国内600店舗を超えた焼き鳥チェーンのトップ「鳥貴族」が本気で海外進出に走り出した。2024年5月に社名変更をすると同時に、ロサンゼルスはじめ、台湾、韓国、香港、上海に進出を決め、来年は東南アジア各国に出店を始める。
「2030年に海外500店舗」を掲げ、寿司、和食、ラーメンなどと比べると海外ではまだ未知数の焼き鳥を広めていくというのだ。はたして勝算はあるのか。
尹(ユン)大統領の「戒厳令」騒動で揺れる韓国。
10月29日、私はソウルの学生街・弘大(ホンデ)の「鳥貴族」韓国1号店を訪ねた。9月28日にオープンし、ちょうど一ヵ月が経ったところ。取材に応じてくれた鳥貴族韓国社長の筒井信人氏は、満面の笑みを浮かべながら、「先週土曜日は、オープン日の売上げ65万円を超えました」と語っていた。
12月8日、戒厳令騒動が気になって筒井氏にメールをした。「デモなどの騒動でお店に影響はないですか?」と聞くと、「日本の報道が過激すぎます。韓国では全く普通の生活で“大統領がヘマしたな”って感じで受け止められていますよ。店は今日も賑わっています」と返事があった。来年1月には同じ弘大エリアに2号店・3号店の同時出店を目指す。
「弘大エリアでまずは5店舗のドミナント(同一地域多店舗出店)展開をし、ここで地固めとブランディングをやって、他のエリアへ広げていきます。ソウルを軸に韓国全体で5年間で300店舗展開を目指しています」と筒井氏。
「鳥貴族」の海外初出店はロサンゼルスから始まった。2024年5月1日運営スタートの「HASU」(買収店舗)に続き、8月22日には2店舗目の直営店「zoku」をオープン。3号店は「鳥貴族」で開業準備中だ。
9月20日には台湾1号店(台北・現地パートナーと提携)を出店し、9月28日に韓国1号店オープンという流れだ。12月1日には早くも台湾2号店を開けた。さらに上海に100%独資の法人を設立、すでに1号店の物件を押さえた。香港でもすでにFCパートナーと契約、出店準備に入っている。米国、台湾、韓国、中国、香港と驚異的なスピードで出店を進めている。
国内では600店舗を超え、業績好調な「鳥貴族」。繁華街では多くの店舗がビルの空中階にあり、黄色い看板が目立つ。20~30代の若者に支持され、焼き鳥居酒屋ながら女性客も多い。最近はインバウンドも押し寄せている。その鳥貴族が海外展開に向けてアクセルを踏んだ。
「中期経営計画で2030年に2000店舗達成と目標を掲げましたが、そのうち500店舗は海外です。“Global YAKITORI Family”をビジョンに、日本の焼鳥の文化・価値を世界に広めていきます」と鳥貴族を展開するエターナルホスピタリティグループの大倉忠司社長は語る。
2024年5月1日、社名を「鳥貴族ホールディングス」から「エターナルホスピタリティグループ」(以下EHG)に変えた。それと軌を一にして、海外展開を一気呵成に進めると発表したのだ。
大手外食チェーンでは、「すき家」のグローバル展開を目指すゼンショーHDが「2024年3月期末に海外の店舗数を国内外食で初となる1万店規模にする」と発表、「丸亀製麺」のトリドールHDも「2028年3月までにグループ全体で海外4000店舗目標」を打ち出した。
この2強にはとても及ばないが、焼き鳥という海外では未知数の後発業態でグローバル展開にアクセルを踏んだ鳥貴族・EHG大倉社長のシナリオと覚悟、そしてどのようなスキームやキャスティングで海外市場を切り拓いていくのかを追ってみた。
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【つづきを読む】《焼き鳥で“世界制覇”》「鳥貴族」が本気で海外進出へ…「世界の一風堂」をつくった男が描く大胆戦略
《焼き鳥で“世界制覇”》「鳥貴族」が本気で海外進出へ…「世界の一風堂」をつくった男が描く大胆戦略