「火葬のあとは、葬儀もお別れ会もなく……。愛里とは寂しいお別れになってしまいました」──そう取材に応えたのは、ことし3月11日に東京都・高田馬場の路上で刺され亡くなったライブ配信者“最上あい”こと佐藤愛里さん(22)の友人だ。
【写真】「着物姿で記念撮影をする”最上あい”さんのリラックスした素顔」(友人提供)
事件の当日、佐藤さんはJR高田馬場駅の近くを歩きながら、動画配信サービス「ふわっち」で“3.11 山手線徒歩1周”という企画のライブ配信を行っていた。そこへ突然、刃物を持った男が彼女を襲った。犯行前後も動画配信は続いており、画面上には血まみれの佐藤さんの姿や、彼女のスマホ画面を覗き込む男の様子が流れ続けていたという。配信を見ていた佐藤さんの友人がその一幕を語る。
「愛里が『きゃー!助けて!!』と叫んで、画面がしばらく見えなくなりました。次に画面が明るくなったと思ったら、男が愛里の体をバンバン蹴っているところも見えて、その瞬間に『ああ、もう愛里は助からないんだ』ってことを悟ってしまって……」
その場で取り押さえられた男は、高野健一容疑者(42)。駆けつけた警察官に対し「貸したカネを返してもらえず刺した」などと説明し、その後の取り調べでは佐藤さんと“金銭トラブル”があったと供述している。
司法解剖の結果、佐藤さんの体には上半身を中心に30か所ほどの刺し傷があり、「警察は男に相当強い恨みがあったとみている」(全国紙社会部記者)という。3月24日から鑑定留置されており、刑事責任の有無を含め捜査が進められることになる。
両者をめぐる“金銭トラブル”について、高野容疑者は過去に佐藤さんに対して民事裁判を起こしている。宇都宮地方裁判所栃木支部には2023年12月付けで、「被告(佐藤さん)は原告(高野容疑者)に対し、2514800円及びこれに対する令和5年12月8日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え」とした判決の記録が残されている。
既報の通り、佐藤さんは2021年に第1子を出産している。シングルマザーとして経済的に困窮していた可能性もある。前出の佐藤さんの友人は、彼女の過去と金銭事情についてこう語った。
「あくまでも私が聞いた話ですが、愛里は山形県内の児童養護施設で育ち、15歳のころにはすでに家を出てひとりで暮らしていたそうです。親からの支援もなく、地元を転々としてバイトをしながら食い繋いでいた。
高野容疑者に出会った当時も、キャバクラなどで働いていたので収入はある程度あったと思いますが、『山形にいたころは、家族を支えるためお金に困っていた』と話していたこともありました」
裁判記録や高野容疑者の供述などから、”金銭トラブル”の一部はうかがえるものの、2人の間でどんなやり取りが行われていたのか、その全容が明らかになったわけではない。四十九日を目前に控えたいまも、佐藤さんの友人は事件を消化できずにいる。
「愛里はことしの1月か2月に『ふわっちのデイリーランキングで1位になったら、なにか大きなイベントをやる』と言っており、それが今回の “山手線一周企画” でした。リスナーから常に『イベント配信いつやるの?』とは聞かれていて、愛里は『暖かくなったらやるよ』と言っていましたが、前々からあの日に“山手線一周企画”をやるつもりだったわけではないみたいです。
体が弱いのに山手線沿いを歩くなんて言い出したので、驚いたのを覚えています。あのイベントさえなければ、まだ生きていたのかな……なんて思うこともあります」
事件後、高野容疑者との“金銭トラブル”が明らかになったことで、佐藤さんを批判する声も上がった。佐藤さんの突然の死に向き合うには、あまりに難しい環境だった。
「亡くなったあと、愛里が悪かったのかなとか、自分も何かできたんじゃなかったかなとか、いろいろなことが頭の中を巡って……。都内で火葬は行われましたが、彼女は家族と疎遠だったこともあってか、告別式もなかったと聞いてまた悲しくなりました。少し時間は経ちましたが、友達にはまだ落ち込んでいる子も多くて。お別れ会をしようなんてムードもまだありません。
愛里の写真を見ると、亡くなったことが今でも信じられないんです。愛里にも悪かったところはあるのかもしれないけど、それでも殺されていいわけじゃないですよね。高野容疑者を許すことはできません」
婚約者もおり、年内には“花嫁”になるはずだった佐藤さん。未来ある女性に手をかけた高野容疑者に、司法は今後どのような判断を下すのか──。