コンビニエンスストアの駐車場で「車中泊」ができるようになるという。ホテルや旅館は宿泊料金が高騰し、最盛期は予約が難しい。車で自由な旅をする人には朗報だろう。
コンビニ大手のローソンは、店舗の駐車場で車中泊できるようにする。まず千葉県内の6店舗で7月から実証実験を開始。発表資料によると、いつでも飲食物を購入できる利便性、店内に従業員がいる安心感が売りで、ローソン側からしても駐車場の有効活用になるとしている。
〈全国の店舗網を活用することで車中泊場所の選択肢を増やし、快適な“くるま旅”のお手伝いにも繋げていきたい〉(ローソン発表資料)
キャンピングカーや車中泊スポットのシェアリング・サービスを手掛けるCarstay(神奈川県横浜市)広報担当の中川生馬さんは「日本は車中泊しやすい環境が整っている」と言う。あちこちに温泉や銭湯があり、公衆トイレが清潔で、治安もいいというのがその理由だ。
中川さんは10年以上の車中泊の経験があるが、これまでにトラブルに遭ったことはないそうだ。車中泊でのトラブルを避けるには、節度を保ち、マナーを守ることが秘けつだという。
そもそも、どんなところで車中泊できるのだろうか。道の駅や、高速道路のサービスエリアなどが思いつくかもしれないが、中川さんは「運転に疲れた方などの一時的な休憩の施設で、車中泊するところではない」と否定する。中川さんによると、これら一時的な休憩施設の駐車場での長期滞在者のゴミ出し、テーブルを出しての調理、洗面所での洗髪や残飯を流すなどの行為が問題になっているという。
車中泊を目的とした施設として挙げられるのは、オートキャンプ場、RVパーク、さらにCarstayのような事業者が提供する車中泊スポットがある。
RVパークとは日本RV協会が認定した車中泊スペースで、余裕ある駐車スペース、24時間利用可能なトイレ、電源が使用可能、近隣に入浴施設、ゴミ処理が可能、複数日の滞在が可能、などの条件を満たしている。協会サイトには全国にある認定施設500以上と、それぞれの利用料金が掲載されている。
オートキャンプ場では、車中泊のほか、テントを張ることもできる。トイレやシャワー、調理施設、電源などが備わっていることが多い。日本オートキャンプ協会のサイトで全国の施設が紹介されており、「ペットOK」などの条件で検索もできる。
民間事業者が提供する車中泊スポットも活用したい。たとえばCarstayは全国に約350のスポットを提供している。空き地や、駐車場などを貸し出したい人と、車中泊で借りたい人を結びつけるビジネスを展開しているのだ。利用料は1泊500円(1台)からで、平均で2000~3000円程度。
中川さんは「娯楽のために車中泊する場合は、娯楽専用のスポットを使ってほしい」と付け加えた。たとえば、物流業者がよく使う車中泊スポットだと、トラック運転手がアイドリングしながら休憩していることもあり、排気ガス臭や騒音などに悩まされることになる。
車中泊する際は、トイレなど、自分が必要とする設備が整っているかも確認しておきたい。ゴミ出しをどうすればいいかも要チェックだ。犬などのペット連れで旅行する際はドッグランなどの施設があるといい。長時間の車旅でペットもストレスがたまっているからだ。
一般車で寝泊まりする場合は、車内がフルフラットになるかどうかも大事だ。就寝時に足を伸ばしにくいと、エコノミー症候群になる危険性がある。キャンピングカーなど専用車のレンタルも選択肢に入れたい。
さらに、車中泊ではトイレなどに行く際の車のドアの開け閉めなど、周りの利用者に対する配慮も必要だ。夏場に窓を閉め切ってエアコンを使うと、エンジンをかけっぱなしにせねばならず、周囲には騒音となる。
治安に問題がなければ、窓を開けて寝ることもできるが、網戸がないと虫が入ってくる。夏は暑さ対策が重要で熱中症が怖い。キャンピングカーなら家庭用エアコンが装備されていることが多い。ポータブルエアコンが市販されているので、ポータブル電源との併用も考えてみたい。
調理の際は火の取り扱いに注意しよう。オートキャンプ場などでは、突然の豪雨などの自然災害にも注意を怠らないようにしたい。車中泊の旅の初心者に対しては、中川さんは車中泊の専用スポットの利用を勧める。
「スポットには車中泊の経験者もいて、いろいろなアドバイスを受けることができます。観光スポットを教えてもらったり。交流はチャンスです」
車中泊の専用スポットのオーナーや管理者は地元の事情に詳しく、隠れた穴場やお勧めスポットなどを教えてくれることもある。最盛期になると、車中泊の専用スポットも空きがなくなることが予想される。事前に空き状況や周辺事情などを調べて準備を整え、車中泊の旅を楽しみたい。
※記事内の価格などは’25年7月時点での情報です。それぞれの施設の詳細、価格、宿泊規約などはCarstayや各施設のHPでご確認ください。
取材・文:浅井秀樹