「一時でも入社を考えていた自分が情けなくなります」
【画像】社内で女帝として恐れられる稲葉優子会長(55)
缶詰製造大手・いなば食品にこの春入社予定だった女性が嘆く。今週もいなばに嵐が吹き荒れる。
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小誌はこれまで数週にわたっていなば食品の抱える問題、疑惑を報じてきた。その嚆矢は新入社員に対する悪辣な仕打ちだった。
新入社員が入れられた社宅
「社宅として案内されたのが雨漏りのするようなあばら家。会社のHPでは新築のマンション風のキレイな社員寮をアピールしていたのに、蓋を開ければこの有様。信用できない会社だと思い、入社を辞退しました」(同前)

大量の入社辞退者を生んだこの“ボロ家ハラスメント”は、稲葉敦(あつ)央(ひろ)社長(70)の妻で、社内で女帝として恐れられる稲葉優子会長(55)の指示で行われた。

「社内は対応に追われています。ゴールデンウィーク中も社長自らお詫び行脚に出向き、辞退者のご家族に土下座をすることもあったそうです。社内では辞退者向けの説明会を開催することや補償についても検討されている」(現役社員)
この問題で連休後に大きな動きがあった。5月15日、静岡労働基準監督署がいなば食品静岡本社に調査に入り、是正勧告を出したというのだ。
「抜き打ち検査ではなかったので、綿密な準備を整えた社長が現地に出向き、弁護士同伴で対応した」(同前)
労基署の調査が入った理由はなんだったのか。
「入社後の待遇や労働時間などの条件を示した労働条件通知書を新入社員に未交付だったことを追及された。総合職で採用案内を出しながら、内定段階で一般職に突然変更したことも問題視された。入社直前に労働条件を会社側が変更したことは完全に違法で、そこを指摘されました」(同前)
会社関係者が続ける。
「人事担当者は労働条件通知書の必要性を認識していたが、社長が『必要ない』と突っぱねていた。労基署にこの点を問われ、社長は認めざるを得なかった。痛いところを突かれてしょげかえっていました。6月3日までに是正報告書の提出が求められており、細かい内容について社長と法務部が協議中です」
この対応で静岡本社を訪れていた敦央社長は、現場にある指示を出したという。
「生産ラインの徹底した清掃と草刈りなどが社員に命じられました。というのも、インフルエンサーが社内からのタレコミとしてネット上に公開した不衛生な工場内の写真がバズってしまい、会社の衛生管理に対する疑問の声が噴出したのを気にしているのです」(静岡工場の従業員)
いなば食品は5月15日付でHPを更新。〈弊社の製造するペットフードの衛生管理及び品質管理について〉と題し、工場内でどのように製品が作られているかを写真付きで紹介し始めた。
「環境整備が終わった後、社長は工場内の写真を撮ってまわっていました」(同前)

かように敦央社長が神経質になるのも理由がある。
「実は、5月28日に今度は静岡市の保健所の担当者が工場を訪れる予定がある。行政も文春報道やネットの声を無視できないようです」(同前)
いなば食品に労基署の調査について尋ねたが、回答はなかった。
ついに当局のメスが入りはじめたいなば食品。ツナ渡りの日々が続く。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年5月30日号)