埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故。1月28日に陥没した後、29日には数メートル離れた位置で新たな陥没が起き、さらに30日、その2つの穴の間のアスファルトが崩壊し、一つの巨大な穴になるなど、被害は甚大だ。2月6日現在、転落したトラックの運転席部分とみられるものが確認されているが、下水道管の水を減らすため下水の一部を迂回させるバイパス工事が完了した状態で、運転手の安否は確認できていない。
識者のなかには、「今回の事故は全国で起きうる」とする意見も多い。芝浦工業大学の稲積真哉教授もその一人だ。稲積教授が、陥没事故のメカニズムとともに「危険要素」を解説する。
「こうした陥没事故が起こりうる要素としては、主に2つ考えられます。
1つは、下水管・水道管の老朽化による破裂。これは今回と同じメカニズムですね。もう1つは、近くでトンネルを掘っていたなどの工事が原因で地盤に影響し、陥没する事例です。2016年に博多駅、2024年に広島で、工事が原因とみられる陥没事故が起きています。
しかし、工事に起因する事故は、あくまで限定的です。それに比べて、下水管と水道管の破損は、見た目にはわかりにくい。というのも、多くの下水管・水道管は、高度経済成長期に作られたものが多く、60年ほど前に整備されたものが多数あります。しかし、一般にこれらの耐用年数は50年と言われていますから、すでに多くの下水管・水道管は “定年” を迎えているのです」
実際、2月6日には、名古屋市で道路が1.5メートル陥没する事故が起きており、車がはまってしまった。ここでは、まさに近くで水道管の改良工事がおこなわれていた。
八潮市では下水管の破裂が事故の原因になったと見られているが、上水道でも同じことが言えるだろうか。
「上水道も、陥没事故の原因になるという点では同じです。ただし、上水道は破損すればすぐにわかりますよね。水が出にくいなどの不便が生じやすいので、すぐに破損の実態が判明することが多い。それに比べ、下水管は基本的に “流しておくだけ” ですから、やはり劣化がわかりづらいことが多いでしょう」
こうした陥没事故の前兆は何かあるのだろうか。
「基本的に、陥没事故の前兆はないと考えたほうがよいかと思います。ただ、水道管がどこを流れているかを頭に入れておくのは重要かもしれません。水道管は、市や県などの自治体が管理していることがほとんどです。ですから、たとえば民間が所有している土地の下には通せないんですね。水道管が通るのは、市道・県道・国道といった自治体管理の道の下です。今回も、県道が陥没しました。こうした道路の下には、何かしらの水道管が通っていると思ったほうがいい。
そのなかでも、ちょっとしたくぼみや亀裂など、表面に異常を見つけたら、大陥没の予兆かもしれません。地盤が動いている可能性があります。もちろん、『間違いなく予兆だ』と言えるわけではないのですが、大陥没が起こる前に、こうした道路表面上の異変が起きてもおかしくないのです。こうした異変を見つけたら、関係各所に報告することが、お住まいの町の陥没事故の予防につながるかもしれません。
また、点検してあるからといって安心するのも禁物。今回の事故も、2021年の定期点検で問題は見つかりませんでした。点検後の地震などで亀裂が入った可能性もありますし、そもそも『5年に1回以上』という国が定めた点検期間がはたして正しいのか……。これを機に、見直す必要があるかもしれません」
今回の大惨事をきっかけに見直すべきポイントが、数多くありそうだ。