〈「最後まで菅原文太らしく生きたい」膀胱がんが発覚した菅原文太が“死ぬまでやり続けたかったこと”〉から続く
77歳のいまも医師として多くの患者に接する鎌田實医師が上梓した『うまいように死ぬ』。ある介護施設では「ストリップ劇場へ行きたい」というおじいちゃんがいて……。ここでは新著より一部抜粋し、そのゆくえを辿る。(全2回の後編/最初から読む)
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僕は『おはよう21』という介護の雑誌の連載を約10年ほどやっているので、ユニークで魅力的な介護施設をたくさん知っています。この施設の話を聞いたとき、別の老人施設を思い出しました。
その老人施設では、1年に1回、できるだけ行きたいところに行ってみるというイベントをしていました。お年寄りに行きたいところを訪ねるのです。「たこ焼きを食べに行きたい」とか「海を見に行きたいとか」……。
すると「ストリップ劇場に行きたい」という、とんでもない希望が出ました。まずスタッフで何回も議論をしました。家族の了解が取れれば、連れて行ってあげてもいいのではないかという意見になりました。おじいちゃんは喜びました。

そこでベテランの男性介護士が2人、車いすでおじいちゃんを連れてストリップ劇場に行った。おじいちゃん、とても元気になったそうです。

本人の気持ちを尊重して、家族やスタッフと何度も議論をすることが大事。そんななかで、答えは見つかってくるもの。せっかくの希望を握り潰さないことが大事なのです。
「寝たきりになっても施設にある畑で農業をしたい」「もう一度家族に料理をつくってあげたい」……。入居者の思いを受け止めて、どうすれば実現できるか模索する姿勢は、実に素晴らしい。拍手!うまいように死ぬためには、ノリのいい生き方が大事なのです。
(鎌田 實/Webオリジナル(外部転載))