関西大学北陽高校といえば、阪神タイガースの岡田彰布監督や芥川賞作家で芸人の又吉直樹の出身校として関西ではよく知られている。そんな文武両道の名門校が今年4月初旬、大きな騒動に包まれたのは記憶に新しい。
「ハンドボール部の合宿中に起きた出来事です。食事に問題があるとして、顧問が『責任を取れ』と、生徒の髪の毛を丸刈りにする指導を行ったのです。生徒や保護者がマスコミに告発して、ようやく明るみになりました」(在阪メディアの記者)
学校側はハンドボール部の顧問に聞き取りし、生徒への暴行や暴言などを概ね認めたため、顧問とコーチは口頭で厳重注意にとどめている。現在は何事もなかったように部活動は再開しているという。
告発した保護者の一人はこう憤る。
「問題を起こした顧問は、その日の気分次第で態度が変わります。機嫌が悪いときに生徒がエラーをしたら、頭を叩いたり腹を叩いたりしていた。試合中にミスしたときも、胸ぐらをつかまれて『死ね』と暴言を吐かれて、『顔も見たくないから、はよ帰れ』と言うのが口癖だったと複数の部員が証言しています。実は、部員たちが本当に望んでいたのは顧問の辞任。ただし、学校側は(丸刈りに加担した)コーチも同罪と学校側は判断したようです」
2人は現在も顧問とコーチという立場を継続、ハンドボール部の指導を続けている。
「マスコミで報じられると顧問は立場を一変させて、部員と保護者に対して過去の指導を謝罪しました。それ以降、生徒の間では顧問が『怖いぐらい優しくなった』と噂されています。ハンドボール部はお洒落な髪型が禁止でしたが、今回の件で髪型も緩和されてツーブロックも許可されるようになった。いま問題視されているのは、校長が4月下旬に全校生徒の前で『坊主の件は、生徒が決めてやったこと』と説明したことです」
バスルームで坊主頭にされる画像は、多くのマスコミが報じた。この場面は昨年3月、合宿中にカップ麺を食べなかった生徒2人に対し、罰としてコーチが坊主頭にさせたものだ。丸刈り強要は学校も認めた事実だ。それがなぜか今頃になって校長は、保護者にも「同様な証言(『坊主の件は、生徒が決めてやったこと』)をした」(前出・保護者)ともいう。
一方で、この問題が明るみになるのを阻害した「大人の事情」が、いま保護者の間で問題視されている。
そもそも、顧問の傍若無人とも言える指導については、生徒と保護者が告発する以前から一部の保護者も把握していた。今回の報道を経て、大半の保護者が再び口を閉ざし始めている。そこには問題に蓋にせざるを得ない「思惑」が見え隠れする。
「北陽高校はハンドボールで強豪ですが、大阪では4番手や5番手クラス。トップクラスではないんです。つまり、北陽高校のアスリートクラスに入ってくる子どもたちはプロを目指すのではなく、スポーツ特待生として関西大学や他の大学への進学を考えている子が非常に多いんです。特待生となるには顧問の推薦が必要不可欠。進学に響くので表立って顧問とは保護者も対立できないのです」(北陽高校関係者)
在阪の運動部記者もこう解説する。
「ハンドボールはマイナー競技なのでスポーツ特待で進学できる大学が限られています。U-21の日本代表コーチなども歴任した方が顧問なので、ハンドボール業界において相応の影響力があるのです」
今回の報道を受けて、日本ハンドボール協会の対応は早かった。「(ハンドボール協会は)2013年から体罰やハラスメント問題に取り組んでおり、暴力を容認しない立場を取る」と、ホームページ上で発表している。
その上で、「現在、全国高等学校体育連盟と連携のうえ事実関係の調査を実施しており、その結果を踏まえて改めて当協会としての対応を公表することを予定しております」という。
再び保護者がこう語る。
「もう一つ、学校には告げてない事実が一つあります。アスリートクラスは土曜日の授業がないため、学校側が午前中のクラブ活動を禁じているのですが、監督はバレないように関大や他校で活動をしていました。しかも、監督が部員に“言うなよ”と口止め工作さえしていたのです」
子どもたちに平気で嘘をつかせるような大人が、果たして口頭だけの注意で心を入れ替えるのだろうか。
騒動の対応などについて、関西大学の広報課に問い合わせるとこう答えた。
――なぜ部活動の指導を顧問は継続しているのか。口頭注意の中身は何か。
「本件は3月に発覚し、2人に対しては校長から口頭での厳重注意をしてます。その後、本人も反省して心を入れ替えたように見えるので、クラブ活動は継続という形になりました。坊主頭にした生徒は、合宿中の2人と、もう1人であると確認しております。厳重注意の中身までは分かりません」
――暴行や暴言もあったとされる。
「お尻を蹴る。胸ぐらを掴む。掌で叩くという行為のほか、暴言と捉えかねない指導もありました」
――校長が保護者や全校生徒の前で「坊主頭は生徒が決めてやったこと」と発言したと一部の保護者が証言している。それは事実か。生徒自らが反省を表すため、坊主頭にするとは思えない。坊主頭にさせたという当初の発表とは異なるのではないか。
「保護者と全校生徒に向けて、校長は4月下旬に説明の機会を設けたのは確かです。ただ、保護者向けの中身に関しては、生徒個人に関わる内容なのでお答えできません」
果たして北陽高校は変わることができるのだろうか。
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