3月に閉店した鹿児島市の公衆浴場、太陽ヘルスセンター。施設が閉店の理由の1つにあげたのが男湯での「迷惑行為」でした。ブラックリストには驚くべき人数の写真が…。公衆浴場での不適切な性的行為はどうすれば防げるのか?考えます。
news every.かごしまは、この問題を閉店前から取材していました。太陽ヘルスセンターでは十年以上前から問題が深刻化、禁止する掲示も効果はありませんでした。

迷惑行為の場所に狙われたのが大浴場の奥にあるプール。そして…
(内田直之キャスター)「不適切な利用によって問題となっていたのが浴室の2階にある蒸気サウナです。去年からサウナは閉鎖され使えない状態になっています」死角になりやすい場所で繰り返され、一般の利用客が遭遇することもあったようです。蒸気サウナの閉鎖、プールの窓やドアを外すなど対策しましたが問題は解消しませんでした。施設は迷惑行為をした人のブラックリストをまとめていました。
(太陽ヘルスセンターのスタッフ)「迷惑行為という形でぼかしているがサウナの中で抱き合ったり、いかがわしい行為に及んだり。人数として把握できないぐらいですね」年配の人が多いようです。警察に通報しても現行犯でなければ検挙は難しい状況でした。
(太陽ヘルスセンターのスタッフ)「だいたいほとんどの客が仲良く喋っていただけ。何もしてないとアピールする。当然、現場をおさえる必要がある。こういうことをしていたのであなた方は出入り禁止になりますと話さないと相手も納得しない」迷惑行為を見つけては誓約書に署名してもらう。地道な作業でした。
一般の利用客も目撃することが珍しくなかった「不適切な行為」。(利用客)「目撃しました。許せない行為ですね」(利用客)「癒しの場。浴場は。違う方面で利用されるのはいかがなもんか」取材を進めると迷惑行為の多くがインターネットをきっかけに行われている事がわかりました。(内田直之キャスター)「うわすごい。かなり多いですね」
ネット上で相手を探して落ち合う方法です。書き込みは太陽ヘルスセンターだけでなく様々な施設が対象になっていました。こうした問題は全国的なものだと言います。
(鹿児島県公衆浴場業生活衛生同業組合・永用八郎副理事長)「一般公衆浴場なので色んな人がいる。当然、子供もいる。営業妨害ですよね。ビックリするわけですよ。お客さんは」県内でも複数の施設で確認されていましたが相手は客。取り締まりは簡単ではありません。(鹿児島県公衆浴場業生活衛生同業組合・永用八郎副理事長)「LGBTを否定しているわけではない。行為自体をされるのが困っているわけです」太陽ヘルスセンターの責任者はこう訴えます。(太陽ヘルスセンター・種子島登さん)「色んな意味でのサポートも含めてしかるべき条例を制定するとか。県も鹿児島市も真剣に考えてもらえればありがたいと思う」
そもそも公衆浴場が守らなければいけないルールは国が定める公衆浴場法に基づく県や鹿児島市の条例で示されています。気になったのがその中にある「風紀」という言葉。鹿児島市の公衆浴場を監督する市の生活衛生課を訪ねました。
(内田直之キャスター)「風紀という言葉はどういう事を表しているんでしょうか?」(鹿児島市生活衛生課・萩原信一課長)「公衆浴場法。法律の中で男女の混浴の禁止を意味しています」昭和23年にできた法律では今回のような迷惑行為は「風紀を乱すもの」とはっきり位置付けられていません。(内田直之キャスター)「随分前にできた条例ですから。そうした行為を見つけた時に注意を促せるような文言が入ってもいいのでは?と思います。いかがでしょうか?」(鹿児島市生活衛生課・萩原信一課長)「そこについては非常に難しいんですけど。国の方が別途法律で定めた場合は鹿児島市は必要な措置を考えなければならないと感じている」
同様の質問を県の生活衛生課の担当者にもしましたが…(鹿児島生活衛生課・迫田豊秋課長)「国の方で何かしら見解が示されればその内容も考慮して条例についても改正するのか検討する」法律が変わらない限り条例の改正は難しいとの考えでした。
施設が注意を促す際の拠り所を作れないか?鹿児島大学の行政法の専門家は“風紀”についての解釈が異なりました。(鹿児島大学・宇那木正寛教授)「色んな解釈があるが基本的には国語的な意味。国語的な意味も時代によって変化する。異性間だけでなく同性間のそうした行為も風紀を乱す行為として範疇に入ると考える」さらに法律と条令の趣旨についてはこう指摘します。(鹿児島大学・宇那木正寛教授)「法律はオールジャパンで定めなければいけない基本はあるが詳細は自治体の必要性に応じてアレンジしていく。全国一律にやるというのがむしろおかしい。それだったら法律で全部定めればいい。細かい所まで。地域の実情がある。それに応じて内容を条例で定める。今の地方自治法の法体系で求められている対応だと思う」
(内田直之キャスター)「鹿児島市内の公衆浴場は、ほぼすべてが温泉。低料金でサウナも楽しめるのが特徴です。実はこれが迷惑行為が起きやすい状況にもなっているようです。これはまさに地域の実情と言えるかもしれません。条例が改正されたら即、問題がなくなるという単純な話ではありませんが公衆浴場は鹿児島の大きな観光資源です。どうやって温泉の文化を守っていくのか。みんなで考える必要があるなと感じました」(news every.かごしま 特集「ないごて!?」2024年4月23日放送)