4月13日に開幕する「大阪・関西万博」の“2億円トイレ”の設計者である一級建築士の米澤隆氏が18日までに自身のXを更新。「安っぽい」「中抜き」などの批判の声に長文で反論した。
米澤氏は、「大阪・関西万博トイレ5に関しまして、部分的に切り取られた建築写真が流出し、安っぽい、工事金額を中抜きしているのではないかといった疑義がおこり、世間をお騒がせしてしまっています。設計者として説明させていただきます」と書き出した。
同氏が設計した「大阪・関西万博トイレ5」の写真がSNS上で拡散され、批判的な声が上がっていた。また、当初の予定価格が約2億円であることについて、「高額すぎる」という声がかねて上がっていた。
米澤氏はXで拡散されている写真について、「広く出回っている写真はトイレ5建築の一部であり、実際には46基のトイレがあり添付写真のようであるということをお伝えさせていただきます」と説明した。
「次に、安っぽいというご批判に対してですが、一般的にトイレに2億円は高過ぎるのではないかという感覚があり、万博2億円トイレやデザイナーズトイレと称された言葉が想起させるリッチでラグジュアリーなトイレのイメージと実際にできた建築にギャップがあったことが要因であると考えています」と分析。「実際のところは、吉村知事が“万博トイレ2億円! について説明します。まず小さいトイレでなく大規模トイレです。2箇所あり、平米単価は77万円と64万円です。建設物価調査会の調査では21~22年の公共トイレ施設の平米単価は98万円です”と説明されていましたようにこのような大規模なトイレに対する予算としては公共の一般的なトイレの予算の基準を大きく下回っておりリッチなものをつくるほどの余裕はありませんでした」と実情を明かした。
「とはいえ半年だけの会期のために多額の費用をかけるのは経済的にも環境的にも負荷が大き過ぎるのではないかという問題意識には、私自身も設計当初から考えてきたものでもあり、おおかたのかたが批判されている内容に共感もいたします」と理解を示した上で、「それに対して、お金をかけてリッチでラグジュアリーなものをつくるよりも(上記のとおりそもそもそのような余裕はありませんが)、簡素な素材ではあるが閉会後を見据え移設転用の機構を備え異なる場所でも形を変え長く使われ続ける仕組みを考案することがよいのではないかと考えました」と設計の意図を明かした。
続けて、「具体的なデザインコンセプトとしましては、トイレ建築を様々な形や色のブロックで構成することにより、閉会後はブロック単位にばらすことができ、公園や広場などに運搬移設しその場に求められるトイレの数や形状に合わせて組み替えることができる計画としました。そのため、ひとつひとつのブロックや単体のトイレブースを見ると簡素なものではありますが、積み木がそうであるように、様々な形や色のブロックを組み合わせることにより、豊かな場を創り出すことを意図しました」とつづった。
さらに、「工事金額を中抜きしているのではないか」という指摘に言及。「公共的な建築であるという性格上、公共が定める厳正なプロセスにのっとって工事金額や施工者が選定されているということをご理解いただければと思います」と呼びかけた。
「工事金額に関しては、刊行物単価を基に社会状況も加味し積算された工事予定金額が上限として定められています。ですので予定金額を超えて実態に合わない高額な金額では工事ができない仕組みになっています。また、施工者の選定にあたっては、一般競争入札が行われました。一般的に不特定多数の施工者による工事金額を下げようとする競争が働き工事金額が適正化されます」と説明。「本建築は、2度の入札で不落不調をきたし、3度目の入札でようやく落札されたという経緯があります」と入札の経緯を説明し、「多くのかたから疑義が上がっているように、これが中抜きできるといったような経済的にうまみのある業務であるのならば、2度も不落不調をきたさないでしょうし、そもそもがそのようなことができない仕組みになっています」と疑惑を否定した。
「当初、トイレ5はその予算から万博2億円トイレと称されてきましたが、2回目の入札が不落不調となったという知らせが届く直前に、万博2億円トイレという言葉とともに高額な費用に対する批判が沸き起こり、それを受け、3回目の入札に向けて可能な限り仕様を下げるなどの減額検討を行い予定工事金額を解体費込みで約1.5億円(税抜)まで引き下げたということも付け加えさせていただきます」と説明した。
最後に「様々なご意見はあろうかと思いますが、もしよろしければ実際に万博会場に足をお運びいただいて実物をご高覧いただけましたら幸いです」とつづった。