去年、堺市の歯科診療所で特別支援学校の17歳の生徒が親知らずを抜くために全身麻酔を受けた後、心肺停止となり死亡した事故で、警察は男性歯科医師ら2人を業務上過失致死の疑いで書類送検しました。書類送検されたのは堺市の「重度障害者歯科診療所」に勤務する55歳の男性歯科医師と34歳の女性歯科医師(麻酔認定医)です。警察によりますと、2人は去年7月、大阪府内の特別支援学校に通っていた富川勇大さん(当時17)の親知らずを抜歯するために全身麻酔をした際、呼吸不全が起きているのに肺に酸素を送るチューブが正しく入っているのを確認しなかった疑いなどがもたれています。

富川さんは一時、低酸素状態で心肺停止となり、およそ一か月後に亡くなりました。◇父親が話してくれた当時の経緯去年、MBSの取材に対し、勇大さんの父親は、無念の思いを語っていました。―――治療の際にどのようなことが起きたと聞いていますか? 私が聞いたのは、麻酔をしてすぐに気管支痙攣(きかんしけいれん)というのが起きましたと。気管支痙攣というのはちょくちょくあることみたいで、それを治すために気管支拡張薬という薬を投与して、気管支を広げてそれを治すための動きをしていたということです。ただ、それがどうもうまいこといってなかったみたいで、妻が言っていたのですが、ちょっとこう治療室の方がバタバタしだしていて、妻の「何かあったんですか?」というような問いに対しても「とりあえず待っていてください」というような話だけ。状況の説明がなくて、待たされているうちに救急車が2台ほど来られて、救急隊員の方が「お母さんどちらにいますか?」という話を聞いて、そこから「いまこういう形になっている」という話を受けて、救急医療センターに搬送されたという形です。―――どのような状態で搬送されたのですか? 心肺停止になって、救急車の方に乗り込むとき、顔面蒼白になっていて、妻はこれはひょっとしたら助からないような状況に陥っているのではないかということをそこで実感してしまって、不安なまま救急車に乗って…。 勇大さんの父親は、「成長している姿を僕らに見せてくれていただけに、この事故というのが本当に悔やむというか悔しい、そういう思いがあります」と話していました。