追跡取材班が向かったのは、深夜の富山県魚津市。暗闇の中、ある建物に向かう人影が…。さらに、深夜から駐車場に集まり始めた車は、夜明けとともにほぼ満車に。中に入ってみると、廊下には、長い行列。その先には何が?
一方、千葉の山の中に、「日本一行きにくい名店」とうわさの行列食堂があります。それでも食べたい伝説のご当地ラーメンとは?
なぜ、こんな所に?行列食堂のヒミツを追跡します。
富山県魚津市に、深夜からできるナゾの行列。県外からも人が訪れています。
なんと先頭に並んでいた家族は、前日の夜9時に茨城を出て、ここに着いたのは深夜3時だといいます。
実はここ、魚津港に隣接する「海の駅」で、この日は毎月第2・第4日曜限定の「朝市」の開催日。富山湾で獲れたハタハタやメバル、深海魚のゲンゲなど、新鮮で珍しい魚が格安で並ぶため、毎回多くのお客さんが詰め掛けます。
しかし、行列のお目当ては別にあります。
午前6時半。いよいよ、待ちに待った瞬間が訪れます。
深夜から並んでも食べたかったのが、高級食材「紅ズワイガニ」を丸ごと1杯分使った「カニ三昧(ざんまい)定食」です。
ダイコンやハクサイ、ゴボウと一緒に大きな紅ズワイガニの足を入れてだしを取った究極のカニ汁。カニの旨味が詰まったカニミソとカニの身を炭火でじっくり焼いた甲羅焼き。そして、カニの炊き込みご飯の上に、さらにカニのむき身を乗せた、贅沢なカニご飯。まさにカニ三昧ですが、お値段は、なんと1200円です。
この日、朝市で売っていたカニは1杯2500円のため、かなりのお値打ちです。
定食は、仕入れにより数10食限定。この日は30食という狭き門。そのため、毎回深夜から行列ができます。
あの茨城から来た家族は、どうなったのでしょうか?
この男性は、甲羅焼きのミソをカニの炊き込みご飯の上にのせます。
去年11月に始まった「カニ三昧定食」ですが、なぜここまで人気なのでしょうか。その仕掛け人・朝野聡さん(52)は、次のように話します。
人気の秘密は「とれたての紅ズワイガニしか使わない」ことです。そのため、水揚げがない時は定食を出せない日もあります。
朝市の前日、朝野さんは漁港へ向かいました。カゴいっぱいの紅ズワイガニが無事、水揚げされました。
朝野さんも、ほっと一安心です。
浜に上がったカニは、うまみや鮮度を保つため、すぐ塩ゆでにします。
お客さんに喜んでもらうため、カニ三昧定食は「赤字覚悟」だといいますが…。
次に向かったのは、千葉県の茂原駅です。
この辺りに、山の中にもかかわらず、行列ができるラーメンの名店があるといいます。
さらに…。
我々は「その店を知っている」という地元のタクシー運転手に連れて行ってもらうことに。しばらく走ると家が減り、山の中へ入っていきます。
うっそうと生い茂る木々。右手には、高い山。いくつかのカーブを抜け、およそ20分ほどが経過した時でした。
房総半島の山の中、峠の中腹にポツンとたたずむラーメン店。ちなみに、今回のタクシー料金はおよそ4000円です。
11時のオープンが近づき、入口には続々と人が…。その数は、40人以上です。
千葉三大ラーメンとは「勝浦タンタンメン」「竹岡式ラーメン」そして、この店の「アリランらあめん」と言われています。
ここまで来ても食べたい…。それが、アリランらあめんです。タマネギがたっぷりのり、濃い色のスープが目を引きます。
今回、頂いたのは、アリランらあめんにチャーシューが乗った一番人気「アリランチャーシュー」です。
スープは、後から少し辛みが追ってますが、タマネギの甘さ、チャーシューの甘さがそれをまろやかにしてくれます。麺はつるっとモチモチしています。
このアリランらあめんの生みの親が、店主の古市豊さん(72)です。
注文を受けてから、ニンニクとタマネギを炒め始めるのがこだわりです。
炒めたタマネギに加えるこちらのスープこそ、アリランらあめんの命。その仕込みは、毎朝8時から行われます。
鍋の中には、豚骨や昆布、千葉の海で獲れたカタクチイワシの煮干しがたっぷり。こだわりは、大量のネギとタマネギ。ヘタごと使います。
煮込むこと、なんと8時間。完成した黄金色のスープ。炒めたタマネギにこのスープを加え、肉のうまみが詰まったチャーシューの煮汁に、自家製のラー油を加え、独自のピリ辛スープに仕上げます。
そして、店主が「コシが違うんですよ」と話す麺。製麺所は店とは別につくったそうです。
特製の生地をロール状に重ねて圧縮。それを7回繰り返します。
ゆで上がった自家製中太麺にスープをたっぷり注いで完成です。
しかし、なぜ人里離れたこの峠に店を開いたのでしょうか?
実は54年ほど前、古市さんは同じこの場所で、ラーメンの屋台を出していました。
事業で失敗し、借金返済のため働きずめだったといいます。
その2年後、屋台ラーメンは評判になり、再出発の地であるこの峠に店をオープン。
「アリランらあめん」は、韓国の民謡に出てくる「アリラン峠」から名付けたといいます。
「食べる人に元気になってほしい」という思いが込められたラーメン。妻・展枝さんと二人三脚で店を切り盛りし、今では、「アリランらあめん」は多い日で400杯が売れ、支店も開くほどになりました。
そんな古市さん、伝えたいことがあると言います
2階建て5LDKは、まさに“ラーメン御殿”です。車庫には…。
毎年6月には、ここに地元の住民達を呼んで、祭りを開催しています。
千葉の三大ラーメンと呼ばれるほど、“ラーメンドリーム”を叶えた古市さん。
しかし2カ月前、40年間ともに店を支えてきた最愛の妻・展枝さんが他界したのです。
必死に看病を続けた古市さん。妻のこんな言葉が心に残っているといいます。
妻と作ってきた「アリランらあめん」。古市さんはきょうも、この峠でそのラーメンを作り続けます。