昨年11月、集英社オンラインではホストクラブにハマり、担当ホストに3000万円も費やした女性の両親を取材。そこではマインドコントロールされ、ホストクラブに売掛金を支払うため、海外に売春の出稼ぎに行っているという娘の現状が語られた。この女性に限らず、今、海を越えて売春する日本人が増えているという。その驚きのシステムを関係者に取材した。

今年1月、警視庁はアメリカ・ラスベガスでの売春の仕事を斡旋したとして、職業安定法違反(有害業務の募集)容疑で、デートクラブ経営者の男女3人を逮捕。警視庁は国内に海外売春をあっせんする複数のグループが存在すると見て警戒を強めている。

「このようなスカウトの仲介によって海外で売春をしている日本人女性は他にもいるとみられる。そのなかにはホストクラブの売掛金を返済するために渡航するケースも多いようだ」(捜査関係者)

集英社オンラインでも昨年11月に、多額の売掛金を支払うため海外に出稼ぎに行っているというホス狂、マナミさん(27歳・仮名)の両親に取材した。

保育士からホス狂になってしまったマナミさん(両親提供)

マナミさんは当時、3回目の出稼ぎ売春に行っており、12月に帰国予定ということだった。その後、連絡はきたのだろうか。母親のチカコさんは言う。

「年末に『実家に帰りたいんだけど……』と本人から連絡がきました。受け入れたい気持ちはもちろんありましたが、心を鬼にして断りました。やはり完全に“ホスト断ち”して生まれ変わってからじゃないと家の敷居を跨がせるべきではないと。

でもその後、娘は4度目の出稼ぎ売春のためオーストラリアへ飛び立ったようです」

マナミさんはどうやって働き口を得ているのだろうか。

「娘はどうやら手配師のような人物とつながっており、その人物から搭乗する飛行機や現地での待ち合わせ場所などの指示を受けているようです。1回の渡航でおよそ3ヶ月の滞在。私たちは、娘のInstagramの投稿で生存確認を行なっている状況です」

マナミさんがどのようにしてその手配師とつながったのか、チカコさんはわからないそうだが、決して特別なルートというわけではないようだ。港区でバーを経営するある女性は言う。

「私は老若男女400人以上がメンバーのグループLINEに入っているのですが、そこにはスカウト業をやっている人や、いろんな界隈で顔が利く人もいて、そういう人が『海外案件ありますよ。受けたい人は個人LINEください』みたいに呼びかけています」

LINEグループで「海外出稼ぎ」を募集するメッセージ

看護師兼キャバクラ嬢のA子さん(25歳)は、SNSを通じて知り合ったスカウトから出稼ぎを打診されたという。

「DMで『シドニーとトロントに行く女の子がいるけど、一緒にどう?』と誘われました。怖かったし長期で仕事を休めないので断りましたが」

風俗店で働く42歳のB子さんも、出稼ぎ売春の誘いを受けたことがあるそうだ。

デリバリーヘルスで働くB子さん(本人提供)

「私は風俗店で働きながら、スカウトの方たちからの単独案件も受けてます。中国にパイプのあるスカウトから、日本に住んでいたり、訪日している中国人を相手に『本番あり120分10万円』や『22時から翌朝6時までの宿泊コース20万円』という仕事をいただいたこともあります。

その人からラスベガスでの案件に誘われたこともあって、料金は『本番ありで1万6000円から』というもの。ほかにデートコースもありました。海外は怖いので断りましたが、向こうでは日本人は幼く見えるからということで、私のような熟女も需要があるみたいです」

さらに取材を進めていると、出稼ぎ売春はセクシービデオ業界にも浸透していることがわかった。あるセクシービデオ業界関係者は言う。

「アジアでの日本のセクシー女優人気は絶大で、現地でファンミーティングも開催されるのですが、そのイベント後にセクシー女優による“夜の接待”が行われることも……。

某国最大のファンミーティング後の接待では、ある有名女優に300~500万円の値がついたといわれ、昨年のイベント時には女優の料金リストが出回りました」

出回った日本のAV女優料金リスト

日本のセクシー女優はこうした夜の接待以外でも需要はあるという。関係者が続ける。

「アジアの各国の富裕層が海外エージェントを通してセクシービデオ事務所に案件を持ちかけるんです。
日本のセクシービデオ産業は下火なので、事務所は女優たちに稼がせてあげようと仕事を紹介しています。ただ、無理やり行かせることはしません。

このような仕事は1週間〇〇万円、1ヶ月××万円といったかたちで報酬が支払われますが、人気女優は長期間の出張はできないので、基本的には仕事のない企画女優や熟女女優が派遣されるのです」

いずれにしても、少なくない数の日本人女性が海外で売春をしている現状で、いつか大きな事件に巻き込まれる可能性は否定できない。

悪質ホストクラブ問題を受けて、「悪質ホストクラブ被害対策推進法案」を衆議院に提出した塩村文夏参院議員は「(売掛金返済のため海外で売春する女性が)実際に海外で検挙されたり、現地の日系社会に助けを求めたりしている」と指摘する。

B子さんが受け取ったスカウトからの海外出稼ぎのお誘いメッセージ

前出のマナミさんの母、チカコさんも「今はただ娘の無事の帰りを祈るばかりです……」と声を震わせる。

「娘がしていることは犯罪行為。決して許されることではありませんが、私にとっては大事な娘です。オーストラリアから五体満足で帰ってくることを願うばかりです」

いくら円安で実入りがよくても、心配してくれる家族がいることを忘れてはならない。

取材・文/河合桃子
集英社オンライン編集部ニュース班