参院選の大敗を受け、自民党では石破茂首相に退陣を迫る動きが依然として続く。党の重鎮である麻生太郎最高顧問は、派閥の会合で「衆院選で勝利できる体制を整えなければ」と強調したと報じられた。
だが、未だに大御所が政局を牛耳る党の体質にSNSでは「この人は何様なの?」「もう本当に老害」などと冷たい視線が注がれている。
参院選で自民党は39議席にとどまり、公明党と合わせて過半数の議席を維持できない大敗となった。党内では、これまで裏金問題や旧統一教会との癒着などが明らかになり、石破政権で冷遇されてきた旧安倍派などの面々が、ここぞとばかりに首相に退陣を求める動きが活発化している。
7月28日に自民党本部で開かれた両院議員懇談会では、石破首相では次の選挙を戦えないとみて、退陣を求める議員の発言が相次いだ。さらに麻生氏は8月1日に開かれた派閥の会合で「次の衆院選で勝利できる体制を整えることこそ、今から我々が行っていかねばならない」と語ったと、複数のメディアが報じた。
ただ、SNSでは麻生氏に対して「この人まだいたんだ」「引退したら?あなたでも勝てない」「自民党はもはやオワコンです。何故、危うさのある新興政党が、一定の国民の支持を得たのか考えて下さい」などの声も。
麻生氏は従来、ネット上では人気が高い政治家だった。だが今回は、9月に85歳になる重鎮がいまだに影響力を持っている自民党に対し、冷めた反応が相次ぐ。参院選の自民大敗の原因として、これまで麻生氏を含む党右派、つまり旧安倍派を支持してきた有権者が離れて参政党に流れた点を指摘する専門家もいる。石破首相は嫌いだが、そもそも自民党自体を見限ったということか。
事実、自民党の若手に対しても世間の風当たりは厳しい。
石破おろしの急先鋒として活動する自民党青年局は7月25日、首相に事実上の退陣を求める文書をまとめ、森山裕幹事長に提出した。
だが、これによって2023年11月、露出度の高い女性ダンサーを招いた過激な懇親会を開いた青年局の不祥事への批判が再燃。現・青年局長の中曽根康隆衆院議員に対して「過激ダンスショーの責任をとって青年局長代理を辞任したんじゃなかったの?いつの間に青年局長になったの?」「他人に辞めろとか言うならまず青年局もそれなりの罰を受けてから言わなきゃ説得力がないな」などと非難のコメントが溢れる結果となった。
麻生氏は参院選直後の7月23日、菅義偉氏、岸田文雄氏ら首相経験者3人とともに党本部で石破首相と会談していた。同日には石破首相が退陣する意向を固めたとする全国紙の号外が配られ、会談直後に首相本人が「私の出処進退について一切話は出ていない」と否定するという騒動が起きた。
週刊文春電子版は、その会談の中で、麻生氏が石破首相に対して「俺に責任取って辞めろと言った奴がそういえばいたよな。あの時に似てねぇか」と言ったと報じた。ただ、この発言もSNSでは「総選挙で歴史的惨敗を喫して自民党を下野に至らしめた麻生太郎に比べればまだマシだと思うけどな」「麻生さんの時は、誰も『麻生辞めるな』とは言ってくれなかったけどな」と、かえって反発を招く結果となっている。
主要メディアの世論調査では、石破内閣の支持率は20~30%台に低迷。だが、2009年に自民党の下野を招いた麻生内閣の支持率はさらに低く、10%を切って一桁台に落ち込んだこともあった。
俳優でコラムニストの松尾貴史さんは自身のXで「一見似ているように思ってしまうけれど、あの時自民が負けたのは明らかに麻生氏自身の問題が大きかった」と言及。「今回の敗北は石破氏の問題よりも、裏金やら統一教会やら破廉恥な行為やら利権優先やら各方面への失政という、自民党全体の体たらくがもたらしたもの。お門違い」と記し、参院選の敗因を指摘した。