日本が外国人に人気の旅行先となっていることは、多くの人が肌で感じていることだろう。テレビの特集やネット記事を見ても、訪日旅行者関連の話を聞かない日はないくらいだ。何度も訪日するリピーターも少なくないと聞く。
日本という国が有する魅力は、本当に底なしであると筆者も感じている。気候の違いや地域による違いによって育まれた多様な文化や景観はどれも素晴らしい。山も海も大都市も古い街並みもグルメも清潔さも…外国人が旅行先に期待する条件を見事に満たしている国だ。
現在でこそ、日本の都市部や有名観光地で外国人旅行者の姿を見かけない日はないだろう。海外在住の筆者であっても、「実際に日本に旅行して来た」という外国人に遭遇する機会は意外と多い。しかし、ひと昔前は「日本=遠い極東にある未知のベールに包まれた国」という感覚が外国人の間では根強かった。
筆者が最後に日本に一時帰国したのは2017年の秋のこと。その際、カナダ人の友人一人とともに約一か月かけて主に西日本を旅して周った経験がある。友人が日本の地を踏んだのはもちろん初めてのことだ。彼は日本から遠く離れたカナダという国の、さらに地方部出身の人間であるためか、日本に対して漠然としたイメージ(寿司、自動車、長時間働く人々…)こそあれど、歴史や文化などは全く知らない状態での訪日であった。
一か月間の日本滞在を終えて帰国の途に就いた友人は、文字通り「日本のファン」になっていた。日本滞在中に経験したありとあらゆることが新鮮で、そのどれもが感動的で素晴らしい思い出であったと言う。
ではいったい日本の何が、彼をそこまで感動させたのだろうか。ここでは、実際に日本を周遊している際に友人が称賛していたことをいくつか挙げていく。
私たち日本人にとっては当たり前のことが外国人には新鮮に映ることはたくさんあるし、日本人自身が意外と気づいていない日本の良さに、異文化の国から来た人だからこそ気がつける場合もあるのかもしれない。
前回記事【「カナダでは絶対に出会えない…!」外国人観光客が日本の「コンビニの肉まん」に感動したワケ】で書いたように言うまでもなく、彼は日本のコンビニにハマっていた。前回の記事でも書いた通り、「コンビニは夢の国だ!アメージング!」を毎日のように連発していたくらいだから。
日本人が普通だと思っているコンビニが外国人にとってどれほど感動的なものであるかについては、前回の記事をお読みいただきたい。本記事ではコンビニ以外の「アメージング!」な日本のあれこれを紹介していく。
一か月に渡る日本滞在のうち約半分の期間、筆者と友人はレンタカーを借りてロードトリップを楽しんだ。尾道や阿蘇山、下関など西日本の有名な観光地を訪れ、友人は情緒ある風景や自然の美しさに大喜びだった。
ロードトリップ中の宿泊は「せっかくなら日本ならではの体験を」と考え、伝統的な温泉旅館に宿泊して癒されたり、海辺の民宿で素朴なおもてなしを受けたり、果ては漫画喫茶に宿泊してみたりとバランスよく楽しんだ。(友人は漫画喫茶で宿泊ができるということ自体に、すでに大変感動していた)
こうして「THE・日本旅行」たる宿泊も楽しんだのだが、旅の目的はロードトリップ。日によっては車中泊することも数回あった。車で国内旅行をする日本人にとって、車中泊は決して珍しいものではないだろう。高速道路ならサービスエリアがあり、24時間営業のレストランや清潔なトイレ、果てにはシャワー設備や温泉が完備されている場所まである。一般道であっても、「道の駅」と呼ばれる休憩施設の駐車場で一晩明かすことは可能だ。
筆者にはこの日本の車中泊文化が染みついていたため、「今から宿探すの面倒だし、今日は車で寝る?」と何気なく友人に尋ねた。しかし友人の反応は意外なもので、「え?車の中で寝るの?どうして?そもそも危なくないの?」と不安そうであった。
それもそのはず。友人の出身国であるカナダでは、州にもよるものの基本的に車内で夜を明かすという行為は合法ではないのだ。長距離トラックなどに関しては、一部決められたパーキング(有料)に車を止めて中で仮眠をとることは許可されているものの、店舗の駐車場や高速道路のサービスエリアで夜間に車中泊することは禁止されている場合がほとんどだ。
その理由はいくつかあるが、やはり安全面を考慮した上での規制という部分が大きいだろう。カナダは比較的治安が良いとされる国ではあるが、閉店後のファストフード店の真っ暗闇に包まれた駐車場で無事に夜を明かせるほどに安全ではないということだ。
そんなわけで、躊躇する友人をどうにか説得し、山奥の道の駅の駐車場で初車中泊をした。その翌朝、筆者よりも早く起きていた友人は笑顔でこう言った。
「このパーキングすごい!トイレぴかぴかだし、24時間使えるし、温かいお湯まで出る!」
彼の手には自動販売機で購入したらしきジュースが握られていた。昨晩の不安はどこへやら……。
この道の駅には地元の名物料理が食べられるレストランや、地産の野菜やスイーツを販売するショップも併設されており、開店後に数時間楽しむこともできた。道の駅から出発する際に「昨晩は人がほとんどいなくて暗かったから車の中で寝るなんてびっくりしたけど、こんなに安全で便利だとは思わなかった。何より無料なのがすごい!」と友人は感動を滲ませながら言っていた。
どうやら、友人の人生初の車中泊はお気に入りの体験となったようだ。その後のロードトリップ中には「昨日はホテルに泊まったから、今日は車で寝る?」なんて自分から提案してくるようになったくらいに。結局、ロードトリップの旅程の3分の1は車中泊する結果となった。
あれから数年経った今でも「日本って車の中で寝ても安全なの、本当にすごいよね!」や「あのパーキングで食べたコロッケ、すごく美味しかったなあ…」と車中泊の思い出話がしばしば出てくるくらいなので、友人にとってとても鮮烈で良い体験となったことは間違いない。
記事後編【「東京」は思っていたのとまったく違う…外国人旅行者が驚愕した「日本人の姿」】では友人が旅の途中で感動した、日本の田舎と都会、それぞれの意外な魅力について紹介していく。
「東京」は思っていたのとまったく違う…外国人旅行者が驚愕した「日本人の姿」