生活保護とは日本国憲法で定められている「健康で文化的な最低限度の生活」という考えに基づいた制度です。これは、単に生きるための最低限度を意味するのではなく、人としての尊厳を保ちながら暮らせる水準を保障するものです。また、生活保護の目的は「経済的な自立」だけに限られません。厚生労働省は「三つの自立」(日常生活・社会生活・経済的)を掲げており、生活を幅広く支援する制度となっています。
生活保護受給者は、原則的に車の所有が認められていません。本章では、主な理由とされる2項目について解説します。
車の価値はそれぞれであり、種類や状態などによって異なります。しかし、売却するとある程度のお金になります。つまり、自家用車は資産のひとつと判断されるのです。生活保護を受けている場合、資産を売却して生活費に充てる必要があります。そのため、資産と判断される車を持っている場合は生活保護の受給が認められず、生活保護の受給中に自家用車は所有できません。
車を購入する際によく使われるローンは、簡単にいえば借金です。生活保護費は、借金の返済に充てることができません。つまり、ローンが残っている場合はその返済ができないのです。状況次第で特別に車の所有が認められることはありますが、ローンを完済していることが前提となります。車は資産として判断されることから所有ができませんが、ローンを返済できないことも所有が認められない理由のひとつになります。
生活保護を受ける場合、原則として自動車の所有は制限されますが、「生活を営むうえで欠かせない」と認められれば、例外的に持つことが可能です。その判断は大きく 「生活用品として必要か」、あるいは 「事業用品として必要か」 の二つの観点で行われます。
日常生活に欠かせないと判断されれば、車は「生活用品」として所有が認められることがあります。公共交通が不便な地域での通院や買い物、子どもの送り迎えに加え、公共交通では通勤が難しい職場への移動などです。また、障害や持病によって公共交通の利用が難しい場合も、例外的に所有が許されるケースがあります。
仕事に必要不可欠と判断される場合には、車を「事業用品」として所有できることがあります。典型的な例としては、配送業で使う軽貨物車、農業での軽トラック、移動販売車などが挙げられます。これらは生活のための資産ではなく、収入を得るための“仕事の道具”と位置づけられます。また、事業用として認められた場合は、ガソリン代や車検費用などの維持費は、事業申告に基づき経費として認められる場合があります。ただし、所有が認められるかどうかは、事業の実態や必要性をケースワーカーが確認したうえで自治体ごとに判断されます。
生活保護の受給者は、原則的に車の所有を認められていません。その理由のひとつは、車は資産であると判断されるからです。生活保護受給者は資産を有している場合、その資産を売却して生活費に充てなければいけません。ただし、公共の交通機関が発達していない地域に居住している場合や、仕事の都合で車を必要とする場合は特別に車の所有が認められることがあります。そのため、「車を持っているから生活保護を受けられない」とは言い切れません。所有に関しては自己判断せず、必ず自治体に確認や相談をして、正しく制度を活用しましょう。※2025/9/3 記事を一部修正しました。
厚生労働省 生活保護制度執筆者:FINANCIAL FIELD編集部ファイナンシャルプランナー監修:高橋庸夫ファイナンシャル・プランナー