弟(バダル)はすでに倉庫の仕事を退職していました。
交際は順調だったようで、付き合った当初は『年上の彼女ができた』と報告を受けました。『10歳くらい上の人らしいけど、若く見える』って言っていました。身長も低くて、小柄だって。
8月にも一緒に花火大会へ行ったようで、その様子をTikTokにあげていました。また、弟の誕生日には浅香さんからナイキのスニーカーをプレゼントしてもらうなど、幸せそうでした。
ただ、10月2日夜に弟から別れ話をしたら泣かれたと聞いています。そして、4日夜に『今日だけ最後に1回会って、話したい』と弟は私にそう言って、浅香さんへ会いに行きました。それが弟の最後の姿です」
バダルさんの兄によれば、浅香容疑者とバダルさんは週に一度、主に土曜日の夜から日曜日の夕方にかけて、2人で会っていたという。
バダルさんが働いていたアルバイト先の関係者が明かす。
「バダルがまだ元気に働いていたときに、女性関係の話は一切聞いたことがない。彼女が別れてくれないなどの愚痴も言っていなかった。女がバダルに会いに店の営業時間中に訪れたりとか、店前で仕事が終わるバダルを待っていたりとか、そういうつきまとい行為も一切なかった」
バダルさんの兄は「弟はもう帰ってこないが、どうして事件に巻き込まれたのか、私は本当のことを知りたいです」と語った。
一貫して黙秘を貫き続ける浅香容疑者に、バダルさんの遺族の思いは届くのだろうか。
※「集英社オンライン」では、今回の事件に関連した情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(旧Twitter)まで情報をお寄せください。メールアドレス:[email protected](旧Twitter)@shuon_news
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班