次々とその手口を変えるため、警察との間でもいたちごっこのような状況が続いている特殊詐欺。
今、未成年をターゲットにした新たな手法が広まりつつあります。
“バーチャルカード”という見慣れない言葉。
バーチャルカードとは、実際のカードが発行されないクレジットカードのこと。
登録すると、スマートフォンをクレジットカードとして利用できるようになります。
ほとんどが事前にお金をチャージする方式で、アプリを使って決済します。
実際に使っている高校生も…。
高校生:知ってます。(Q.バーチェルカードを使ったことは?)ありますね。アプリ入ってます。服やネットフリックスの支払いに使ってます。コンビニなどでチャージして使ってます。(Q.チャージした金額だけ使える?)そんな感じです。
このバーチャルカードがどのように詐欺に利用されたのか。
今回、実際に金をだまし取られてしまった兵庫・神戸市に住む中学生のゆうたさん(仮名・13)と父親が取材に応じました。
“バーチャルクレカ”詐欺被害にあったゆうたさん:後悔が一番大きかったです。取られた瞬間、心がぞわーって急に怖くなって。
中学生のゆうたさんが詐欺被害に遭う入り口となったのは、私たちも、よくSNSで見る「コメントしてくれた人全員に2万円入ります」といった動画。
“バーチャルクレカ”詐欺被害にあったゆうたさん:「お年玉の礼儀正しいやりかた」って動画見て、「お金が欲しい人は私にコメントください」って。コメントしてみたら「あなたが100万円の当選者になりました」って感じでDMきて。最初は怖いというより「当たったんだ」と喜びが大きかった。
100万円当選の連絡を受けたゆうたさん。
ダイレクトメールやLINEを通じてやり取りを重ねると、「vandelアカウントはお持ちですか?」とメッセージが。
このアカウントこそ、バーチャルカードのアカウントだったのです。
ゆうたさんも手続きをし登録させられるのですが、なぜ、中学生がクレジットカード代わりになるバーチャルカードを作ることができたのか。
記者が実際に登録手続きをしてみました。
試しに未成年で登録しようとすると、保護者の同意が求められました。
未成年に対しては保護者の同意という項目は存在するのですが、実際にはチェックを入れるだけで次の手続きに進めてしまうのです。
実際、ゆうたさんも…。
“バーチャルクレカ”詐欺被害にあったゆうたさん:(Q.保護者に相談は?)何も言ってないです。
ゆうたさんの父:(被害にあった後)様子がおかしかったので、「どないした?」と言ったら黙ってしまった。
ゆうたさんがバーチャルカードの登録を済ませると、「賞品を引き出すには、コンビニエンスストアで残高に3万円をチャージしてください。100万円を獲得した後は、残高が戻るので安心してください」とLINEが。
ゆうたさんはためていたお小遣い3万円をチャージ。
クレジットカードに関する知識がないため重要な情報とは気が付かず、バーチャルカードの情報を伝えてしまい3万円は抜き取られました。
そして相手からの返信も途絶えたということです。
ゆうたさんはその後、父親に相談し被害届を提出。
兵庫県警が詐欺事件として調べています。
ゆうたさんの父:僕もバーチャルクレジットカードというのは全く知らなくて、13歳でも作れるカードっていかがなものかなと。
サイバー犯罪に詳しい神戸大学の森井昌克名誉教授は、「若年層を狙った新たな犯罪の手口だ」と話します。
神戸大学・森井昌克名誉教授:バーチャルカードというのは今のところは詐欺に使われるという意識が少なくて、小学生・中学生あたりがターゲットになるということ。中学生や高校生は色々とだましやすい、どちらかというと。まだ社会経験が少ないので。
ゆうたさんのお金を抜き出したSNSのアカウントは、すでに削除済みでした。
手を変え品を変え、私たちに忍び寄る新手の詐欺。
便利さの裏にある危険と注意深く向き合う必要があります。