小・中学校の入学式で子どもたちを撮るカメラマンについて、撮影会社が約100人をX上で募集したところ、素性の分からない人たちに任せるのか、などと批判が相次ぐ騒ぎになっている。
この会社は、騒ぎになって投稿を削除し、2024年3月3日、学校関係者に心配や迷惑をかけたとX上で謝罪した。撮影については、依頼元の制作会社と協議して、すべて中止にしたことを明らかにした。
カメラマン募集は、撮影会社「イツバネット」(埼玉県朝霞市)の河戸弘太代表が2月28日に自らのXアカウントで行った。
投稿によると、首都圏の1都3県で4月8日に行われる入学式で子供たちを撮影するカメラマンを募集中だとした。まだ3人しか決まっておらず、あと100人まで大丈夫だという。経験がなくて不安なら、3月16、23日に同様な撮影があるため、河戸代表らに同行すれば教えるとした。
一眼レフカメラで人物撮影の経験があればよく、入学式最中の様子や、式前後のスナップ写真などを撮るとしていた。報酬は、1日撮影する場合は、交通費込みで3万5000円(税込)だった。別の投稿では、「許可は学校側にも取って正式に行うものになります」と説明した。
この募集には、フリーランスのカメラマンなどから問い合わせのリプライが次々に寄せられた。河戸代表は、「想像以上の反響で多くのご連絡をいただいている」として、連絡は次の週に再度すると返していた。
その一方で、投稿への疑問や批判が相次ぎ、河戸代表のXは炎上状態になった。
東京都のある市議は、信頼関係のない人が学校現場に入り込み、写真データも保有されて不安になるとして、市の担当課に話して各学校へ注意喚起してもらうことになったとX上で報告した。また、ある保護者は、PTAの役員会が開かれたときに、学校がどんな基準でカメラマンを依頼しているか確認すると明かしていた。
疑問や批判が相次ぎ、騒ぎが広がったことで、河戸代表のX投稿は、3月3日までに削除された。
その一方で、カメラマンをX上でも募集した背景について、何か事情があるのではないかとの意見も見られた。「営業写真館などもどんどん閉店したりでこの業界の人手不足も半端ない状態」「公立学校は行事日程重なるので毎年この時期はカメラマン足りなくなる」といった推測も出ていた。
募集投稿をした河戸代表は3日夕、Xを更新し、投稿を削除したと認めたうえで、「この度は小中学校の入学式の撮影案件につきまして多くの方にご心配・ご迷惑をお掛けしましたこと誠に申し訳ありません」と謝罪した。また、制作を行っている会社と協議し、撮影はすべて中止することになったと明らかにした。
続いて、経緯説明に移り、この制作会社からイツバネットに「入学式の撮影カメラマンが足りず困っている」といった内容の連絡があり、河戸代表らイツバネットのカメラマンで協力対応する予定になった。ところが、100人ほど足りていないという話を聞いたため、河戸代表のXやインスタグラムで募集することになったという。募集に当たっては、1人1人に面談して、人間性やカメラスキルを確認し、その実績なども考慮したと説明した。そのうえで、問題ないと判断した場合は、身分証を提示してもらって撮影の業務委託契約をする流れだったとした。
しかし、結果として、素性の分からない人を募集しているような誤解を与え、入学式を控えた保護者や関係者に不安を生んでしまったことなどについて、「全て私の不徳の致すところでございます」と反省の弁を述べた。
河戸代表は4日、J-CASTニュースの取材に対し、3月16、23日の撮影も含めて今回の騒動でキャンセルしたとしたうえで、「軽率だったということに尽きます」と話した。
制作会社がなぜ約100人の人手不足になったのかについては、「細かい事情は分かりかねます」と答え、自身でも、2、3年前に撮影会社を立ち上げたばかりのため、入学式の撮影状況は把握していないとした。
撮影への問い合わせや応募が把握できないぐらい来ているとし、「仕事を探している方もおられるでしょうし、特別の場で子供たちの晴れ姿を撮りたいという方もおられると思います」と話した。応募などに対しては、撮影依頼ができなくなったことなどを伝えるため、1つ1つに返信対応をしているとしている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)