〈「酔ってクソを漏らす客も…」水商売で働く女性たちが驚いた「ヤバい客」の正体〉から続く
「性病になっても客にうつしてやりたいから出勤する(笑)」とツイートする女性も……。近年、日本で性病に罹患する人が大量に増えている理由とは? 風俗関係者を直接取材したライターの佐々木チワワ氏による新刊『ホスト!立ちんぼ!トー横! オーバードーズな人たち ~慶應女子大生が歌舞伎町で暮らした700日間』(講談社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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「性病プリンセス」を自称する女性も……日本で性病感染者数が増えまくる理由とは? 写真はイメージ getty
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日本で梅毒の感染者が急増している。国立感染症研究所によると、(2022年)7月の時点で感染者数は全国で6000人を超え、昨年の同じ時期の1.7倍になっているという。このままのペースで増えると、現在の統計を取り始めた1999年以降で初めて、1万人を超える可能性が高い(編集部注:2022年の梅毒感染者数は1万人超え。2023年も過去最多の感染者数となった)。
年代別での調査結果を見ると、男性は20~50代と全体的に感染者が出ているなか、女性は20~24歳の数字が突出している。
全国で最も感染者が多いのはもちろん東京で、歌舞伎町の住人たちは、いつ自分が罹患してもおかしくないと戦々恐々としている。
「ぶっちゃけ、性病検査って店によっては義務じゃないのよ」
そう語るのは歌舞伎町のデリヘルで働くマドカ(仮名・22)だ。
「高級ソープとかはS着(コンドーム着用)でも性病検査が毎月必須な店もあるけど、安いソープとかデリヘルだったら『やっといてね』くらいの軽い感じだったり、感染しているかどうかも自己申告だったりする。
なんなら、『性病になっても客にうつしてやりたいから出勤する(笑)』とかツイッターにつぶやいてる風俗嬢もいるくらいだしね……。客に対しての性病検査をするところなんて聞いたことないし、ホントに風俗業界は性病に対してユルい」
SNS上には最近、そんなユルさを象徴するようなアカウントも現れた。川崎の某ソープランドに在籍している嬢が、インスタグラムのストーリーに「梅毒なったかも」「いま淋病とクラ(ミジア)とコンジローマは確定してる」などと投稿。彼女は、自身のことを「性病プリンセス」と称した。
プリンセスが在籍するソープの別の嬢が店舗側に確認すると、投稿をした後も変わらず出勤し続けていることが発覚した。彼女の存在は、風俗業界に携わる人間だけでなく、客の男たちをも震撼させた。
その後、性病プリンセスは在籍店舗を次々と変更。都内のデリヘル→ホテヘル→チャイデリ(中国人向けのデリヘル)と移り、そのたびにSNS上で特定&拡散が行われ、ついには彼女を性病感染者と知りながらも店舗に紹介していたスカウトらしき人物も特定された。同業者からすれば、性病感染のまま働く嬢の存在は危険なので当然と言えば当然の流れである。
次は自分がプリンセスを指名したことのある客に当たることになるかもしれないと、二次感染を恐れる女性も相次いだ。
スカウトのマサト(仮名・28)が言う。
「性病になって高級ソープを出勤停止させられると、すぐに別のデリヘルに移るという子はいる。キャバクラに行ったって枕営業する子もいるし、パパ活なんて個人同士だから当たり前に高リスク。歌舞伎町や川崎、吉原だけじゃなくて、港区でも梅毒が流行っていると聞きます。
女の子を責める男は多いけど、客が性病をバラまいてることだってある。風俗嬢や客に、直近1ヵ月の性病検査表の提出を義務付けたりするしか方法はないと思います。でも、そんなことすれば売り上げは間違いなく落ちるから、店側はやりたがらない。いまのままなら、性病は増える一方でしょうね」

夜職の人のなかには金銭的に困窮しており、それらしい症状が出ていても生活のために働き続けているケースもある。梅毒をはじめとした性病を減らすためには、コロナ禍で習慣づいた手洗い・うがい・マスクに加え、定期的な性病検査もルーティン化する必要性があるだろう。
(佐々木 チワワ/Webオリジナル(外部転載))