山梨県が掲げる富士山登山鉄道構想に反対する富士吉田市の関係者らによる市民団体「富士山登山鉄道に反対する会」が26日、設立された。
構想の白紙撤回を求める署名活動を始めたほか、ホームページやSNSで主張を発信していく。団体は鉄道の敷設を「実現不可能で、富士山を傷つける」などと訴えており、県が今後構想をどのように進めていくか注目される。(木村誠)
「ご神体である富士山をこれ以上、傷つけてはならない」
富士吉田市内で開かれた設立記者会見。団体代表の上文司厚・北口本宮冨士浅間神社宮司は語気を強めた。
団体は、北口本宮冨士浅間神社、富士五湖観光連盟、富士山吉田口旅館組合、一般社団法人「カノエサル」、富士吉田商工会議所青年部の関係者らが発起人となった。顧問には同市の、堀内茂市長や市議、同観光連盟の堀内光一郎会長(富士急行社長)が就任した。
団体では、署名活動をオンライン署名サイト「Change.org」と、署名欄のついたチラシを配布して始めた。年内をめどに取りまとめ、県に提出する予定という。専門家を呼ぶなどして勉強会を開くことも検討している。
県が2021年にまとめた登山鉄道構想では、富士スバルライン上に軌道を敷設して次世代型路面電車(LRT)を走らせる。概算整備費は約1400億円、年間利用者数は約300万人を見込む。
団体では、鉄道の敷設には大規模な開発が必要で、環境破壊につながると指摘。来訪者数の抑制などは電気バスでも可能だとしている。
登山鉄道構想では通年での観光を目指している。団体は、富士山は「神聖な山」で夏季のみ登山が許されており、夏以外は麓から富士山を望んで遥拝(ようはい)すべきだとし、構想は世界文化遺産としての価値をおとしめるとも主張している。
麓の自治体で反対を表明しているのは富士吉田市のみで、吉田口旅館組合の井上義景事務局長は「住民が声を上げれば変わっていくことができるのではないか。市民同士の声を高めていく」とする。団体では、賛同会員や活動資金の寄付を募っていくという。
上文司代表は「鉄道そのものの技術、あるいは環境の問題から、登山鉄道はだめだということを万人に至るまで浸透させることを目指す」と述べた。
堀内市長は26日、「住民から反対の声が出てきたことを大いに歓迎する。反対の輪が広がることを期待している」とコメントした。
長崎知事は25日、記者会見で団体設立について問われ、「様々な議論が様々な観点から交わされることが重要だ。多くの県民的な議論をしっかり戦わせ、反対、賛成の理由を照らし合わせながら、最適な解を導き出したい」と述べた。