若年層を中心にオンラインカジノが蔓延している。14日、お笑いコンビ「とろサーモン」の久保田かずのぶ、「令和ロマン」の高比良くるまら吉本興業所属のタレント10人弱が、オンラインカジノで賭博をした疑いがあるとして、警視庁から任意の事情聴取を受けていることが明らかになった。タレント間で口コミで広がり、中には数百万円を賭けていた者もいるという。だがこれらは氷山の一角で、国内の利用者は300万人超との推計もある。
利用者のなかには借金苦となって詐欺や窃盗に手を染めるケースも多々ある。資金力のない若者がオンラインカジノの「軍資金」ほしさに、チケット詐欺などで手に入れた金を賭けに使用しているケースも多発しているという。
こうした犯罪の温床となっているのが、不正に売買・譲渡された銀行口座だ。闇バイトなど小遣い稼ぎのつもりで口座を売却し、数億円にものぼる賠償金を背負う事例が後を絶たない。金融機関も頭を悩ませており、オンラインカジノの背景に横たわる大きな問題となっている。その実情を、金融犯罪に詳しい、あおい法律事務所代表の荒井哲朗弁護士に解説してもらった。
前編記事『オンラインカジノの裏側で…数万円欲しさに「銀行口座」を犯罪組織に売ってしまった人たちの「悲惨な末路」《数億円の賠償のケースも》』より続く。
不正利用とみられる口座数に比して、検挙数はまだまだ少ないのが実情だ。だが、いま問題ないからといって、今後も発覚しないとは限らない。
「法定刑だけを比べれば、アンパンをコンビニから盗むより軽微な罪。実刑に処せられる事例は少ないでしょう。ただ一度でも口座を提供してしまえば、単発でなく複数回、金の移転に利用されているのは間違いない。その被害者のうち一人も警察や弁護士に行かないというのはまずありえません。金融機関や捜査機関はおおむね把握できると思ったほうがいいでしょう」(荒井弁護士、以下「」も)
代償はそれだけではない。口座を不正譲渡したことが発覚すると警察庁の「凍結口座名義人リスト」に掲載され、すべての銀行で口座開設が不可能になってしまうのだ。
「たまに地方銀行の口座は何とか作れたという話を聞くこともありますので、あくまでケースバイケースです。とはいえ正当な方法で口座を作ることは、場合によっては一生できないと覚悟してもらったほうがいいでしょうね」
こうなると、そもそも就業自体が困難になる。給与口座を持てないことで企業から就職を断られ、まともに仕事さえできなくなるのだ。個人口座の売買で得られる金額はわずか3万円ほど。人生を棒に振るのはあまりに馬鹿げた行為といえるだろう。
とはいえ、数億もの借金を背負い、半永久的に銀行口座を持てず、職まで奪われるというのは、無知の代償としてはあまりに大きすぎるように思える。だが、荒井弁護士は「匿名性を保ったまま犯罪行為を成立させられること自体が、社会への大きな脅威」だと警鐘を鳴らす。
「世間を震撼させた『ルフィグループ』は外国にいながら、日本人を動かして強盗を繰り返していましたよね。匿名性を維持したまま違法な収益を上げられるようになると、簡単に『殺せばいい』というところまで行きついてしまう。もはや魔力に近い万能感を抱くようになるわけです。
たしかに口座売買というのは、強盗の実行役になったり、詐欺の受け子をしたりするわけじゃありません。でも十分に、人の一生を狂わせる力がある。こうしたトクリュウ犯罪に多大な加担をしているという自覚を持ってほしい」
昨年、匿名・流動型犯罪グループ、いわゆる『トクリュウ』系の逮捕者4500人のうち、3分の1は金融機関の違法な口座取引によるものだった。
「『口座をちょっと売っただけなのに』というのは罪の意識がない分、より悪質であるとさえいえます。被害者の代理人として不正口座の持ち主に連絡を取ると、軽い調子でいる人間も多く、なかには『仕事場に何回も電話してくるんじゃねえ』という態度を取る者もいます。
実際の売買はSNSでの数分のやりとりで完結することが多いので、ことの重大性がわからないんでしょう。そう思わせるのは、口座を集める側の戦略の一つでもある。けれども、行きつくところまでいけば遠隔操作での無差別強盗殺人まで起きてしまうんです」
詐欺の被害者が大金を失ったことで生じるのは、経済的な問題だけではない。
「何千万円もの金を取られたら、家族に話さないわけにはいかなくなる場合も多い。そこで家族関係に亀裂が入ってしまうケースは多いんです。友人や知人に工面してもらった金を奪われ、周囲から孤立してしまうこともある。
そういう悲惨な境遇に陥った方を多く見てきました。命を絶ってしまわれるような方もおられるのです。これは全然小さな犯罪じゃない。こうした不幸を生むことに思いが至らないのは、責任ある大人が持つべき想像力や感性に欠けています。『大人失格』って言ってやるべきだと思いますね」
目先の金に安易に飛びつくことが、社会の安定性を脅かし、人の生命や安全を脅かす事態を呼ぶ。重すぎる代償も当然といえよう。
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