財布、タオル、手帳など園内にさまざまな落とし物が落ちているディズニーランド。なかには“扱いに困ったもの”も…。
【写真】「どうして私に渡してきたのか。その理由はわからない」ディズニーランドのヤバすぎる落とし物
8年間、ディズニーランドのキャストとして働いた男性が驚いた「ヤバすぎる落とし物」とは? 笠原一郎氏の書籍『ディズニーキャストざわざわ日記――“夢の国″にも××××ご指示のとおり掃除します』(三五館シンシャ)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
ディズニーランドのキャストも楽じゃない…。写真はイメージ getty
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オンステージを歩きまわっているとじつにさまざまなものが落ちている。
財布、タオル、手帳、名刺、靴下、マフラー、手袋、ヘアゴム、バンソウコウ、傘、カギ、キーホルダー、お菓子、錠剤、ペンダント、修学旅行のレジュメ、お土産のリスト……。
カストーディアルキャストは落とし物を拾うと、原則として一番近くにあるアトラクションのキャストに、落ちていた場所を伝えながら、現物を手渡す。また現金が入った財布などの貴重品は「メインストリート・ハウス」まで届ける。これがルールである。
ところが、それが落とし物なのか、捨てた物、あるいは要らない物なのかの見極めはなかなか難しい。
たとえば、なんの変哲もない黒くて細長いヘアピンである。これって落とし物なのだろうか。いや、これは「落ちた物」だろう。
この種のヘアピンはわりとよく落ちていて、最初は扱いに迷った。念のために100円ショップに赴き調べてみると、40本ほど入ったものが売られていた。
常識的に考えて、こうしたヘアピンを落として、遺失物として届け出る人はいないと判断し、私はゴミとして捨てていた。同僚も同じようにしていた。
あるとき、東京ディズニーランドがオープンした初期から働き、ベストセラー本も著している先輩のKさんがこう書いているのを見つけた。
「ヘアピン1個でも届けなければならないんですよ。ディズニーランドならみんな間違いなく届けます」
ええっ、まさかKさん、それって私が捨てていたようなヘアピンじゃないですよね!?
ほかにも、パークのパスポート、カメラのキャップ、イヤリングなど、気づいたゲストが「これ落ちていました」と渡してくれることもよくあった。
ある日、東南アジア系の女性が近づいてきた。手には透明のビニール袋を持っている。
「どうされましたか?」
そう声をかけたが、言葉がわからないのか、あいまいに首をかしげ、そのまま手にしていたビニール袋を私の目の前にかざした。
ビニール袋の口は軽く結ばれていて、なかに黄色がかった液体が入っている。
彼女はそのビニール袋を私の前に差し出したままだ。受け取れ、ということなのだろう。
片手で口のところをつかみ、もう一方の手でビニールの底の部分を支えて、受け取った。
生温かい。
……まさか。
彼女はなにやら気まずそうな表情をしている。私が受け取ると軽くほほ笑んで、その場を立ち去った。
……いや、そんなことはないよな。
急に胸がざわざわしてきた。
私はすぐ近くのレストルームに駆け込んだ。ビニール袋の口をほどき、なかの臭いを嗅いでみる。

鼻をつくアンモニア臭。間違いない、尿だ。
個室に入り、なかの液体をすべて便器に流す。ビニール袋は畳んでゴミとして処理した。
それにしても、なぜ彼女はオンステージ上でビニール袋に入った尿を持っていたのか。そして、それをどうして私に渡してきたのか。その理由はわからない。
“大”じゃなくて“小”で済んだのが不幸中の幸いだったのか。とんだ“落とし物の話”であった。
〈元キャストが語った「ディズニーランドに“ネズミ”が出た」ときの対処法〉へ続く
(笠原 一郎/Webオリジナル(外部転載))