「闇バイト」が日本中に蔓延していることを示すある事件が、’24年11月に起きた。大学生らが「スカウト」を行い、職業安定法違反(有害業務への職業紹介)の容疑で逮捕されたのだ。このグループには160人ものスカウトらが所属しており、SNSで募集した女性のプロフィールを全国の風俗店約350店舗に送信。オークション形式で女性を「落札」させて、億単位の売り上げを得ていたとされる。
こうした悪質なスカウトグループの元締めは、半グレや「匿名・流動型犯罪グループ」(通称トクリュウ)であることがほとんど。彼らが「兵隊集め」のターゲットにしているのが大学生だ。若者の犯罪事情に詳しいライターの佐々木チワワ氏が言う。
「大学の新入生を『サークルの新歓コンパ』などと偽って勧誘。しかし、入ってみたら実態は違法スカウトグループだったというケースが頻発しています。『闇サークル』とも呼ばれている。違法スカウトグループは、MARCHや日東駒専といった有名大学にも侵食しています」
本誌は今回、実際に「闇サークル」に入ってしまった大学生にも取材した。都内の有名私大に通うA君(21歳)が振り返る。
「一昨年の4月、『テニスサークル』を名乗る人たちから『新歓コンパに来ないか』と声をかけられたんです。サークルの名前を調べると、『大学公認』であることもわかりました」
コンパは大衆居酒屋ではなく、東京・六本木のクラブを貸し切って開かれた。派手な格好の女性も大勢参加する豪華すぎるコンパに面食らうA君。すると「サークル」の幹部が、「俺らが何で稼いでいると思う?」と声をかけてきたという。
「悪びれもせず、『スカウトをしている』と言っていました。指示に従って女の子を風俗店に紹介すれば、月に数十万円の『バイト代』が出ると。正直、僕は違法行為であることもよくわかっておらず、そんなに稼げるならという軽い気持ちで参加してしまった。脅されてというよりは、僕のようにカネに釣られてという人がほとんどです。いまは奨学金を借りている貧乏学生が多いので……。
女の子はSNSで募集をかければいくらでも集まります。うちの「サークル」では、コンパに来た女子大生に話を持ち掛けることもありました」
「闇バイト」の手口は日に日に巧妙化しているだけに、犯罪と気づかず加担してしまうケースは多い。都内在住の40代の主婦・Bさんが応募してしまったのは、「違法発送代行」だ。
「’22年夏頃、副業サイトで募集があった『海外発送代行』の仕事に応募しました。送られてくる商品を指定された住所に送るだけで、一点につき4000円がもらえた。自身のクレジットカードは使用せず、決済済みの商品が家に届くのを待って発送するだけでよかった」
Bさんは半年で4万4000円のバイト代を得た。しかし、ある日突然、警官の訪問を受け、事情聴取を受けることに。発送していた商品が、詐取されたアマゾンギフトカードによって購入された疑いがあったからだ。逮捕はされなかったが、警察からはきつくお灸を据えられた。
「警察の話だと、詐欺グループは中国にいるようで、その後も仕事を依頼してきました。無視しているうちに連絡は来なくなりましたが……」(Bさん)
後編記事『「闇バイト」で集めた奴らに証明写真を撮らせて…!誰もが被害者になる「マイナンバーカード偽造詐欺」の「悪質手口」』へ続く
「週刊現代」2025年1月11日・18日号より
「闇バイト」で集めた奴らに証明写真を撮らせて…!誰もが被害者になる「マイナンバーカード偽造詐欺」の「悪質手口」