大阪市中央区のビルで男子大学生から金を奪おうとし、逃げた大学生を屋上から転落死させたとして、大阪府警は7日までに、強盗致死の疑いで中学2年の女子生徒(14)=同区=と3年の男子生徒(15)=堺市北区=を逮捕した。刑事責任が問われない「触法少年」に当たる当時13歳だった2年の男子生徒(14)=大阪市中央区=は児童相談所に通告した。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は7日、デイリースポーツの取材に対し、事件の経緯や背景を解説した。
府警によると、死亡したのは滋賀県草津市の大学生太田岳さん(22)。女子生徒は容疑を認め、逮捕前の任意の事情聴取に「2月にSNSで知り合った。お金を取るつもりだった」と供述。逮捕された15歳の男子生徒は「全然関係ないとは言わないが、逮捕されるようなことはしていないと思う」などと容疑を否認しているという。当時13歳の少年も含めた生徒3人は顔見知りだという。
現場付近の防犯カメラには、事件直前に太田さんがこの女子生徒とみられる女性と2人で歩いている様子が映っており、府警では「美人局」(つつもたせ)の可能性があるとみて捜査を進めている。
小川氏は「中学生たちの行動には大学生を呼び出してお金を取ろうという計画性が感じられ、美人局的な事件だと思われます」と指摘。その上で、同氏は「被害者の男子大学生はそこでお金を要求されたが、現金を出すわけでもなく、反撃をするわけでもなく逃走を図った。その逃走中、隣のビルに飛び移った後、なんらかの状況で転落して亡くなってしまった…ということですから『強盗致死』という罪で少年が逮捕された」と説明した。
小川氏は「その少女とはSNSで知り合い、何度かのやり取りの後、初めて会うことになったと考えられます」と指摘。少年たちの手口について「大学生は14歳の少女と共にビル内に入っているが、15歳と13歳の少年は先に同ビルに入り、4階で待っていた。ということは、事前に少年たちが計画をしていたことは明らか」と事件の背景を分析した。
被害者の心理について、同氏は「相手の少女が14歳だという年齢まで正確に認識していなくても、明らかに中学生くらいだとは分かっていたと思います。金銭を要求されたとしても、なにがしかの後ろめたさがあり、何とか自分で収めたかったのではないか。大学3年で就職活動も始まる頃ですし、警察に飛び込むようなことはせず、相手は中学生ということもあって、反撃せずに逃げようとしたのではないかと思います」と推測した。
こうしたケースでの対策として、小川氏は「(トラブルになりそうな相手に)呼び出された時は人気(ひとけ)のある場所で会ったが方がいい」とした一方、「今回のケースでは双方があえて周囲の目を避け、人気のない場所で会った可能性もある」と付け加えた。
同氏は「共犯者が同じビル内に先回りし、少女が1人で被害者をビル内に連れて入るなど、計画性と手慣れている感じもする。過去に“成功”した(お金を取った)ことなど、余罪もあると思われます」と補足した。