子どものなりたい職業ランキングでYouTuberが上位にランクインするように、配信業を“楽しくて夢のある仕事”ととらえている人は多い。そんな中、「実情を伝えたい」という思いから、YouTuberの「リアルなお金事情」を発信したのが、13歳差夫婦の『ポンコツらいす☆年の差カップル』。年の差夫婦というだけでも賛否あるなか、2人はなぜ配信を続けるのか? 批判覚悟で“家族のあり方”を発信する信念、それでもやめなかった理由を明かした。

【写真】「母親が再婚してどう思った?」連れ子も顔出しするポンコツらいすファミリー

■収益ゼロからのスタート…夫婦を支えた想い

YouTubeチャンネル「ポンコツらいす☆年の差カップル」で日常生活や性事情などを赤裸々に発信している、登録者数29万人強を誇っている“13歳差夫婦”のまりこさん(40歳)とこうせいさん(27歳)。2人が配信で得ている収益には、YouTube、TikTokなどの“広告収益”、YouTubeのショート動画に付随した楽曲の印税の“音源収益”、YouTubeやTikTokライブでの投げ銭の“ライブ収益”、特定の企業の商品やサービスをPRする“企業案件”の4つがあるという。

ただし、これらにかかる経費も相当あるようで…。

「動画も音源も、それぞれに制作費用がかかります。とくに自分たちは、自然や神社・恋人たちのスポットへ出かけて撮影しているので、移動にお金をかけています。あと、20万円以上するスマホを2台持ち、通信環境や編集ソフトにもお金がかかります。また、ロング動画の編集は100%委託しているので、こちらに関しては、広告収益だけでは赤字です(苦笑)。全体の収益の割合でいうと、ショート動画の広告収入が8割といったところでしょうか」(こうせいさん)

2人がYouTubeを始めたのは2022年。当時はこうせいさんは会社員、まりこさんはパートで働きながら、ダブルワークで生活していた。その翌年、こうせいさんが離職を余儀なくされ、まりこさんも産休に入ったことで、配信専業に。

その時点での収益はほぼゼロに等しく、「これ1本で生活できる」という確信は決して持てない状況だったという。不安もある中、それでも配信業に突き進んだ背景にはこんな思いがあった。

「ポンコツらいすをしっかりした形にして、もっともっと活動していきたいという気持ちと、お金がなくても幸せに生きていけることを伝えたいと思っていました」(こうせいさん)

■登録者29万人でも収支はトントン? 不安定な収益事情

YouTubeのチャンネル登録者数が29万人にまで達した現在は、「育児手当と動画収益で収支はトントンくらい」という2人。しかし、貯金は使い果たし、経済的に不安定な状況は相変わらず続いているのだという。

「質のいい動画を制作しても、アルゴリズムやチャンネルの優遇の度合いで、再生回数やおすすめへの表示が常に変化するため不安定で、次月の収入がわからないために、貯蓄も投資もしにくいんです」(こうせいさん)

それでも「今までやってきた職業に比べるとお金は得ていると思う」とこうせいさん。ただし、「今までの仕事の労力が100だとすると、今は300は頑張っているので、3倍働いた分に対して支払われる対価と考えると、全然見合っていないなと思います」と苦笑いする。

まりこさんも言う。

「費用対効果からすると、正直、悪いですね。ただ、2人ともそれが好きだから、1ヵ月先が見えなくてもやっていられるし、何より、どんな可能性がこの先開けるかわからない世界ですから、しんどくても面白いし、まだまだこの状態で止まってはいられない、頑張らなければという思いがすごくあります」(まりこさん)

ところで、YouTubeを始めて3年目。「まだまだトントン」とはいえ、専業で暮らしていけるようになったのには、何か秘策があったのだろうか? 聞いてみると、こうせいさんは「正直、わからないんです」と苦笑い。

「例えば、YouTubeでは、アカウントの評価が一昨年の3月頃に急に跳ね上がって、同時にそれまでの動画の視聴が急に100倍になりました。ちょうど企画の方向性を変えた時だったので、そのお陰かと思いますが、正直その3月に何があったのかわからないんです」

■「どうせお金のためじゃないの?」、批判を恐れず配信を続ける理由

2人の動画では、夫婦の性事情について真摯かつポップに語る動画が人気で、「勉強になる」「NHKの深夜番組にしてもいい内容」と視聴者の心をつかんでいるが、一方で、性について語り合うことがタブー視されがちな日本において、批判が多いのも事実。

パートナーシップをテーマに発信している2人は「パートナーシップと性は切り離せないものだし、隠すものでもないし、バカにするものでもない。」(こうせい)、「私たちの動画をきっかけに、性の大切さを夫婦間や親子間でもっとオープンに話せるようになったら」(まりこ)という思いを込めて発信しているのだが、「どうせお金のためじゃないの?」とうがった見方をする視聴者も存在する。それに対してこうせいさんはこう信念を語る。

「自分たちは、ライフスタイルを発信しているので、ありのままの姿や価値観を見てもらって収益を得ることは、営業活動と変わらないと考えています。多くの人が顔出しや私生活を動画に出すことに抵抗がある中で、“自分達にしかできないこと”だとも思っています」(こうせいさん)

まりこさんも「“稼ぐ”ことだけを追うのではなく、観てくれた人に“響く”内容やテーマを発信し続けていきたいし、自分たちが好きなことややりがいがあることを形にして、こういうことを幸せに生きている人がいるのだと見てくれる人の価値観の幅を広げたいです」と意気込む。

そんな2人のビジネスの今後はというと、「法人化をめざす」と夢は大きく膨らんでいる。

「オリジナル商品の制作や販売、性とパートナーシップとか家族のあり方など、自分たちの得意分野での講演会や、書籍化など夢を抱いています。下の子がまだ小さいので、動画制作で精一杯な状態ですが…。できるかできないかではなくて、まず挑戦してみて、軌道修正しながら進んでいきたいです」(こうせいさん)

各社が毎年発表する「小・中・高校生が将来なりたいものランキング」では、のきなみ上位に顔を出すYouTuberや動画投稿者。理由の多くに「スマホ1台あれば人気者になれて高収入が得られてコスパがいい」ことがあげられているが、2人の話を聞いていると、さほど簡単ではないことがよくわかる。

“13歳差夫婦”というだけでも注目を集める2人だが、お金や制作の苦労だけでなく、発信すること、顔出しすることでついて回る批判も常にある。それでもまりこさん、こうせいさんが伝えたいのは、みずからの思いだ。「年の差で悩む同じようなカップルを励ましたい」「さまざまな家族のあり方を考えたい」。そんな『ポンコツらいす☆年の差カップル』が、今後どんな展開を見せていくのか、見守りたい。

取材・文/河上いつ子