東京出張を終え、自宅へと戻ったAさんの目に留まったのは1枚の封筒だった。差し出し主は古くから付き合いを続けてきた大阪府内のトヨペット。家の近くとあってこれまで整備や車検など何かと相談をしてきた馴染みのディーラーだ。封を開け、資料を取り出す。書面を読み始めると途端に言葉を失った。
「損害賠償」「査定額547万」「212万」「14日以内にお支払いください」
そんな文字がAさんの頭の中を駆け巡る。一体全体どうなっているのか。慌ててトヨペット本社へと電話をかける。そこで聞かされたのはAさんにとって無情と言える言葉だった――。
コロナ禍をきっかけに始まった世界的な半導体不足。そのあおりを受けたのが自動車産業だ。未曾有の部品不足で国内メーカーの生産数は激減。経済損失は1兆円にものぼると指摘される。
しかし、ここ最近は半導体企業のみならず、自動車メーカーが直接調達に向けた動きを見せるなど新たな枠組みを模索。その甲斐あってか、不足が叫ばれた半導体も徐々に解消の兆しを見せている。
ホンダ副社長の青山真二氏も会見で2023年下半期での半導体事情について「ほぼ問題ない状態になった」と発言。しかし、現場ではいまだ納期遅れや予定変更によって混乱が続いているケースも少なくないという。
「1度も乗っていない車に200万円以上も支払うのはいくらなんでもおかしいのではないか」
こう憤るのは大阪府内に暮らす男性A氏(40代)だ。彼もまたそんな納車トラブルに見舞われた一人。ことの発端は昨年夏頃まで遡る。
「去年の8月頃だったと思います。新車のアルファードを購入しようといつもお世話になっている大阪府内のトヨペットに相談に行きました。お店は15年ほど車の整備や車検などでお付き合いしていたディーラーです」
すぐに購入が決まり、A氏は新車の注文をお願い。後日、ディーラー側から伝えられた納車予定日は今年の4月末頃だった。
「半導体不足の影響がまだ残っており、納車までは少し時間がかかってしまうとのことでした。購入したのは昨年6月から発売された新型アルファードのハイブリットZクラスです。購入費用は私が顧問をやっている会社の社長から用立ててもらう予定でした」
売買代金は759万5670円。A氏は支払いについてキャッシュでの一括払いを選択していた。しかし、ここから憧れの新車購入は二転、三転の様相を繰り広げる。
「発注後、ディーラーから『納車の予定が早くなり、3月となった』との連絡がありました。なので会社社長にも予定変更を伝え、早めの資金の準備をお願いしていました」
かくして購入資金を用意したA氏だったが、安堵したのもつかの間、再びアクシデントが襲う。
「ディーラーから今度は『工場が止まってしまい、納車が5月になる』と告げられました。理由については半導体の影響や工場の停止によるものと説明を受けました。私も車業界も色々あったのは知っていましたから、こればっかりは仕方がないと了承しました」
半導体不足、工場の停止……。納車日を巡って右往左往を余儀なくされるA氏。だが、事態はさらに悪化の一途を辿っていく。
つづく後編記事『「212万円今すぐ払え!」横暴ディーラーから届いた請求書に愕然…!「新型アルファード」を購入した男性を襲った「納車トラブル」の顛末』では新車を待ちわびるA氏を襲ったさらなる悲劇と旧知のディーラーから送られてきた驚愕の郵便物の中身を詳しく紹介する。
「212万円今すぐ払え!」横暴ディーラーから届いた請求書に愕然…!「新型アルファード」を購入した男性を襲った「納車トラブル」の顛末