国内最大規模のおもちゃの展示会「東京おもちゃショー」が今年も開催された。多くの子どもたちも集まり盛況だった中、会場に続く道の途中にズラリと並んだのは調理された動物の写真や、「食べさせるなら殺すところも見せよう」というメッセージの描かれたパネル。これは完全菜食主義者「ヴィーガン」のデモだ。
【映像】通路に並ぶ“残酷ポスター”の詳細
2日間に渡りデモを主催したヴィーガン活動家の箱山由実子氏は、過去に小学校前やコミケ会場の前でも同様のデモを実施。『ABEMA Prime』に2度出演した際、他の出演者からその手法に批判や指摘を受けたこともあり、1日目は血が流れるような写真を減らすなどしたが、2日目には「血が流れていないものでは足りなかった」と、従来の残酷とも言える内容に戻した。現地では、通りすがりの人から厳しい批判も受けた中、なぜ過激と批判される伝え方にこだわるのか。子ども向けに”残酷ポスター”を見せることの是非は。『ABEMA Prime』で、再び議論した。
箱山氏と、同じくヴィーガンで元高校教師の杉山由美子氏は、東京おもちゃショーの来場者が行き来する通りに、動物が食肉処理される様子を伝えるパネルを展示した。「隠さず真実を知る機会を提供したい」と、来場する子どもを狙った活動だといい、1日目は過去の批判や指摘も考慮し、子ども向けにマイルドな活動にしようと、箱山氏ら2人にとっては選んだ写真も控えめにしたという。ところが1日目の反応を見て、箱山氏は伝え方としては不十分だったと判断。過去に活動した時と同じようなものに戻した。一方で、杉山氏はマイルドではないポスターが子ども向けには適切でないと思い、2日目の参加は見送った。両日とも通行人の反応は様々で、服で顔を覆うなど怖がる子、立ち止まった子に歩くように促す親、「子どもへの虐待だ」と怒る保護者、一緒にパネルを見て話す親子がいたという。
主催した箱山氏はどういう思いだったのか。「1日目は過激なものを控えた。ご年配の女性の方が大変ご立腹で、私たちがやっていることは子供に対する虐待だとおっしゃった。一方で、お子さんの様子を拝見していたら『ふーん』という感じ。私がこれまで活動をした時は、動物が殺されている写真の前でじっと立ち止まって考える姿をよく見たが、今回はそういうこともなかった。お子さんの心にあまり響いていなかった」と、手応えが得られなかったという。
2日目、これまで同様に過激な写真に戻した理由については「血が流れていないものでは足りない。お子さんは気づかない。子供に発信していくのはとても大事。私も子どもの心に引っかき傷をつけたいわけではないが、現実に起こっているこの殺戮、現実を知ってもらいたい。やり方として、動画は控えている。写真もいつもなら何十枚と並べるが、今回は3、4枚だけにしてみた」と、2日目の内容でも配慮はしていると訴えた。
また今回、子どもが楽しむ東京おもちゃショー前という場所を選んだことには「ご年配の女性から『おもちゃショーで子供たちはその夢を見に来ている』と、夢という言葉があった。私はもちろんおもちゃで楽しく遊ぶということも大切だが、見たくない真実を見て考えることも、おもちゃで遊ぶことと同じぐらい非常に大事だ」とも述べた。
場所、手法、それぞれに今回も批判や指摘が番組内でも出た。「あなたのいばしょ」理事長で、子ども家庭審議会の部会委員も務める大空幸星氏は、ヴィーガンとしての活動に一定の理解を示した上で、疑問も呈した。「ヴィーガンも昔はアニマルライツ、動物への福祉という運動だったが、世界各国では健康食というアプローチによって社会に浸透している事例がある。(残酷ポスターなどに)これだけ反発があって、この手法を選ぶ理由はなぜなのか」と述べた。さらには箱山氏の活動に対しては「原理主義的で『動物搾取からの脱却』として、この運動は正しいかもしれないが、自由主義的でリベラルなヴィーガニズムをとる人たちにとっては大迷惑。結局ヴィーガン=過激主義者みたいなイメージが固定化されてしまう。キング牧師は非暴力を徹底したが、これでは子どもたちへの暴力だ」と強く指摘した。
これに箱山氏が「たとえば放火したりはもちろん暴力だが、ただパネルを置いているだけで、これは暴力ではない。それであれば(動物を殺す)真実こそが暴力で、それをやめるべき」だと反論したが、大空氏は再度指摘。「これは虐待の加害者がよく言う言葉。例えば今は夫婦げんかを子どもの前でするだけでも、子どもに対しての暴力となり『面前DV』と言われる。加害側は自己の暴力性、加害性を隠す。仰りたいことは分かるが、それは受け取る側からすればやっぱり暴力としての構図が十分成り立っている。(デモしたのは)通路で公共の空間だし、会場へのルートとして一定程度の強制性、優位性があるなら、これは暴力にあたる」と加えた。
子ども向けの活動、かつ年齢などに配慮がないのは問題だと指摘したのは起業家・投資家の成田修造氏だ。「子供の判断力、いろいろな物事を判別するという能力というのは、様々な能力の積み重ねによって育まれるもの。それが育まれてない段階で、非常に極端な情報を出してしまった時に、心的な影響があり得ることはどんな活動家であっても当然考慮すべき。今回で言うと、小さい子供たちにそういう過激な情報を見せるのは、悪で負の影響というのもあり得る、それも考慮した上でやらないといけない。子供が情報をどのように判別していくかは当然、神経発達のレベルによって違う。それによって学校のカリキュラムもできている。どのように情報提供していくことがいいのか、極端な手法ではなく、様々なステークホルダーとともに議論していくからこそ、社会構造は変わっていく」と投げかけていた。(『ABEMA Prime』より)