認知症は、記憶障害や見当識障害のイメージが大きい病気ですが、顔つきの変化も症状の1つになります。認知症に伴う心理症状が、患者さんの表情にも現れるためです。
認知症で顔つきにどのような変化があるかを知っていれば、身近な方の表情の変化から、認知症の予兆に気付くことができるかもしれません。
本記事では、認知症の際に現れる顔つきの変化について、特徴や対処の方法も含めて解説していきます。認知症を早期発見できるよう、どのような表情の変化が見られるのか把握しておきましょう。
【認知症の発症リスクに備える】認知機能低下リスクをチェック!
・顔が垂れる・表情の変化が乏しくなる(無表情)・元気のない顔つき・暗い表情になる・目つきが悪くなる・表情が怖くなる(怒り顔)
顔つきの変化には、認知症による行動・心理症状(BPSD, Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)が大きく関わっています。どのような心理症状が出ているかによって変化の種類も変わるため、表情から読み取れる心理症状に合わせた対応が必要です。
・抑うつ状態・怒りっぽくなる(易怒性)・興味の喪失・記憶能力・判断力の低下・筋肉の強張り
これらの症状のうち、上3つは認知症のBPSDに関連しています。認知症によって平常時と異なる心理状態が続き、表情の変化に乏しくなる・元気がないように見える・目つきが悪く怖い表情が続くなどの顔つきの変化が起こるのです。記憶能力や判断力の低下という認知症の中核症状も、患者さんの不安につながり、暗い表情の原因になります。筋肉の強張りは、レビー小体型認知症やパーキンソン病との合併により現れる症状です。顔つきの変化と同時に手足の震えや歩行障害などが現れている場合は、パーキンソン症状を疑いましょう。
・表情がなくなる・暗い表情になる・顔つきが怖くなる
表情の変化が乏しくなる・無表情でいることが増えた場合は、抑うつ症状によって物事への興味を失っている、あるいはパーキンソン症状の可能性があります。元気のない顔つきは、抑うつ状態や記憶能力・判断力の低下に基づく不安によるものです。目つきが悪くなり怖い表情が続いている場合は、認知症のBPSDによって怒りっぽくなっているのではないかと考えられます。
・全般性注意障害(作業中のミスの増加、反応が遅くなるなど)・失書・失算
上記の3つは、認知症全般に見られる初期症状です。認知症の種類によっても、初期症状は変化します。
・アルツハイマー型認知症:健忘・失語・構成障害(模写や模倣ができなくなる)・地誌的失見当識・レビー小体型認知症:健忘・構成障害・錯視や幻視・前頭側頭葉変性症:遂行機能障害・失語・脱抑制(状況を認識した適切な行動ができなくなる)・嗜銀顆粒性認知症:健忘・大脳皮質基底核変性症:失行
これらの症状が見られた場合、認知症の初期段階になっている可能性があります。早めにかかりつけの医師やもの忘れ外来・認知症外来などに相談しましょう。
今回は、認知症による顔つきの変化について解説してきました。認知症は、年を重ねるにつれて誰もがかかりうる可能性のある病気です。
ただし、早期に認知症を発見し適切な医療サービスを受けることで、症状の改善や進行速度の低下を見込めるかもしれません。
顔つきの変化から認知症の兆候をつかめるよう、あらかじめ知識をつけておくことが重要です。
認知症の BPSD
知っておきたい認知症の基本|政府広報オンライン
認知症|KOMPAS慶応義塾大学病院 医療・健康情報センター
第2章 症候,評価尺度,検査,診断
認知症|国立精神・神経医療研究センター
認知症センター|国立精神・神経医療研究センター
東京都認知症疾患医療センター|東京都福祉局
第4章 経過と治療 認知症の危険因子・防御因子にはどのようなものがあるか
パーキンソン病患者の笑顔の回復笑顔つくりトレーニングの介入により仮面様顔貌の改善を図る
第3章 治療 認知症診断後の介入、サポートはどうあるべきか