屋外のトイレなどで、羽がある“ハート型の虫”を見たことはないだろうか。害虫駆除に詳しい、村田光さん(公益社団法人日本ペストコントロール協会)によると、この虫は「チョウバエ」。自宅にも発生して、短期間で増えることもあるそうだ。ゾッとする状況にならないための、注意点や予防対策を教えてもらった。
チョウバエは「ハエ」という言葉が付いているが、生態は蚊に近いと村田さん。体長は4~5mmで、4~11月ごろによく見かける。
フワフワの毛で覆われるなど愛らしいところもあるが、放置するのはお勧めできないそう。「排水から発生する不潔な虫ですから、大量発生すると食品に混入したり、有害な細菌やウイルスなどの微生物が付着したりするなど、衛生面での悪影響が考えられます」
さらに怖いのは、繁殖力の強さ。チョウバエのライフサイクルは3週間ほどで、生涯で100個以上の卵を産むとされる。環境がそろえばあっという間に増えてしまうのだ。そんなチョウバエはどこからやってくるのか。
村田さんによれば「ヌメリや汚れ」がある場所が発生源になりやすいそう。
自宅で注意したいのは「トイレ・台所・浴室」。排水トラップ、排水管の内部、三角コーナーなどは、湿度や汚れがあって生息しやすいのだとか。
いつの間にか見かけるのは、こうした場所から卵がかえっているためだ。「チョウバエは風が当たらない、湿度の高い場所を好みます。屋外で発生した個体が迷い込んだとしても、水場に近い場所にいたりします」
見落としがちなのが、洗面台の上部にある「オーバーフロー」という穴。汚れや有機物が残りやすいので、発生源や“たまり場”になることもあるそう。自宅で発生するのは避けたいところだが、対策として何ができるのだろう。
村田さんが勧めるのは、トイレ、台所、浴室の排水口周りをきれいに保つこと。チョウバエは汚れを好むので、調理後の油汚れ、石鹸やシャンプーのカスなどが残っていると要注意だ。
「トイレは便器内の水がたまっている部分に、汚れを残さないようにしてください。台所は排水口や三角コーナーを清潔に保ちましょう。浴室の排水口も発生源となりやすいので、洗剤などでこまめに掃除することがポイントです」このほか排水管の汚れは確認できないので、春から秋にかけて、1~2回はパイプクリーニング剤を使ってほしいという。
そして“最初のチョウバエ”を放置しないこともポイントだ。玄関、窓、換気口などから侵入してくることがあるので、見つけたら退治するか、逃がすかをしたい。水回りをきれいにしても、戸締まりに気を付けても、チョウバエが住み着くことはある。自宅での繁殖が疑われたらできることはあるのか?
最初にしておきたいのは、発生源の目安をつけること。繁殖力が強いので元を絶たなければ増えてしまう。トイレ、台所、浴室、洗面台などに卵や幼虫がいないか、チェックしよう。
それができたら、発生状況に応じて次の対処がお勧めという。
発生が少なめ(見る頻度が時々):発生源にハエ用のエアゾール殺虫剤を噴射する。排水口などで見られた時にもお勧め。発生が多め(見る頻度がほぼ毎日):発生源と近くの空間ごと処理する。トイレや浴室など、狭めな部屋ではワンプッシュスプレータイプの殺虫剤がお勧め。台所など、広めな部屋では、加熱式のくん煙剤がお勧め。※スプレーは炎や火器の近くでは使用しない、使用中や使用後は十分に換気する
「もし、洗面台のオーバーフローが発生源だった場合は、ノズル付きの殺虫剤を穴の内側に向けるようにして噴射すると良いでしょう。また、殺虫剤とはいえ一定の毒性はあるので、必ずラベル記載の用法・用量を守って下さい」
このほかポイントとして、台所の排水口にふたがあるならできるだけふたをする。浴室の排水口は袋で作った水風船を乗せておくと、外部からの侵入を抑制しやすいそうだ。確認しにくい排水管が怪しい場合は、掃除を兼ねてパイプクリーニング剤を使ってみよう。上記の対処をしても発生するなら、家庭用の排水を浄化する「浄化槽」で繁殖している可能性もあるそう。その場合、吊るすタイプの蒸散性殺虫剤を浄化槽につけるといいそうだ。村田さんは「わずかな発生の場合、神経質になりすぎるのも精神衛生上、良くありません」と話す。自宅で見かけたら無理のない範囲で、対処するといいかもしれない。
村田光(むらた・ひかる)害虫駆除の専門業者らで構成される公益社団法人「日本ペストコントロール協会」で技術委員を務める。コバエ、ダニなどさまざまな害虫についての知識を持ち、駆除のポイントなどについての情報発信も行っている。
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