神戸市長田区のラーメン店で、店主だった特定抗争指定暴力団「山口組」傘下組織の余嶋学組長(当時57歳)が射殺された事件は、22日で発生から1年を迎える。
店舗近くの防犯カメラに映った「黒服の人物」が事件に深く関わっているとみられ、現場からわずか約40秒で立ち去ったことが映像などから判明。犯行の様子や現場の状況から、捜査関係者は「強い殺意や計画性の高さがうかがえる」とする。
事件は昨年4月22日午前、同区東尻池町のラーメン店「龍の髭(ひげ)」で発生した。買い出しから戻ってきた女性従業員が、厨房(ちゅうぼう)付近で倒れている余嶋組長を発見。脳幹部断裂による即死で、頭部には銃弾が残っていた。
捜査関係者によると、捜査線上に浮かんでいるのは、店舗入り口をとらえた防犯カメラに映っていた人物だ。黒色の服につば無し帽、眼鏡をかけた男とみられ、一人きりで入店し、間もなく店外に出る姿が確認されている。
当時の状況から考えられるのは、どのような犯人像か。
事件の鍵を握る「黒服の人物」が店に入ってから出てくるまでは約40秒とごく短時間。女性従業員が買い出しに行くタイミングを見計らった可能性があり、強い殺意を持って店を訪れたことがうかがえる。
土曜日の昼間に飲食店で店主を銃撃するという大胆な犯行の一方で、周到に計画したであろう跡もみつかっている。
銃撃後、容疑者がたどった逃走経路は明らかになっていないが、捜査関係者によると、県警は逃走に使用したとみられる車両を岡山県内で押収。そのナンバープレートは偽装されていたという。捜査をかく乱する狙いがあったとみられる。
被害者が暴力団関係者だったことから組同士の抗争の可能性も取り沙汰されているが、解明できないまま発生から1年を迎えることとなりそうだ。
4月中旬、かつて牛テールラーメンを名物ににぎわった店の看板は外され、シャッターは閉まっていた。関係者によると、事件発生から約2か月後には、店内の設備はすべて撤去されたという。