「ルフィ」を名乗る広域強盗事件をめぐって、’23年1月に東京・足立区で起きた強盗未遂事件で起訴された山田李沙被告(27)の初公判が2月21日、東京地裁(坂田威一郎裁判長)で開かれた。
特殊詐欺グループの一員としてフィリピンから強制送還された山田被告は、’19年11月に東京都内の60代と70代の計2人からキャッシュカードを盗み、現金計約414万円を引き出した窃盗罪に問われ、’23年8月に懲役3年の実刑判決を受けた。
今回の足立区の強盗未遂事件についても「間違いありません」と起訴内容を認め、入管施設での幹部たちの生々しいやり取りや脱獄計画について明かしている。
広域強盗事件では特殊詐欺グループの幹部である渡辺優樹被告(39)、藤田聖也被告(39)に加え今村磨人被告(39)が逮捕されている。山田被告は収容されていた入管施設で渡辺被告らと生活を共にしていた。
「山田被告は渡辺被告、藤田被告の下で掛け子をしていました。グループは’19年にフィリピン当局に摘発されましたが山田被告は逮捕されず逃亡生活を送っていました。しかし、帰国したいと考えるようになり日本大使館に出頭。
首都マニラ近郊にある入管施設のビクタン収容所に収容され、そこで渡辺被告らと再会しました。収容所から渡辺被告らが強盗の実行犯に指示を出し、山田被告は資産状況などを調べるために高齢者の自宅にアポ電(アポイントメント電話)を掛けていたのです」(裁判を傍聴した全国紙社会部記者)
山田被告はビクタン収容所について、
「殺人犯が自由に包丁を持っていた。韓国人(受刑者)による殺人や中国人(受刑者)による暴動も起きて、かなりヤバい所に来たと思った」
「食料の配給はあるが、奪い合いや食中毒が頻発するため口にすることができなかった」
などと話した。国外退去を命じられた外国人が収容されるビクタン収容所で国ごとによる派閥があり孤独感を強めていった山田被告は、劣悪な環境の中で生きていくために日本人の派閥に入るしかなかったという。そこで、日本人派閥のボスとして紹介されたのが今村被告だった。
「山田被告が通された今村被告の部屋は『VIPルーム』と呼ばれ、今村被告は賄賂を渡し所長の部屋にも出入りしていたといいます。金がなければ地獄ですが、逆に金されあればその待遇は一変するようで、山田被告は今村被告からカップ麺や水、タバコなどをもらっていました。その派閥で渡辺、藤田両被告とも再会。入管施設で生き延びるために彼らの命令に従うしかなくなく、藤田被告に脅されアポ電をすることになります」(全国紙司法担当記者)
足立区の事件前日に狛江市で起きた強盗殺人事件でも渡辺被告らは起訴されており、その時の様子について山田被告は3人がもめていたとも証言した。
「(渡辺被告が事件をネットニュースで知り)今村さんに『これどーすんの?』と責めていた。今村さんは『殺すつもりはなかった』と言って焦り始めて日本側と連絡を取って『死体を回収させて』と指示しました。だけど渡辺さんが『ニュースになっているからダメっしょ』と言って今村さんはかなり焦っていました」
またビクタン収容所では脱獄計画も進行しており、
「(渡辺被告が)『脱獄計画を実行するためには大金を稼ぐ必要がある』と言っていた」
「田舎の刑務所に行けば外出ができて、(付き添いの)刑務官にお金を払うと脱獄できる」
などと彼らの脱獄計画について証言。今村被告らが関係者に賄賂を渡し、地方の刑務所に移送されるために偽の逮捕状を作らせていたことも明かした。
「山田被告は早口で聞かれたことよりも多くのことを話している印象でした。裁判長から『ゆっくりと1つの質問に対して答えるように』と注意されることが何度もありました。
まだ捕まっていない幹部がいることや関与が指摘されているJPドラゴン(ルフィらと深い繋がりがあると言われる日本人詐欺グループの通称)についても知っていることを話していました」(前出の司法担当記者)。
今後予定されている幹部たちの裁判にも「呼ばれたら全面的に協力します」と述べた山田被告。特殊詐欺グループの実態解明に大きな影響を及ぼすことになりそうだ。
後編『「デザイナーや小説家になりたい」ルフィ事件側近の女が公判でイキイキと明かした過酷な半生と将来の夢』では、山田李沙被告が裁判で語った過去と“夢”について明かす。