能登半島地震による火災で焼失した石川県輪島市の観光名所「朝市通り」跡で1日、店を営んでいた2人が3カ月ぶりに再会した。
「生きとったんか」「無事で良かった」。野菜の露店を出していた寺下美代子さん(81)と、向かいで和菓子店を経営していた塚本民子さん(72)は抱き締め合い、涙を流し喜んだ。
寺下さんはこの日、元日の火災に巻き込まれて亡くなった隣人の金物店の女性とその息子を供養するため、焼け野原となった朝市跡でがれきを踏みしめていた。地震発生時刻の午後4時10分ごろ、かつてあった女性の自宅跡で手を合わせた。
「冬には温かいコーヒーをくれた。とてもいい人だった。どっかにおってくれたらいいな。出てきてくれないかな」と寺下さん。女性とは40年の付き合いで、女性が好きだったという黄色のスイセンの花を供えた。
帰ろうとしたその時だ。向かいから「美代子さん」と呼ぶ声がした。塚本さんだった。
「無事だったんだね。顔見られてうれしい」。地震前日の大みそかの朝に「今年もありがとう」と言葉を交わして以来の再会。互いの安否さえ分からないままだったといい、涙を流して喜び合った。寺下さんは金沢市に一時避難した後で輪島市内の自宅へ戻り、店の2階に住んでいた塚本さんは仮設住宅に身を寄せる。
「がれきがなくなったら朝市に戻ってくるやろ」と尋ねた塚本さんに、「分からない」と顔を曇らせる寺本さん。塚本さんは「生まれ育った所だもの。最後の最後まで諦めたらあかんよ」と優しく声を掛けた。
女性の自宅跡に向かって手を合わせ、「気を付けてね」と言葉を交わした2人。寺下さんは塚本さんと別れた後、「朝市が戻ったらやっぱりお店を出したいな」と語り、車で帰路に就いた。