田中姓をテーマにしたイベント「田中サミット」が3月3日、福岡市中央区で開かれる。全国に約131万人いるとされる「田中さん」のためのイベントは、どのように企画されたのか。
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同級生など身近な田中さんもいるのではないだろうか。政府発表の統計や電話帳を基に名字の由来などを紹介する情報サイト「名字由来net」によると、名字別に人口の多さを示す全国順位で田中姓の約131万人は4位。西日本を中心に多くみられ、都道府県別順位では福岡県や大阪府、京都府など9府県で1位だ。
「田中姓は平凡と思われがちですが、由緒ある名字で古事記にも登場します」。そう話したのは2023年11月に「田中の田中による田中のための本 日本を動かした田中一族」(2巻、梓書院)を出版した宇野秀史さん(58)=福岡市。宇野さんは中小企業向けビジネス情報誌を発行する傍ら、「田中家研究家」と名乗り研究してきた。
田中姓の由来は「田んぼの中に家があったから」と連想されがちだが、宇野さんは田中姓が増えたのは稲作や金属の加工技術の伝わり方に関係があるとの説を記す。田を所有する人や鋳物師(いもじ)に田中を名乗る人物がおり、大陸から伝来した稲作などが九州から東に広がるにつれ移り住んだとしている。
宇野さんが田中家研究を始めたのは、15年に戦国武将の田中吉政(よしまさ)に関する本を出版したことがきっかけだった。吉政は石田三成を捕らえて筑後国(現福岡県南部)の国主となり、水郷・柳川の都市設計を手がけて土木の神様とも呼ばれた人物で、地元の偉人として顕彰しようと考えたという。その後、調べると、吉政の一族とされる近江出身の豪商、田中清六正長や、田中与四郎が本名の千利休など次々と田中姓にたどりついた。新著では歴史に名を残した田中さんたちを紹介している。
イベントは、梓書院などが出版を契機に田中さんも田中さん以外も一堂に集まり、田中さんをテーマに交流しようと企画した。当日は宇野さんの基調講演をはじめ、トークショーや参加者の交流会を開く。司会進行は福岡市で活躍する芸人の田中健二さん。梓書院の前田司さん(37)は「田中さん以外の人がうらやむようなイベントにしたい。自身の名前のルーツを探るきっかけになればいい」と話している。
イベントは3月3日午後1時から。チケット(参加費3000円、田中さん割引などあり)はほぼ完売したが、オンラインで無料視聴できる。詳細は専用サイト「田中Family」。問い合わせは梓書院(092・643・7075)。【山崎あずさ】