福岡和白病院(福岡市東区)の医師ら6人が乗ったヘリコプターが6日午後、長崎県・対馬東方沖で消息を絶ち、1人の死亡が確認された。
離島医療を担ってきた取り組みの中での事故。同病院は同日夜、緊急の記者会見を開き、関係者らは予期せぬ出来事に沈痛な面持ちを浮かべた。
福岡和白病院には6日夜、計3台の救急車がサイレンを鳴らしながら相次いで到着した。救急搬入口に横付けされると、関係者が慌ただしく行き交い、救助された人を運び入れていた。
「大事な患者さん、病院のスタッフを乗せていた。本当に悲痛の極み」。午後8時半頃から同病院で記者会見した富永隆治院長は唇をかんだ。6人全員が午後6時半以降、同病院に搬送され、富永院長は「(心肺停止の人について)いま懸命に救命治療を行っている」と語った。
富永院長によると、長崎県対馬病院(対馬市)から救急搬送の依頼があり、午後1時半頃に患者を乗せて現地を離陸。同1時43分頃から通信が途絶えたため、海上保安庁に通報した。
第7管区海上保安本部(北九州市)によると、午後5時5分頃、海保の巡視艇が転覆している機体を発見した。フロート(浮き)に男性機長と男性整備士、女性看護師の3人がしがみついていたという。
同病院などによると、同病院を経営する社会医療法人財団「池友(ちゆう)会」は離島などの医師不足を補うため、約15年前に医師や看護師が同乗して救急患者を搬送する民間のヘリを導入した。
ヘリの運航会社「エス・ジー・シー佐賀航空」(佐賀市)によると、機体は6人乗りで、3000時間使用した実績がある。4日に行った定期点検では異常はなく、機長の健康状態に問題はなかったという。同社の担当者は事故の原因について「全く分からない状態」と説明した。
佐賀航空によると、福岡和白病院での飛行前点検でも問題はなかった。同社を巡っては、運用するヘリが昨年7月、福岡県柳川市の農地に墜落し、乗員2人が死亡した。事故を受け、同病院は同11月中旬までヘリの運航を停止していた。富永院長は「十分検討して信頼していたが、今考えると考えが甘かった」と述べた。
福岡管区気象台によると、事故当時の対馬空港の天候は晴れで風速は約4メートル。視界も悪い状況ではなかったという。