結婚後もそれぞれの姓を名乗る「夫婦別姓」を認めないのは憲法違反だとして、あす、男女12人が国を提訴します。「夫婦別姓」を求めて結婚と離婚を5回も繰り返さないといけなかった“夫婦”の思いとは。
東京に住む、新田久美さん(仮名・58)。56歳の夫と大学院に通う25歳の息子の3人家族です。
新田久美さん(仮名)「何度か離婚と再婚しているんですけど、最後の婚姻日がこちら(平成27年2月14日)になり、最新の離婚日がこちら(令和元年7月5日)になります」
新田さんは、同じ夫との結婚・離婚を5回ずつ繰り返しています。もともと、夫婦別姓を望み「事実婚」をしていた新田さんたち。1994年に会社の社宅に入居するために一時的に結婚しましたが、2年後には「別姓」に戻ろうと“ペーパー離婚”しました。
しかし…
新田久美さん(仮名)「ペーパー離婚したんですけれど、その後、子どもができてどうしようと。私(新田)の名前で婚姻届を出したが夫の両親に泣かれて、慌てて離婚して慌てて(夫の姓で)結婚し直した」
その後も、「夫の扶養に入るため」「ペアローンを組むため」など必要となるたびに結婚し、夫と「同姓」になりました。ただ、夫の姓の状態で、JAXA=宇宙航空研究開発機構の研究員として働き始めると…
新田久美さん(仮名)「宇宙関連で国家間会合とか宇宙機関会合とかあるじゃないですか、そういう時にやっぱり名前が」
研究者としての論文などは、もともとの「新田」姓で実績を積み上げてきましたが、それと戸籍上の姓が違うのは国際的には通用しないことが多く、また「離婚」することに。
その後は別姓での「事実婚」が続いていますが、緊急時に夫婦関係が認められない不安も感じています。
新田久美さん(仮名)「(夫婦で)お互い何か病気したりとか、あるいは死んだりしたときに、やっぱり夫婦でなんとかしたいなって。夫が入院したら、あるいは私が入院したときに、あるいは手術をしなくてはいけなくなったときに、そのサインは私がしたいし、夫も私のためにしたいだろうなと思う」
夫婦別姓を認める「選択的夫婦別姓制度」は、今年、経団連も国に導入を求めるなど望む声が高まる一方で、「家族の一体感が失われる」「子どもがかわいそう」という反対の声もあります。
両親の「別姓」を体験してきた新田さんの息子・岳さん(25)は、「困ったことはない」と話します。
新田さんの息子 岳さん「名字に関して何か言われたりとか目線とかもなかったので、普通に学生生活を送らせてもらいましたし、僕自身はそんなに違いを感じたこともないですし、名字が変わって家族が壊れるということにイメージが湧かない」
この日、新田さんは初めて「別姓」での婚姻届を提出するため役所を訪れました。
新田久美さん(仮名)「本当は受け取っていただくのがありがたいんですけど、そうはいかなかったということで。これを裁判所のほうに提出したいと思います」
「別姓での婚姻が受理されなかった」という記録とともに、新田さんら男女12人はあす、夫婦別姓の選択肢を認めないのは憲法違反だとして国を訴える予定です。
新田久美さん(仮名)「息子の世代に残したくない。もっとしなやかな日本であってほしい。私のやっていることが少しでもこれからの世代の人たちのために選択肢を増やす一助になれば」